リベラルくずれの繰り言

時事問題について日ごろ感じているモヤモヤを投稿していこうと思います.

自衛隊勧誘のための個人情報開示は認められるのか

2019-02-15 | 政治
自衛隊に勧誘するために、高卒・大卒見込みの人の住所・氏名などの情報を市町村から得て、ダイレクトメール送付や戸別訪問を行なっていると聞いて驚いた(朝日新聞2019-2-13)。
就職というのは学生のほうからエントリーシートを書いて企業にアプローチするのが当然だと思っていた。だがたしかに企業のほうから学生宛にダイレクトメール(スカウトメール)を送ることはめずらしくないようだ。だがその情報はどうやって集めているのだろう。
自衛隊の場合、市町村に紙か電子媒体での情報提供を要求するが、提供を受けられず、住民基本台帳を閲覧させてもらって情報を得ている場合が多いという。だが一般企業ではDM送付のための住民基本台帳の閲覧は2006年の法改正でNGになった。なぜ自衛隊だけOKなのだろう。

朝日新聞2019-2-14によれば、住民基本台帳法第11条で、国は住民基本台帳の閲覧を市町村長に請求できることになっているから、住民基本台帳の閲覧までは合法のようだ。ただ、名簿の提供まで求めるのは行き過ぎだろう。自衛隊法施行令120条に市町村に「資料の提出を求めることができる」とあるが、これが「義務ではない」ことは防衛省も認めているという。
安倍首相はこのところ何度かこの問題に触れており、先日も衆院予算委員会で、自衛隊員が住民基本台帳の書き写しを「やむを得ず行っている」として嘆いて見せた(同4面)。閲覧は認めているのにコピーさせずに書き写させているというのは、市民団体が行政資料を閲覧するときにもよく聞く問題だと思う。自衛隊の問題に限らず、「見るのはいいが、コピーは不可」というような運用の是非は議論してもいい。
市町村の個人情報の取り扱いは「市町村ごとに条例などに沿って対応するのが原則」(総務省)で、自治体によっては、コピーなどしないことを条件に宛名シールの形で自衛隊に情報を提供しているところもあるという。それならDM発送後は個人情報は残らない。このくらいまでは許容範囲という気もするが、他の公務員ではなく、自衛隊の勧誘に国があまり熱心なのも気になる。
その点は「自衛隊は認めるが、国家による勧誘には不安を覚える」として別途論じたい。

追記:法律文の「できる」の意味がどうも私の感覚と違うかもしれない。識者は「国と対等な関係にある自治体に、この規定で対応を強いるのは法的に無理。『できる』とする規定に応じるかは自治体側の裁量だ」と指摘しているという(朝日新聞2019-2-16)。私は「国は……できる」と書いてあれば、決定権は国側にあるのだと思っていた。この識者の言う通りであれば、国の協力要請の根拠は私が思っていた以上に乏しいことになる。
先日は、自治体首長は義務的経費を予算執行「できる」というような文脈で、首長に決定権はなく、予算執行しなければならないという主張を読んでおやっと思った。
法律文の「できる」の解釈について解説がほしい。

追記2:住民基本台帳法には国が市区町村長に「閲覧させることを請求できる」とある。だが、国税徴収法などでは「閲覧または提供」として「提供」は「閲覧」とは明確に区別しており、提供するのは住民基本台帳法の範囲を逸脱しているとの指摘がある(朝日新聞2019-3-13)。



この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 韓国の幼保無償化:絶対数が... | トップ | 自衛隊は認めるが、国家によ... »
最新の画像もっと見る

政治」カテゴリの最新記事