教員のブラックな労働環境の一因として部活動が朝日新聞2018ー6ー24でも取り上げられていた.米国在住の元教員が,「当地の公立高校では部活,学級に相当するものがなく,休日は教師・生徒にとって文字通り休日」であり,基本的にはスポーツは学校外で行なうものだと紹介していた.やはり活動時間があまりに長い部活動はどうかと思う.ただ,「もっと上達したい」,「強くなりたい」と長い練習時間を希望する生徒・保護者がいるのも事実だ.これに関して次の点に留意したい.
(1)長時間練習するだけが能ではないことを啓発し,効率的な練習法も紹介することが提言されている.これについては(「「ブラック部活」適正化のためのガイドラインが受け入れられるために,何が必要か」で触れた.
(2)外部指導者を取り入れて教員負担を減らすことも有効だ.(今回の記事でもその成功例が紹介されていた.)ただ,予算の問題もあるので個別の学校ではどうしようもない.
だが特定の競技に熱心でその道をとことん追求したいという要望は必ずしも主流ではないように思う.そもそも部活動は必須ですらないはずなのに,こんなに大きな問題になるのは,見過ごされがちな二つの原因がある.
第一は生徒の放課後の居場所の問題だ.以前に読んだ保護者のアンケート結果によれば,教員の負担の改善が必要とは認識している一方で,ある程度の時間の部活動を求める傾向があった.識者は共働きや地域の遊び場の減少で保護者が子供に向き合えない時代になっている,と指摘していたように思う.だから学校での部活動に従事していてくれれば安心ということなのだろう.別の記事で読んだ生徒たちのアンケート結果によれば,部活選択の基準として,友達づくりの役に立ちそうなもの,といった基準で選ぶ傾向があるという.
「放課後の居場所の提供」と割り切って考えれば,教員にもそれほど負担をかけない部活動のあり方もみつかるのではないだろうか.たとえば横浜の小学校の「放課後キッズクラブ」(「学童保育」とは異なり保護者の就労等に関係なく誰でも利用でき,料金も安かったと思う)のようなものが中学校にもあっていい.ある程度嗜好の近い生徒どうしで集まりたいということであれば,「××部」のようなテーマは設けつつも,ゆったりとマイペースで活動する部があってもいい.(横浜の放課後キッズクラブでは,時折イベントを開催して興味をもつ子どうしで一緒に活動したりもしているようだ.)
だがそうした「のんびり部活」だと第二の問題が立ちふさがる.内申書だ.高校入試では入学試験の点数とは別に中学校から高校に伝えられる内申書がモノをいう.生徒会活動やボランティアに積極的に関わった,といったことが内申書に書かれれば有利だと思われており,部活動についても「××部の活動に熱心に取り組みました」みたいなことを書いてもらって少しでも有利になろうという心理らしい.そういう人にとって単なる居場所としての「のんびり部」では意味がない,と思われてしまうかもしれない.
だが予備校の解説によれば,スポーツの特待生のようなケースは別として,内申書における部活動の扱いは小さいという.具体的には,神奈川県では学力以外のことは面接や特色検査があるので公立高校入試にはほとんど関係がない.特定活動の記録などを利用する千葉県や埼玉県でも,「学力検査や内申点などメインの合否判定資料に比べればとても小さな扱い」なのだという.(「内申書」のうち「内申点」というのは中学校での成績を点数化したもので部活動とは関係ない.)
私はこの「扱いは小さい」という情報の真偽はわからないし,都道府県によって,また私立では学校によって違う可能性もある.だが生徒や保護者が「帰宅部は入試に不利」という強迫観念からやりたくもない部活にはいり,教員の負担を増すようなことはなくなってほしい.
関連記事:
「「ゆる部活」のすすめ」
「「ブラック部活」適正化のためのガイドラインが受け入れられるために,何が必要か」
「忙しい教員も「民間企業よりまし」と言う人へ」
(1)長時間練習するだけが能ではないことを啓発し,効率的な練習法も紹介することが提言されている.これについては(「「ブラック部活」適正化のためのガイドラインが受け入れられるために,何が必要か」で触れた.
(2)外部指導者を取り入れて教員負担を減らすことも有効だ.(今回の記事でもその成功例が紹介されていた.)ただ,予算の問題もあるので個別の学校ではどうしようもない.
だが特定の競技に熱心でその道をとことん追求したいという要望は必ずしも主流ではないように思う.そもそも部活動は必須ですらないはずなのに,こんなに大きな問題になるのは,見過ごされがちな二つの原因がある.
第一は生徒の放課後の居場所の問題だ.以前に読んだ保護者のアンケート結果によれば,教員の負担の改善が必要とは認識している一方で,ある程度の時間の部活動を求める傾向があった.識者は共働きや地域の遊び場の減少で保護者が子供に向き合えない時代になっている,と指摘していたように思う.だから学校での部活動に従事していてくれれば安心ということなのだろう.別の記事で読んだ生徒たちのアンケート結果によれば,部活選択の基準として,友達づくりの役に立ちそうなもの,といった基準で選ぶ傾向があるという.
「放課後の居場所の提供」と割り切って考えれば,教員にもそれほど負担をかけない部活動のあり方もみつかるのではないだろうか.たとえば横浜の小学校の「放課後キッズクラブ」(「学童保育」とは異なり保護者の就労等に関係なく誰でも利用でき,料金も安かったと思う)のようなものが中学校にもあっていい.ある程度嗜好の近い生徒どうしで集まりたいということであれば,「××部」のようなテーマは設けつつも,ゆったりとマイペースで活動する部があってもいい.(横浜の放課後キッズクラブでは,時折イベントを開催して興味をもつ子どうしで一緒に活動したりもしているようだ.)
だがそうした「のんびり部活」だと第二の問題が立ちふさがる.内申書だ.高校入試では入学試験の点数とは別に中学校から高校に伝えられる内申書がモノをいう.生徒会活動やボランティアに積極的に関わった,といったことが内申書に書かれれば有利だと思われており,部活動についても「××部の活動に熱心に取り組みました」みたいなことを書いてもらって少しでも有利になろうという心理らしい.そういう人にとって単なる居場所としての「のんびり部」では意味がない,と思われてしまうかもしれない.
だが予備校の解説によれば,スポーツの特待生のようなケースは別として,内申書における部活動の扱いは小さいという.具体的には,神奈川県では学力以外のことは面接や特色検査があるので公立高校入試にはほとんど関係がない.特定活動の記録などを利用する千葉県や埼玉県でも,「学力検査や内申点などメインの合否判定資料に比べればとても小さな扱い」なのだという.(「内申書」のうち「内申点」というのは中学校での成績を点数化したもので部活動とは関係ない.)
私はこの「扱いは小さい」という情報の真偽はわからないし,都道府県によって,また私立では学校によって違う可能性もある.だが生徒や保護者が「帰宅部は入試に不利」という強迫観念からやりたくもない部活にはいり,教員の負担を増すようなことはなくなってほしい.
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