リベラルくずれの繰り言

時事問題について日ごろ感じているモヤモヤを投稿していこうと思います.

五輪関係者の行動規制:米メディアの組織委批判をどう受け止めるか

2021-07-03 | 一般
東京オリンピック・パラリンピックの取材のために訪日する記者の行動制限について、米主要メディアが連盟で組織委に抗議の書簡を送ったという(朝日新聞2021-7-2夕刊)。
コロナ渦中でのオリンピックについては中止論が高まっていたが、開会日が近づいても菅政権は開催の姿勢を変えず、いつのまにか「観客を入れるかどうか」に議論が絞られてしまっている(それがいまだに決まらないというのは異常だと思うのだが、それは今回のトピックではない)。開催するなら、徹底的な感染防止策を講じることが当然の前提になる。だが五輪・パラリンピックの関係者については入国後の隔離が免除されており(mainichi.jp)、義務付けられているPCR検査もうがいなどで簡単にウイルスを薄めることをできる唾液での検査となるなど、果たしてどれだけ万全といえるのかは疑問符がつく。そもそも政府の「水際」対策をすり抜けた事例が早速明らかになっている(過去ブログ)。そして何より心配なのは、選手の行動はある程度管理できたとしても、何万人もの関係者まできちんと管理できるかどうかだ。だから申し訳ないが、外国人記者に対して厳しい行動制限が課されることは認めてもらわねばならない。
ただ、米メディアだってそのくらいのことはわかっている。抗議の内容は、規制が感染拡大防止に必要な範囲を超えている(そして一部は五輪憲章に反するという)というもので、感染拡大のための規制を否定しているわけではないようだ。
具体的に問題にされている点を見てみよう。

まず、組織委がGPSで記者の行動を追跡するが、データの扱いが明らかにされていないという。インストールを求められているスマホのアプリについても、集められた個人情報がどのように使われ、管理されるのか不明だという。(スマホをホテルの部屋に置いて外出すれば簡単に規制をすりぬけられるという指摘があるが、この問題も今回は扱わない。)私はアプリの具体的内容などは承知していないが、やはり日本がデジタル後進国であること(そしてそもそも個人情報を公的機関が扱うことに対する問題意識の低さ)を露呈してしまったのではないだろうか。欧米では個人情報の管理についての記載が厳しいと聞く。今からでも、どのようなデータをどのように収集し、どのように保管し、どのように利用するのか、きちんとした情報を公開するべきだ(そしてもちろん、目的外に使用されない仕組みを担保するべきだ)。

このほか、観客への取材が禁止されることや、ワクチンを受けマスクをしていても外出を規制されることも問題視しているという。「多くは、海外の記者だけを対象とし、観客や地元の記者の移動が自由に認められているにもかかわらず、変更されていない」と訴えているという。これについては、国内外でのコロナ蔓延の状況下で仮にもオリンピックを開催するのであれば、訪日外国人と日本人ができるだけ接触しないようにすることが、お互い感染を広げないために重要だと思う。であれば、訪日外国人だけが規制の対象になるのは当然ではないだろうか。(そもそも無観客にすればこの問題は半減すると思う。)

新聞の取材に対し、組織委はコロナの情勢をふまえた対応だとして、「非常に厳しい措置が必要で、すべての参加者と日本居住者のために重要なこと」と応えており、妥当な回答だと思う。ただ、個人情報の管理については明確な説明なり対処なりが求められると思う(想像するに、きちんと決まっていない部分もあるのではないか)。それに、仮に妥当なことであっても、言葉を尽くしてきちんと説明するというのが昨今の日本の政界では決定的に欠けている。組織委には、説明不足のために日本が諸外国から非難されたりすることのないよう、しっかりした対応をしてもらいたい。


この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 菅首相の「水際」は全国の自... | トップ | 自粛警察が跋扈する日本で「... »
最新の画像もっと見る

一般」カテゴリの最新記事