リベラルくずれの繰り言

時事問題について日ごろ感じているモヤモヤを投稿していこうと思います.

「アスリートのため」をいうなら、公平な参加ができない東京五輪は中止しかない

2021-05-17 | 一般
東京オリンピックに関する世論調査で、今夏に開催すべきと答えたのはわずか14%で、再延期が40%、中止が43%とだったという(朝日新聞2021-5-17)。世論の4割もが再延期と答えたのには驚いた。中止と違って延期というのは、1年後にすでに予定されている他の行事の会場使用を取り消させたり、準備が進んだ設備をさらに1年間維持したり(またはいったん撤去して翌年設置し直したり)、あるいは選手村となるマンションの分譲を延期したりとあちこちに迷惑がかかる(追記:「仮設施設のリースや競技会場の借り上げ、車両や会場で使う備品の調達」など、国内外との契約が2000件ほどあり、昨年の延期ではこれらの契約更新に追われたという。(朝日新聞2021-5-20
)。さらに組織委の職員の多くが東京都や関係省庁からの出向で、出向期間をさらに伸ばすのは難しいという側面もあるという(中日新聞2021-1-13)。組織委やIOCも何度も再延期はありえないことを明言していた(SPORTS COMMUNICATIONS 2020-5-22)。世論は大切だが、こうした事情を知らない人の答えに縛られるわけにはいくまい。
そんなわけで、再延期だけは絶対ないとして、私は中止に傾きつつも、医療従事者に過度な負担を強いることなく可能であれば(無観客での)開催は否定しないとつい先日まで書いていた。だが開会まで2か月ほどとなった今になっても新型コロナウイルスの感染終息はおろか、ワクチン接種も遅々として進まない状況で、すでにアスリートたちが公平な条件で参加できない状況になっているようだ。
今月、国際水泳連盟のワールドカップが東京で開かれたそうなのだが、これがオリンピックの最終予選を兼ねていた。日本でのコロナ蔓延をふまえて一度は中止の方向だったのだが、一転開催されたというのだ。ところがオーストラリア飛び込み連盟は「第4波で緊急事態宣言下の日本では、公平で安全な予選行事は可能でない」として選手を行かせなかった。このため前回銅メダルを獲得したオーストラリアの女子シンクロ板飛び込みの2選手が不戦敗となってしまったという。2選手は、このような状況で予選を開いた決断により「五輪の根幹である公平性(フェアネス)、平等、卓越性のすべてが放棄された」と嘆いた。(朝日新聞2021-5-16
今さらだが、オリンピックは大会期間中だけ感染が落ち着いていればいいというものではない。また、国内向けにいくら順調とアピールしても、選手を送り出す各国に認められなければ感染をコントロールできているとはいえない。
カナダでの世論調査では、「東京五輪に自国選手が参加することは安全だと思うか」という問いに「いいえ」(46%)が「はい」(35%)を上回ったという。「自国選手は東京五輪に参加すべきか」は「はい」(42%)が「いいえ」(39)を上回ったものの、差は小さい。(朝日新聞2021-5-17
アメリカではまだ「安全」が51%(「いいえ」は22%)、「参加すべき」が55%(「いいえ」は20%)と楽観論が優勢らしいが、今の状況でワクチン接種も進まなければ、また海外から選手派遣見送りの決定が相次ぐことになりかねない。
東京五輪は代表選手が公平に選ばれ、公平に参加できる状況になっているのか。私はこれまで中止論に傾きながらも無観客開催は否定しないでおいたのだが、この話を聞いて思った。「アスリートのためを思うなら、東京五輪は中止しかない。」

追記:東京オリンピックに出られる代表の選考がコロナのため公平に行なわれなかった事例が他にもあった(朝日新聞2021-7-16)。ボクシングでは、今年6月にパリで予定されていた世界最終予選が中止になり、五輪代表はIOCが定めた独自の選手ランキングに従って決めた。同月にメキシコであった野球の最終予選では、新型コロナを理由に台湾、オーストラリアなど3チームが参加を取りやめた。また、コロナで事前合宿ができなくなったことで、海外から来日する選手は時差調整に苦労する可能性がある。これでも公平な条件で世界一の座を競う場といえるのだろうか。
(さらに追記:選手村の混雑を避けるために選手が選手村にはいるのは出場5日前とされているそうだが、時差調整などの理由でそれより早く来ることは認められているという。)

追記2:海外選手の新型コロナ陽性が判明して棄権する事態が相次いでいるという(朝日新聞2021-7-24)。チェコの自転車の選手は練習拠点の伊豆で陽性がわかり、棄権した。来日したチェコ選手団ではほかにビーチバレーの2選手と卓球の1選手の陽性が判明しており、チャーター便が原因かどうかを調べるという。ロシアでも有望選手が陽性で棄権し、オランダの2選手も感染が判明したという。(米ビーチバレーでは感染者の代わりに別の選手が代表入りした。)オランダのテコンドー選手は言う。「私の選手人生は突然終わってしまった。言葉がない。」
イギリスの射撃選手は出国前にコロナ陽性が判明して出場を断念し、「Broken」とSNSに書いたそうだ(朝日新聞2021-7-25)。
こんな不本意な形で棄権せざるを得ない選手が続出する大会って、そんな大会でのメダルって何なのだろう。

追記3:濃厚接触者の問題もある。感染者の濃厚接触者は通常では14日間の自宅隔離などが求められ、Jリーグでも濃厚接触者は出場できない決まりになっている。だが五輪では競技開始前の6時間前の検査で陰性なら出場できるという方針が、開幕1週間前になって発表された。濃厚接触者となった南アフリカのサッカー選手は日本と対戦し、1-0で負けた。事前の練習も思うようにできず、試合中も「通常ならこのような守備的な戦いはしない」というように、戦術に(心理的な?)制約があったようだ(朝日新聞2021-7-23)。感染者でなくても、このように不完全燃焼での戦いを強いられる選手は他にもあるのではないか。

追記4:リオのパラリンピックで金メダルを獲得した米国の盲聾の水泳選手ベッカ・メイヤーズ氏は、これまで母親が介助者として同行していたが、今回は同行が認められなくなって出場を辞退したという(朝日新聞2021-8-21夕刊)。日本の政府か組織委が決めた入国制限かと思ったが、日本で新型コロナウイルスの感染が広がっているため各国の代表団が来日する人数を絞っており、米五輪・パラリンピック委員会も水泳選手34人に対して介助者は1人と決めたのだという。



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