1967年(昭和42年)といえば、特撮の老舗・東宝では『キングコングの逆襲』が公開されています。
怪獣映画では1歩も2歩も、10歩も100歩も先をいっている東宝作品と比べるのは、酷といえば酷だし、私は断然東宝特撮映画ファンということもあるので、どうしても見劣りしてしまうなあという感じは
否めない。
それでもね、当時の大映は倒産寸前だったし、その中でガメラは大ヒット作品だったということで、起死回生の手段として制作された映画ということで、当時の大映としては出せる限りの製作費を投入して、頑張って作ったのだなという裏事情を知ったうえで観ると
簡単に「ショボい」とは言えなくなる。むしろ
「よくやった!」と言いたくなります。
少ない予算、といっても他の大映作品に比べれば3倍の製作費をかけていたそうですが、よく頑張ってますよ。
富士山が噴火して溶岩が流れ出すまでをワン・カットで撮っているところとか、なかなか良く出来てます。
でもアップで撮られた溶岩はどう見ても液体には見えなかったですが(笑)まっ、ご愛敬ということで。
ストーリーとしては、対ギャオス作戦がすべて子供の発案で決まってしまうところは、いかにも子供の観客を喜ばせる展開で、この作品辺りから、ガメラシリーズは子供向け作品にシフトしていったという感じ。前作の「ガメラ対バルゴン」にはまったく子供が出てきませんから、大映側の試行錯誤の結果が伺えますね。
まあそれでも、欲深な大人たちを諫めるような展開もあるし、単なる子供向けには陥っていない、大人の観客もそれなりに納得できる内容にはなっています。
もっとも、怪獣が出て大変な状況になっているというのに、村人が誰も避難しないというのは、変といえば変なのですが、そうしないと物語が動かないので、仕方がないのかな。でもやっぱり変だよね(笑)。
ガメラとギャオスの格闘シーンは、様々なアイデアが投入されていて、それなりに見ごたえ有り。ゴジラ映画の怪獣格闘シーンより、コチラの方が面白味があるかも。
まあ、いろいろツッコミどころはあるし、若い頃に観たときは欠点しか見えなかったんだけど、今、齢をとってから改めて観てみると
それなりに面白い作品だなと思えます。
主演は本郷功次郎さん。当時の大映のスター俳優で、『大魔神怒る』など、特撮モノにもよく出ていました。映画『釈迦』では、ゴータマ・シッダールタ(後のお釈迦様)を演じていました
1995年公開の映画『ガメラ大怪獣空中決戦』の冒頭にも、海上保安庁の巡視船艦長の役で出演されています。ちなみにこの時、プルトニウムを積んだ輸送船の船長を演じていたのは久保明さん。元東宝のスター俳優さんで、『怪獣大戦争』『妖星ゴラス』『マタンゴ』等、東宝の特撮映画に沢山出ていた俳優さんです。
東宝特撮スターと大映特撮スター夢の競演!これは監督の金子修介氏が怪獣映画ファンということから実現したことで、怪獣映画オタクは泣いて喜びました……というのは大げさですが(笑)。
こういう粋なことをするのが、金子監督なんですよ。特撮ファンに好かれるわけだ。
そんなこんなで、まだYouTubeで配信されてます。来週木曜日までかな。無料で観るなら今の内ですよ。興味がおありの方は、是非。
火を吐くシーンを直接火炎放射器を使って撮影する手法は、東宝ではまずやりません。危険ですから。
東宝では作画合成で処理するのが常道です。その辺はやはり、お金のなかった大映ならでは、なのですかね。
出演者の中に、蛍雪太郎という方がおられますが、この方は、「平成ガメラ三部作」すべてに出演されていた蛍雪次朗さんのお師匠さんです。
知ってました?蛍雪次朗さんって、昔「蛍雪次朗一座」を率いて、「お笑いスター誕生」などにも出ていたんですよ。その頃は俳優と芸人を兼任していたようです。
人に歴史有りです。
蛍雪次朗
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