リベラルくずれの繰り言

時事問題について日ごろ感じているモヤモヤを投稿していこうと思います.

札幌五輪招致:住民投票案を否決してまで突っ走るなら、税金を投入しない公約を保証すべき

2022-06-08 | 一般
札幌市は2030年の冬季五輪・パラリンピックの招致を目指しているが、その是非を住民投票にかける案を否決した(朝日新聞2022-6-7)。
札幌市はすでに道民意向調査(過去ブログ)をこの3月に行っている。その結果報告(pdf)を見てみたのだが、あからさまに結果を誘導する質問設定に唖然とした。問3「単なる一過性のスポーツイベントではなく、北海道・札幌が将来に渡って輝き続けるためのまちづくりに関するプロジェクト」という考えを理解したか、問4 北海道・札幌で初めてとなる冬季パラリンピックの開催が「共生社会」の実現に貢献するという考えを理解したか、など五輪・パラの意義を宣伝する設問の後に賛否を問う質問がくるのだ。ただ、問5「すでにある施設を最大限活用し、大会開催のための新たな施設は設けない」、問6「大会の運営のための費用は、IOC の負担金やスポンサー収入などで賄い、原則、税金は投入しない」などの点は私も知らなかった。この点を本当に守れるなら認めてもいい気もしてくる(調査回答者もそう誘導された人が多かったことは想像にかたくない)。だがそれにしても、最初に費用を低く見積もっておいて後からふくらませるのは五輪の常套手段だし、コロナ下の東京五輪をめぐっては、IOCは赤字の見込みになっても簡素化も拒否し、現地負担と突っぱねたことは記憶に新しい。
意向調査の結果は郵送調査では賛成52%、反対38%だったが、インターネット調査では賛成56%、反対26%、街頭調査では賛成66%、反対26%。たしかに賛成多数ではあるが、朝日記事は冬季五輪で北海道出身者を含む日本勢の活躍に沸いた直後の調査にもかかわらず、14年の市民アンケートでの賛成67%から大幅に減ったと指摘している。

今回の住民投票条例案に賛成したのは、議長を除く議員67人のうち、共産と市民ネットワーク北海道の計11人だという(23面)。一方、自民、公明が反対したのはやっぱりという感じだが、旧民主党系の民主市民連合も反対したというから見識を疑う。3会派は3月に招致支持の決議案を提案し、可決したとのこと。
反対の理由は、「市民に責任を押し付けるのは議員の自らの否定」という間接民主主義のロジックだ。だが朝日記事も指摘するように、選挙ではさまざまな争点があって、五輪反対でも他の理由(しがらみ?)から自民・公明・民主のいずれかに投票する人もいるだろう。この反対理由はそもそも住民投票の意義を否定しているに等しい。
その本心は、やはり住民投票にかけて反対多数になることを恐れているのだろう。住民投票の反対多数によって五輪招致の断念に追い込まれた事例はドイツ、スイス、カナダ、オーストリアなどであったという。

住民の意向を確認しないまま市の主流会派だけで突っ走るにしても、公約の「税金は投入しない」は貫いてほしい。そして、それを担保するために、赤字の穴埋めはIOCにさせることを五輪引き受けの条件としてはどうか。何度も言うように、今はかつてとは力関係が逆転している。候補都市が誘致を競うかつてとは異なり、今ではIOCのほうが受け入れ先を探す時代なのだ。あとになって「こんなはずではなかった」とならないように、何かしらの保証を確保しておくべきだ。

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