リベラルくずれの繰り言

時事問題について日ごろ感じているモヤモヤを投稿していこうと思います.

選択的夫婦別姓に向けた議論を進めるための論点

2021-01-23 | 一般
選択的夫婦別姓に向けた議論が盛んだ。昨年末の第5次男女共同参画基本計画では、内閣府に示した原案に「必要な対応を進める」とあったのに自民党の保守派が猛反発し、「更なる検討を進める」と後退させ、「選択的夫婦別氏」という文言まで削除された。
選択的夫婦別姓について、私は消極的賛成という立場だが、いつも同じことの議論にもどかしさを覚える。議論を前に進めるためにいくつかの論点を述べておきたい。

(1)夫婦の一方が姓を変えなければならないというのは、世界的に見て特異だということがもっと知られてもいい。法務省が海外の主要国を調べたところ、夫婦同姓にしなければならないことになっているのは日本以外になかったという(nippon.comなど)。姓を変えるのがほぼ女性のほうであるため、国連女性差別撒廃委員会からは2003年、2009年、2016年とたびたび是正勧告を受けている。
WOMAN STARTによれば、同姓としているのは日本、インドのヒンズー教徒、ジャマイカだけ。トルコ、フィリピンは夫の姓か「結合姓」を選べる「選択制」。タイは夫の姓、妻の姓、結合姓から選べる選択制。フランス、ドイツ、オランダ、ロシアは同姓、別姓、結合姓から選べる(フランスで同姓の場合は夫の姓)。中国、韓国では別姓。トルコ、インド、タイなどでは夫婦同姓規定を廃止する流れができているという。アメリカは州によって異なるというが、主要国なので州ごとの内訳を知りたい。また、選択制の国で別姓がどれくらいの割合なのだろうか。

(2)反対派の主な理由は、「別姓になれば家族の一体感が失われる」というものらしい。海外の有名人で夫婦別姓の事例を、「あの人も」「この人も」という形で紹介してはどうだろうか。よく知っている人も夫婦別姓だということがわかれば、抵抗も薄れるだろう。(俳優だと兄弟でも普通に名字が違ったりするので、あまり参考にならないかもしれないが。)

(3)選択的夫婦別姓に反対する理由の一つに、職場などでの通称使用が広がっているから十分ではないか、というものがある。だがそのために大変な苦労をした、というような話を時々聞く。免許証、住民票、マイナンバーカードには2019年から旧姓併記が認められるようになった(朝日社説asahi.com)。「特に必要」な場合に併記が認められていたパスポートでも要件の緩和が続いているが、括弧内の旧姓併記という異例な氏名表示の意味が海外で理解されずにトラブルになったという問題もある。通称使用では解決できないこうしたトラブルの事例をまとめて紹介してはどうか。以前い比べて離婚・再婚が増えているだろうから、その時に姓を変える面倒もあるはずだ。

(4)少子化の今、夫婦同姓は昔以上に影響が大きい。一人っ子が多く、女子しかいない家庭の割合も多いはずだ。そうした家庭は、大半の場合に女性が姓を変える現行制度が続けば姓が残らなくなる。選択的夫婦別姓に反対する保守派のなかにも、そのような人は多いのではないか。どう思っているのだろう。(婿を取って姓を残す場合もあるにしても、一部ではないか。)そもそも非婚で子がなく、名字が消えるのは当たり前という感覚になっているのだろうか。選択的夫婦別姓への賛否を問うアンケートで、未婚の子の男女構成(または該当者なし)別の統計を取ってみるべきだ。

(5)反対派は「昔からの伝統」というが、夫婦同姓は明治にできたものだ。そもそも江戸時代には姓のない人が多く、徴税や兵籍管理のために姓が義務化されたのは1875年(明治8年)のこと。1876年には妻は実家の姓とすることが規定されたことさえあった。民法で夫婦同姓が規定されたのは1896年のことだ(nippon.com朝日新聞be 2021-1-23)。だがこのあたりになると保守派もわかったうえでの確信犯の可能性が高い。夫婦同姓に限らず、保守派は、天皇を神聖化して軍国主義に突っ走った明治から敗戦までの日本を美化しすぎている。世間一般では選択的夫婦別姓への賛成は広がりつつある。2020年1月の朝日新聞の世論調査では賛成は69%に上った。2017年の内閣府の調査でも賛成は42.5%、30代に限れば52.5%と過半数になった。やはりいろいろな面から情報を提供して、世論の理解を得ていくのが最善なのだろうか。

追記:朝日新聞2021-1-24でも議論されているが、いつもと同じ賛否両論が並んでいる印象だ。そんななか反対派の八木秀次氏の談話が目を引いた。
まず、今の戸籍制度では難しい、という指摘は相手にしないでいい。世帯主を一人決める形で夫婦別姓が無理だというのは形式論でしかない。将来的には世帯主などの概念も問う必要はあるのかもしれないが、当面は、世帯主などの構造は維持したまま、各人の別姓に対応できる形に直せばよい。(今の戸籍制度でも、再婚の場合など、子の姓が違う、ということがあったのではなかったか?)
ただ、兄弟の話は目からうろこだった(以前にもどこかで聞いたと思うが、上記を書くときは失念していた)。自分の姓を残すために夫婦別姓にしたいというのであれば、二人以上の子が別々の姓をもつことが絶対条件になる。たしかに同じ親から生まれたきょうだい間で姓が違うというのは違和感がある。別姓を採用している海外ではどうなっているのだろう。それにそもそも、一人っ子ではたとえ夫婦別姓にしたとしても、どちらかの姓は残らない。一人っ子が増えたから両方の姓を残すために夫婦別姓が必要というのは論理的に矛盾していることに気がついた。
夫婦別姓の場合の子の姓について、今までも議論されてきたはずだが、不勉強だった。賛成派はこのあたりの対策や海外での事情をもう少し紹介するべきだ。(海外の「結合姓」というのがその解決策なのだろうが、庶民の間でどのくらい一般的なのだろう。日本で「結合姓」を導入するとしたらどういう形になるのだろう。本質ではないが、反対派の理解を得るためにはそのあたりをもっとイメージできるような発信がほしい。)


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