リベラルくずれの繰り言

時事問題について日ごろ感じているモヤモヤを投稿していこうと思います.

消費者物価2.1%上昇―これが日銀が目指していたものなのか?

2022-05-22 | 一般
消費者物価指数が8か月連続して上昇し、4月は2.1%となった(前年同月比)。2%を超えるのは2015年3月以来で、そのときは消費増税があったので除くと、2008年9月以来初めてのことという(値動きの大きい生鮮食品を除いた総合指数;消費者の実感に直結する生成食品を含めると2.5%)(朝日新聞2022-5-21)。日銀は物価上昇率2%を目標に市中に金をばらまき続けていたが、ようやく目標を達成したということなのだろうか。
今回の上昇は、昨春に携帯電話の格安プランが相次いで導入されて他の物価上昇の影響を打ち消していたことが最大の要因というが、電気代21%をはじめエネルギー関連の価格が大きく上がり、食品も幅広く値上がりした。
だが、今の物価上昇は円安や資源高が主因であり、欧米での、コロナ下で落ち込んだ需要が回復し、人々の消費意欲が高まったことによる大きな物価上昇とは中身が違うという。日銀が本来目指していたのは、「デフレから抜け出し、企業の収益とともに働く人の賃金が上がることで、モノやサービスを買う需要が高まり、物価も上がっていく」という「需要の高まりに引っ張られた物価上昇」なのに、今起きているのはコストプッシュ型の物価上昇になってしまっている(同2面)。
渡辺努教授によれば、日銀の「物価上昇2%」の目標は、「賃金を上げる」と言い方を変えるべきだという。私は「物価上昇2%」を目標にするというのはおかしいと長年思ってきて、本稿と同趣旨の記事も書いているが、専門家に言い切ってもらうとすっきりする。物価上昇率を目標に掲げるという手法は物価上昇を抑えるために導入されたのだという。日本では逆に物価を上げることを目標にしたので、人気がなかったという(ただ、2%目標を批判するのは、異次元緩和正常化以外の文脈ではあまり聞かなかったような気がするが)。目標を「賃金を上げる」にすれば、政策もおのずと一部の輸出企業だけが潤う今のやり方とは変わってくるのではないだろうか。
渡辺教授によれば、日本では資源高による「急性インフレ」と昔からの「慢性デフレ」が併存していて、インフレだけの欧米と違うという(同7面)。値上げが続いているといっても、消費者物価指数を構成する品目の4割は上がっておらず(2面によれば家賃0.0%、衣服や履物は0.8%など)、「慢性デフレ」は続いているというのだ。
ただ、急性インフレの影響で「物価は上がるものだ」という消費者の意識が強まっているから、企業が値上げしやすくなって慢性デフレが改善するきっかけになりうるという。たしかに、日本では消費者の値上げ嫌いが激しく、それが値上げを阻み、企業の利幅を圧迫するという状況が続いてきた。ここで消費者マインドが変われば、「必要であれば値上げする」という当たり前のことができる正常化が期待できる。(2面でも、「前回の値上げ時に比べると流通側の反応はいい。こういう世の中で仕方ない、という方向になっている」という食品メーカーの感触が伝えられている。)
教授はさらに、「本質的な問題は日銀の言葉が軽くなっていること」という。たしかに物価高に苦しむ庶民をしり目に、円安は全体としては日本にとってプラスだとか、インフレは一時的だなどと言っているが、どうなのだろうか。日銀に物価がコントロールできなくなることが心配だというが、異次元緩和で日本経済を麻薬漬けにした結果、すでにコントロールを失っているのではないだろうか。


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