アジアはでっかい子宮だと思う。

~牧野佳奈子の人生日記~

愛しのロシア

2013-09-27 | ロシアの旅

ロシアがステキすぎる。

ロシアが大好きになってしまった。どうしよう

10人中9.5人は英語を話してくれないけれど、だからといって外国人を嫌がるわけではなく無理矢理ロシア語で教えてくれようとする。それでなんとなく分かってしまうんだから、それで十分なんだと気づく。

今回の旅は極東ロシア。ウラジオストク~ハバロフスク。

そしてここは、人間観察天国だ。

髪の黒い人、黄色い人、赤い人、白い人、恐ろしくストレートの人、激しくカールしている人。体系も小枝のような人からお相撲さんのような人(女性ばっかり!)まで。顔だって、人形のように美しい人の隣にとんでもないおばちゃんが歩いていたりする。バス停でいちゃつくカップルも堂々とキスして人目をはばからなければ、ベンチで血を流している無愛想なおじさんや、その近くで安い弁当にかぶりついている中年カップルがいたりもする。そうそう、街の中には至るところにベンチがあって、少し疲れたらどこででも休めるようになっているのも嬉しい。水兵さんや駅員さん、警察官などカッコいい制服姿の若い男が街のあちこちを歩いているのも目の保養になる。

一昨日はこんなことがあった。

てくてく歩いてビーチに出たら、ベンチに座っていた男の人に呼び止められた。「フォト!」とかなんとか言われて、そっちを向いたら手招きしている。行ってみたら、丸顔の笑顔が愛らしい40代くらいのウズベキスタン人だった。アリさんという。

言葉が通じないなりにもなんとか会話したくて、鞄からロシア語の指差し手帳を取り出した。買ったばかりでまだ一度も開けてなかったことを少々悔やみつつ、何を話そうか考えながらページをめくった。
別に特別話したいことはない。とりあえず「私は独身です」というマスを指差して、しまったと思った。道ばたで初めて会った人に、なんで独身をアプローチするのか意味不明すぎる。

けれどなんだかんだ指差し、笑い合っているうちに仲良くなった。それは彼がたまに私の顔をペシッと叩く行為に表れていた。こっちは内心びっくりするけれど、ウズベキスタンでは「このやろう!」と冗談でからかうときに相手の顔を叩くらしい。まるで大阪みたいだなと思った。大阪人もさすがに初対面で頭をどついたりはしないけれど。

とにかく彼はそうやって笑顔で私をからかいながら、「君は目がきれいだ」と言った。「クラシーバ」という単語は、バイカルに行った時ルダが何度も言っていたから分かった。

写真を撮り合って、10月17日にまた会おうと約束した。電話をくれと彼は言ったけれど、それは無理でしょう、と私は心の中でつぶやいた。指さし手帳もジェスチャーも表情もなしに、用件のみ伝えられる自信はない。

 

遊園地の前の通りを、土産物の屋台を覗きながらぶらぶら歩いた。途中で空腹に堪えかねて肉まんを買う。
日本の中華マンの3倍の大きさに、キャベツと肉を炒めた総菜がつまっていた。
あまりの旨さに感動の写真をパチリ。

 

そろそろウラジオストク日本センターに行こうと腰を上げ、市役所の前を通ってポクロフスキー聖堂に向かった。大きな交差点を渡る地下道を出たところで、中東系の母子が物乞いをしていた。こどもは3人も4人もいる。ちょっと写真を1枚撮らせてもらっちゃおうかな、と思ってUターンしたとき、恰幅のいいおばさんと出合い頭に対面した。そして「ちょっと、あなた、写真撮ってくれない?」と、(多分)おばさんは言った。

ポクロフスキー聖堂の前に行って、写真セッションが始まった。
おばさんは写真にずいぶんこだわりがあるようで、足も全部写るように、と指示を出し、私はそれに忠実に従った。「あなたの写真も撮ってあげるわよ」とおばさんが言うのでカメラを渡すと、なんと大胆な斜めアングルでカメラを構える。さらに、私のカメラでおばさんのポートレートを撮らせてもらうと、おばさんも私のポートレートを撮ってあげると言う。再びカメラを渡すとおばさんは途端に足腰のバネを利かせて、カメラマンよろしく立ち位置を変えながら私を連写し始めた。まさかの展開に度肝を抜かれて動転する私。しかも連写がやたら長くて、一体この事態は何なのか、訳が分からなさすぎて笑い転げた。

おばさんは満足したようにカメラを私に返しながら言った。
「ドクター!」
なんとおばさんはお医者さんらしかった。

 

たった1日歩き回っただけで、こんなにチャーミングな人達に出会える街。

ウラジオストクは、信じ難いほど愛くるしい。

 

 
 
そしていよいよシベリア鉄道に乗車。
これまたステキ、かつ快適すぎて興奮してしまう。
 

ロシアンサイズのゆったりベッド座席で、ガタゴトとのんびり揺られながら車窓を眺めた。
景色もまた、ロシアならではの雄大な大地。

そしてふと思った。 

旅好きの人は、ハマったハマらないという問題ではなく、そういう人種なんだろうなぁ。
旅しているときが、自分の生活に最もフィットしているという感覚。
旅しているときが、最も自分らしくいれているという手応え。
もしかしたら浮気性な性格ともリンクするかもしれないけれど、逆に自律の鬼だともいえる。行く先々で愛に溺れることなく、刹那的に出会いと別れを繰り返せるという点において。 

心を自由に解放する行為は、定期的に必要らしい。
自分が自分であるために。

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿