※ネタバレあるよ。
というわけで、全編終了いたしました。
なんかね、すんごいものを見せられたという感じ。
日本とは製作費の掛け方が全然違うので、映像に圧倒されるということもあるけど、やっぱり脚本なんだろうなあ。
脚本の練り上げ方がとんでもないというかね。
登場人物の細かい心情とか、実に深く掘り下げているというのか、一人一人に人としてのリアリティがあって、人間ドラマとして、群像劇として
見ごたえ最高、でした。
特に物語のキー・パーソンである鞠子様ね。父親が主君(信長に比定される人物)を斃したことから「逆族」と罵られ、一時期は死のうとしたのだけれど、
その父親の想い、天下国家のために己が命を使い切るという、武士の意気地に思い到ったとき
自分もそのように、父の志を継いで、そのように生きよう。
それこそが、己がこの世に生きている「意味」。
おそらくはそのように思っていたのでしょう。
【武士道とは死ぬこととみつけたり】とは
【武士道とは生きることとみつけたり】と、同義であるということ。
常に「死」を意識しながら「生き」抜く。
これぞ武士。
鞠子様の気高さも強さも、あるいは脆さも
悲哀も
全てはこれ
「武士」故がこと。
鞠子様、哀しくも素敵な方でした。
浅野忠信演じる樫木藪重という男もまた、一見ずる賢い人物に見えて、実は武士の矜持をちゃんと持ってる。虎永に後事を託して、最期は見事に武士らしく散りました。
面白い方でした。
落葉の方が「ラスボス」ではなかったのは、意外だったけどこれもまた。良かった。初めは虎永への復讐心から石堂と手を組むのだけれど、再会した鞠子様の「生き方」に感化されるかたちで
徐々に表情が変わっていくんですよね。この辺りの、二階堂ふみさんの演技が素晴らしかった。
そんな中での、平岳大さん演じる石堂という男の、人間としての「小ささ」がより浮かび上がってくる。こんな奴に天下獲らせてたまるかよ!と思わせる。
この辺りも上手いです。
そして、真田広之さんえんじる吉井虎永。この男の権謀術数、深謀遠慮。
この人物が何故天下を獲ろうとするのか。そこに秘められた深い「想い」。
そのためならば良き家臣の命を「使い切る」ことも厭わない、「非情」さ。
ただそれは、単純に冷たい人、ということではない。そこにこそ、この乱世に生きた武士たちの、死生観が描かれている、と観るべきでしょう。
寧ろこれは、ハリウッドだからこそ描けたことかも知れない、とすら思う。今の日本では、ここまでストレートな描き方は、逆に憚られたのではないかな。そこに
ハリウッドで制作された「意義」がある。そんな風に思いました。
時代劇の定石を踏んでいるようで、実は踏んでなかったりするしね。日本の時代劇なら、やっぱり関ケ原の合戦をクライマックスにもってくるでしょ?でも、そうはならないんだな。
戦国モノなのに、合戦シーンはほぼ描かれない。でも人間ドラマが実に丁寧に描かれているので、全然気にならない。寧ろそれでいい、とさえ思えてしまう。
面白かった。実に良いものを観せていただきました。
こうなると、日本側も負けてはいられないね。もっともっと良い時代劇を、こちらから世界へ発信していかないと。
頑張れ、ニッポン!
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