勝手にお喋りーSanctuaryー

マニアックな趣味のお喋りを勝手につらつらと語っていますー聖域と言うより、隠れ家ー

安らぎたい夜に観る映画

2005-12-04 | 映画のお喋り
このところ辛口になりがちなDVDのお喋りだったが、今日はちょっと違う。
面白かったと言うと、意図するものから外れてしまう。
見ていて安心できる(疑問点のない)映画だったと言うべきか。

『エイプリルの七面鳥』 2003年 アメリカ
 監督・脚本:ピーター・ヘッジズ
 出演:ケイティ・ホームズ、オリヴァー・ブラット、パトリシア・クラークソン

監督・脚本が『ギルバート・グレイプ』の脚本を書いたヘッジズだと知って、即刻観てみた。
『ギルバート…』は、ジョニー・デップ演じる兄と、ディカプリオ演じる知的障害を持つ弟との関わりを描く映画だった。
兄の閉塞感に息が詰まる思いを味わいながらも、ラストは感動させてくれた。
大好きな映画のひとつだ。

『エイプリル…』も家族を描いている。
感謝祭当日、七面鳥のグロテスクなアップから物語は始まる。
最初はよくわからなかった家族関係が、次第に鮮明になっていく。
エイプリルは自ら「最初のホットケーキ」と自分を評している。
フライパンが温まる前に、或いは温まり過ぎた後に焼く最初のホットケーキは、生焼けだったり黒焦げだったりする。
つまりこの一家の長女であるエイプリルは、両親の失敗作なのだ。

エイプリル以外の家族は、NY郊外(車で数時間)に住んでいる。
父、母、息子、娘。それに近くに住む祖母。とても仲が良さそうだ。
父と子供たちは母を気遣う。(その理由は後でわかるが)
彼らは感謝祭の日、以前家出したと思われるエイプリルから食事に招待されて出かけるところだ。
みな気が進まない様子。
何故ならエイプリルはグレて、家出して、警察沙汰にまでなった娘だ。
食事に招待したって、ろくなものを出しはしない、料理なんかできっこないんだからと思ってる。

ネタバレだが書いてしまおう。
母は乳がんで、恐らくこれが最後の感謝祭の晩餐になる。
そのことを知ったエイプリルは、母との関係を修復しようと思い立ったのだろう。
元彼はヤクの売人だったが、今彼は好青年だ。
エイプリルの気持ちを思い遣って、いろいろ協力しようと気を使ってる。
そんな彼の愛情に支えられ、必至に立ち直ろうとしているエイプリルは、家族の為に初めての晩餐の準備に取り掛かる。

映画は料理に悪戦苦闘するエイプリル、家族にいい印象を与えたくて必至の恋人、母に気を使いながらNYへ向かう車中の家族たちを、それぞれ順に追いながら進んでいく。
余裕と思った料理だが、オーブンが壊れていて七面鳥が焼けないと気付いたときから、かなりスリリングな展開に。
アパート中を「オーブン貸して」と頼んで歩くエイプリル。
その姿を観てると、自然と感情移入してしまった。

いい人あり、変人あり、アパートの住人との関わりも面白い。
旅をして成長していくと言う映画は良くあるが、エイプリルの旅はアパートの中だけだ。
だが恐らく普段は顔を合わせても挨拶一つしない間柄なのだろう。
それぞれの出会いが、エイプリルにとっては十分冒険に満ちた旅になっている。

そして最後になった今、再び娘に失望させられたくない。
そう思ったのだろう。ついに母親がこれ以上進むことを拒否。
一度こじれた親子の関係は難しい。
エイプリルの料理は完成してるのか。
エイプリルは家族と再会することが出来るのか。
母親と心を交し合うことは出来るのか。

こんな単純なストーリーなのに、最後まで飽きさせない脚本の力を感じる。
演出も上出来。特にラストはくどい感じにならず、よく仕上がった。
ほっとしたい夜に、家族と、恋人と観るにはいい映画だ。
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