勝手にお喋りーSanctuaryー

マニアックな趣味のお喋りを勝手につらつらと語っていますー聖域と言うより、隠れ家ー

真実の愛について

2006-03-19 | 映画のお喋り
またしても某店半額期間にて、8枚のDVDをレンタルして来た。
FOXTVとBBCが共同制作したミニTVシリーズ「ザ・グリッド」3枚と、劇場用映画5枚。

「24」を意識したらしい「ザ・グリッド」は、キーファー=バウワーと言う一枚看板の主役がいない分だけ、最初の1枚目は登場人物の顔と名前を覚えるだけで終始してしまった。
場面が激しく移り変わり、原則原語&字幕の私も吹き替え版で見たほど複雑な話なので、気楽な感じでは見られない。
FBI・NSC・CIA・MI5・MI6(すべて実在)の組織名の区別がつかないと、その時点で置いていかれる。
さらに日本人の記憶に深い爪あとを残しているサリンが使用されているので、この事件を思い出したくない方も見ないほうが・・・。
それを除けば、9・11以降の世界がリアルに描かれていて面白い。

さて、映画の方だが、まず3作まとめて。

《奥さまは魔女》
1960年代を代表するアメリカのコメディドラマを、ニコール・キッドマンで映画化した。
と言ってもリメイク版ではなく、言ってみれば「バッドマンビギンズ」
テレビドラマは魔女のサマンサと人間のダーリンが結婚した後の騒動を描いているが、映画は二人が結婚する前の話を描いている。
名前もサマンサとダーリンじゃないし。

とにかく冷たい美女と評判のニコール、そのぶりっ子(古っ!)ぶりが笑える。
ファッションも髪型も、1960年代を意識してるのが面白い。
問題は恋人役のウィル・ファレルに、まったく魅力がない点。
幾ら人間界のことを良く知らない魔女だって、この男には惚れないだろう。

《マダガスカル》
目の前の棚に並んでいたから借りてきた。
ニモは面白かったし。
都会生活に馴染んだNYっ子(動物)たちが、成り行きでマダガスカル島に漂着。
精肉しか知らないライオンやその仲間たちは、本物のジャングルに呆然・・・。
みたいなあらすじが書いてあったので面白いかと思ったのだが。
彼らよりずっと目立ってて個性的だったペンギンさんたちを主役にして欲しかった。

《モディリアーニー真実の愛ー》
中学生の頃、モディリアーニのやたらと首の長い女性の肖像画に惹かれた。
他にも私の好きな画家がたくさん登場するようなので興味を持った。
芸術家の狂気、みたいなものも嫌いじゃないしね。
20世紀初頭の、世界中の絵描きや物書きが集うパリのカフェのサロン的雰囲気も好きだし。
この辺はまったく期待を裏切られなかった。
お、ユトリロだ。
へぇ、ピカソの映画とは一味違ったピカソになってる。
え?ルノアールまで出るの?
しかもピカソの取り巻きはジャン・コクトーじゃないの。
と楽しんでいた。

そしてモディリアーニを狂信的なまでに愛するジャンヌ役の女優さん、まさに彼の絵のモデルの雰囲気を漂わせてる。
彼女に不満はない。
だが!
ー真実の愛ーと言う副題の意味がちょっと違った。
どう見てもジャンヌの愛はー真実の愛ーではない。

多分この映画を見る人は殆どいないと思うので、すっかり書いてしまう。
モディリアーニは子供の頃に患った結核が治っておらず、しかも長年の貧乏暮らし、酒浸り、麻薬(マリファナ)で、身体はボロボロ。
診てもらった医者に、このままの生活を続ければ、余命は1年と言われる。
だが彼は酒もタバコもマリファナも止める事ができない。

ジャンヌは彼がアルバイトをしてる絵画教室の生徒で、すぐさま彼に惹かれる。
二人は子供まで成すのだが、ジャンヌの父親はモディリアーニがユダヤ人であることを異常なまでに憎み、結婚を認めない。
ジャンヌは父親からモディリアーニか子供かの選択を迫られ、子供を置いて彼の元へ。
その後も献身的に尽くすのだが・・・。

私がどうしても認められないのは、彼女の愛情がダメ母親の我が子の可愛がり方に見えるところだ。
一緒に生活していれば、彼の体調にも気付くだろう。
私がジャンヌだったら、縛り上げてでも酒と麻薬を止めさせる。
こんなもんに殺されるくらいなら、自分で殺してやると思う。
でも、彼女がそのことでモディリアーニに何か言っているシーンはひとつもない。
ただ容認してるのだ。
こんなの、決して真実の愛じゃない。

真実の愛を見つけたのは、モディリアーニの方だった。
ジャンヌと子供の為、気が進まなかったコンペに絵を出品する決心をし、その賞金で結婚生活を始める決意まで固める。
彼は全身全霊を一枚の絵の中に込め、それを彼女への愛の証にするのだ。
もしかしたら、彼は酒も麻薬も止めようとしていたのかも知れない。
それを実行する前に、命を落としてしまうのだが。

何も変えようとはしないジャンヌ。
何かを変えようとしたモディリアーニ。

愛すると言うことは、変わらないことではない。
変わっていく自分を相手に認めさせることだ。
変わっていく相手を全身で受け止めることだ。
同じところに留まっている愛は、いずれ朽ちて消えてしまう。
Comments (2)
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