リベラルくずれの繰り言

時事問題について日ごろ感じているモヤモヤを投稿していこうと思います.

慰安婦問題での自治体間の交流停止をどう考えるべきか

2017-11-19 | 政治
サンフランシスコ市議会が地元の市民団体が設置した慰安婦像を公共物として受け入れることを議決した.それを受けて,同市と姉妹都市の大阪市長は方針撤回されない限り年内にも姉妹都市提携を解消する意向だという.11月19日の朝日新聞社説は「意見を受け入れなければ友好関係を解消するというのは,冷静さを欠いている」と諫めているが,朝日愛読者の私でも強い違和感を覚えた.
姉妹都市は国と国との関係と別に交流を深める目的だというのは正しい.アメリカと日本が対立した時に国の問題とは別に姉妹都市の関係を続けようとか,スポーツや文化の交流はそれとは別に進めていこうという主張なら理解できる.だが今回は姉妹都市提携の相手市が公に挑発的な行動をとったのだ.市民団体が像を設置するというのとは別の次元の話だ.社説によれば,像の碑文には「旧日本軍によって数十万人の女性が性奴隷にされた」,「ほとんどが捕らわれの身のまま亡くなった」とあるという.前者はともかく後者は私は初耳だ.本当だろうか.
社説は逆に,日本の自治体の政治的動きのために相手自治体から交流を断られるなどした例を二つ挙げ,その場合には日本側が「問題と切り離して交流を続けるべきだ」と主張してきたので,今回も交流を続けるべきと論じている.
一つ目の例は2005年に島根県が「竹島の日」を制定したとき,韓国の慶尚北道が断行を宣言したという.この場合,私自身かつての韓国大統領による竹島上陸などの挑発行為は快く思っていないが,島根県の動きもはやり無用な挑発だったのではないか.それを問わずに断交を批判するのは一面的なように思える.
二つ目の例は2012年に河村たかし名古屋市長が南京大虐殺はなかったと発言したのに反発して南京市が交流停止を通告してきたもの.こちらは私にとっては名古屋市長の発言こそ非難すべきで,逆の立場であれば「交流停止」くらいの意思表示は当然と思えてならない.
そう考えると,今回は私は朝日社説の見解には反対で,大阪市長の意向に共感する.朝日と正反対の意見を見てみたいと思ったが産経新聞の社説ではまだ扱っていないようだ.ただ同紙の記事によれば像設置を主導したのは韓国系ではなく中国系米国人らの団体だそうだ.同記事によれば,大阪市長はサンフランシスコ市長に面会を申し入れているが断られているという.朝日社説は「『違う』と考えることを『違う』と伝えること自体は大切だろう」と述べているが,このような重大問題を前に姉妹都市の市長の面会申し入れを受け入れられないというのはいかがなものか.(と書いてから思ったが,日本の「保守」政治家は強制的な慰安婦連行はなかったというような主張をしている人が多いようで,だとしたら話にならないと思われても仕方がない.話し合うとしたら,そのあたりも予断なく話し合う覚悟が必要だ.)
ただ,仮にこのまま市長間での話し合いがつかず姉妹都市としての公の提携はなくなっても,市民どうしの友好はぜひ続けてほしい.そうした草の根の友好関係が,今回のような事態を招かないために重要と思う.

関連記事:
「従軍慰安婦問題は「慰謝料詐欺」ではない」(7月7日)

追記:「(ニュースQ3)慰安婦像・イルカ漁…巻き込まれる姉妹都市」(朝日新聞11月23日)もこの話題を取り上げていた.それによるとサンフランシスコでの慰安婦像設置のきっかけは2013年に当時大阪市長だった橋下徹氏が従軍慰安婦について「(戦中は)必要だった」などと発言したことがきっかけだったという.私は像設置はいまいましく思うし,際限のない謝罪・賠償要求にも戸惑っているが(7月7日のブログ),やはり過去の過ちを直視しようとしない日本の「保守」政治家が話をこじらせていると思う.
今回の朝日記事によれば,自治体レベルでの断絶の危機を住民の声によって乗り越えた事例がある.和歌山県の太地(たいじ)町はイルカ漁問題が映画で取り上げられた2009年にオーストラリアのブルーム町議会から関係停止を通告されたが,住民から「イルカ漁と交流は無関係」との声が上がって関係が続けられることになったという.

追記2:12月12日朝刊によると,シカゴ大学の山口一男教授は姉妹都市解消の方針は不適切とするブログ(11月28日,12月5日)(HUFFPOST)を掲載し反響を呼んでいるそうだ.慰安婦像は「同様なことが繰り返されないことを祈る」ものであって日本を批判するものでは全くないのだという.私は教授の考えには必ずしも賛同できないが,教授を「反日」などと罵る人が多いと聞いて胸を痛めている.かつて,反対者を「非国民」と呼んで戦争に突っ走った時代があった.「反日」と罵るのも言論なのかもしれないが,節度をもって建設的な討論をしてほしい.

追記3:12月28日朝刊は自治体間の交流のいろいろな事例を紹介しているが,「像」に自治体が関与している場合と純粋に有志がやっている場合の区別がされていない.


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