勝手にお喋りーSanctuaryー

マニアックな趣味のお喋りを勝手につらつらと語っていますー聖域と言うより、隠れ家ー

沈黙の続き

2009-02-27 | 胸ときめかすお喋り
電話を切った後で、私はようやく話すことを思いついた。
彼の声を聞いていると、異常に頭の巡りが悪くなってしまうことが恨めしい。

さて、ここからが悩みと苦しみの1時間の始まりだ。

かなり正当な用件なんだから、こちらから電話をかけ直してもおかしくない。
だけど。
だけど。
だけど。

かけられない理由を山ほど考えた。
家で仕事をすることが多いので、お仕事中かもしれない。
すごく忙しい人なので、邪魔をしては悪いだろう。
大した用件でもないし。

最後は彼と話したいと言う誘惑に負けた。

少し驚いているみたいだった。
ためらいがちな返事。

こちらが用件を伝えると、またすらすらと話し始めた。
声がさっきよりやさしい。
安心して、私もふだんの調子に戻る。

それでも、もう一歩の垣根が越えられない。
この垣根は何なんだろう。
どっちが防波堤を築いているんだろう。

1歩近付いたと思うと、また元のポジションへ。
どうしても越えられない。
今なら傷ついたって、失うものなんかないのに。

あるかもしれない。
彼を思う時間。

安全地帯から足を踏み出し、その先に道がなかったら、私はそれすらも失ってしまう。

そしてふと思いついた。
もしかしたら…彼も怖いのだろうか。

もう若くないから。
もうそんなに簡単に恋なんか生まれないから。
まるで当たり前のように人を好きになっていた頃とは違うから。

この気持ちがどれほど貴重なものか、経験を重ねた分だけ私は知っている。
若くないから臆病になる。

垣根を越えられないのではなく、越えたくないのかもしれない。
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