勝手にお喋りーSanctuaryー

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このテーマでこんなに笑える映画

2005-08-12 | 映画のお喋り
久々に映画ネタを書きたくなった。
公開時は近場で見る場所がなく、DVDになってもたった1枚しか置いてないので、なかなか借りられなかった映画。
つまり、またまたマイナーな映画ってことだが。

  「ふたりにクギづけ」 2003年 アメリカ映画
  製作・脚本・監督:ボビー&ピーター・ファレリー
  主演:マット・デイモン、グレッグ・キニア

「このテーマ」と言うのは、主演の二人が結合双生児だと言う部分だ。
一般的に見れば、「同情すべき二人」なわけだ。
障害者(と言っていいのかわからないが)をテーマに描いた映画は山ほどある。
たとえば、私が好きな映画の一つ「ギルバート・グレイプ」は、知的障害を持つ弟(レオナルド・ディカプリオが好演)を抱える兄(ジョニー・デップ最高)の悩みを描いている。
最後まで真摯な態度で取り組み、素晴らしい映画に仕上がった。

だがこちらの映画では結合双生児(体の一部分、この映画の場合はわき腹から腰がつながって生まれてきた双生児)を主役にコメディを作った!
間違っても障害を馬鹿にして、面白おかしく描いてるわけではない。
ふたりはつながってるが、そのことを非常にポジティブに捉え、人生を積極的に生きようとしている。
だけどつながってるが故の、不便や悩みもある。
良い部分と悪い部分を公平に描き、そこから笑いを引き出してるのだ。

弟ボブ(マット・デイモン)は頭がよく、スポーツも万能だが、内気な性格。
兄ウォルト(グレッグ・キニア)は陽気で積極的な役者志望。
二人はマサチューセッツ州ののどかな島で生活してる。
友達もたくさんいるし、学生時代はふたり一組を利用しスポーツで大活躍。
今はハンバーガーショップを経営し、障害が苦にならない平和な生活を営んでる。
ボブはメル友に恋をして、結合双生児と言うことを打ち明けられないというのが唯一の悩み。

だけどある日、ウォルトがハリウッドへ行って役者になりたいと言う夢を打ち明けたときから、二人の生活は一変する。
故郷の島では有名人で人気者の二人も、ハリウッドに行けばフリーク扱いだ。
だけど偶然知り合ったシェール(本人が実名で登場)のお陰で、ウォルトはスターへの階段を上り始める。

この話のポイントは、ふたりが何故これまで分離手術を受けなかったかにある。
唯一肝臓だけ、ボブの体にしかないのだ。
肝臓は人の臓器の中でも、決して欠かせないもののひとつだ。
もし分離手術をした場合、ボブは肝臓を半分切り取られるだけで済む。
だがウォルトは移植手術となり、成功率は50%。
だから反対してるのはウォルトではなくボブなのだ。
リスクのない自分が、自由になるために危険な手術をウォルトに受けさせることは出来ない。

(以下ネタバレ)
だけど今度も結論を下したのはウォルトだった。
メル友メイに恋をしながら、結合双生児であることが理由で積極的になれない、そのことに苦しんでいるボブを見かねたのだ。
分離手術を受けた二人は・・・。

結末は案外「ギルバート・グレイプ」に似ているのかもしれない。
知的障害を持つ弟を負担に感じていた兄は、最後に弟が自分にとっていかに必要な存在であったかを知る。
必要としてくれる人がいて、初めて自分に存在価値を見出す。
これは恋愛映画でも、ヒューマンドラマでも、普遍的テーマだ。
障害者をコメディ映画の主演にしてしまう無謀さも、この普遍的テーマをきちんと描いているから許される。
あまり大げさにならない、ツボを心得た笑わせ方も心地よい。
ファレリー監督、なかなかやるね、と思った一作だった。

最後になったが、立ちっぱなしで5時間の特殊メークに耐え、一度メークしたら14時間はそのままで(くっついたままで)いなければならない(合計19時間だ!)と言う苦行に耐えた主演の二人の役者根性に拍手を送りたい。
Comments (6)
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