アジアはでっかい子宮だと思う。

~牧野佳奈子の人生日記~

今日も工場日和-3

2014-12-22 | 日本の旅

ずっと気になっていたブラジル人のカップルと、今日初めて同じ作業チームになった。

 

彼らはいつも無口無表情で、休憩時間の度にお弁当を食べる。

10:00、12:00、15:00の3回とも。

 

それで、どんだけ食いしん坊なんだろう、とか、どんだけ料理好きなんだろう、とか、いろいろ思ってみるのだがそれにしてもよく食べるので、すごーく気になっていたの。しかも彼の方は男前でガッツリ系、彼女の方はスラッとした才女系の容姿。とても食い意地張ってる感じではない。

 

作業がたまたま途中で中断した時、思い切って彼女に聞いてみた。

「ねえ、いつもお弁当、たくさんだね」

「そうそう。2時間で、いつも、食べる」

彼女は日本語があまり得意ではないらしく、知っている単語を探しながら一生懸命話してくれた。

「私、むす…ええっと何だっけ、むすこ? ここ、ええっと、マッス…」

「マッスル?」

「そう。マッスルにプロテインが必要ね」

「息子さんがいるの?」

「そう、2人。マッスルのために、2時間、いつも、食べる」

「2時間ごとに食べなきゃいけないの?」

「そうそう。息子は大きいからいっぱい、私はちょっとね」

「?」

「でも2時間」

「そっかー。息子じゃなくて、旦那さんね。旦那さんと、あなた、2人とも…」

「そうそう。卵8個、食べる」

「8個!?」

「白いところだけ。黄色いところ、コレステロールだから、ダメ」

「へ? 白いところを8個分食べて、黄色いところは捨てるの?」

「そう。毎日」

「毎日!? 2人とも?」

「そう」

「2人で16個!?」

「そうそう。たくさんね」

「それ…、病気?」

「そう、病気。ブラジル人は、日本人とちょっと違うね。日本人は体小さいから、きれい、けど、ブラジル人は、ここ(お尻を指して)とか、大きい」

「へえ~。卵8個… で、病院も行ってるの?」

「行ってる。チキンでもいい」

 

それにしても毎日卵白8個食べなきゃいけない筋肉の病気って何だろう…。

不思議でしょうがないけれど、また作業が再開してしまったので真面目モードに戻り、隙を見計らって再び聞いてみた。

 

「卵の白いところ、どうやって食べるの?」

「違うね、卵をこうやって、2つにして、白いところ、こっち、黄色いところ、捨てる」

「そうそう。その白いところ、どうするの?」

「水と一緒にして…」と彼女は懸命に説明してくれようとするのだけど、日本語がスムーズに出てこないためになかなか伝わらない。

そこでゴミ箱からさっき捨てたばかりの裏紙を取り出して、絵に描いて教えてくれた。

 

それによると、8個分の卵白は次のように調理される。

1、卵焼きの要領で卵白のみ焼く

2、ゆでたまごを作って、白身の部分だけ食べる

 

…シンプルの極みじゃないか。

 

「おいしいの?」

「大丈夫」

「塩は入れる?」

「ダメ。醤油もダメ」

「何もつけないの?」

「そう」

「…それって、おいしい?」

「おいしくない。でもしかたない」

 

そうだよね、と私は言って、卵白8個の生活を想像してみた。

…無理。…だよなぁ。

 

「お金かかるね」と言うと、「そう!」と大きく首を縦に振って、彼女はまたセカセカと作業を続けた。

 

いやぁ、びっくりしたなぁ。

そんな病気があるなんて。そんな闘病生活をしている人がいるなんて。

 

帰ってから「筋肉 病気 卵」でググってみたけれど、案の定、そんな情報はどこにも見当たらなかった。

ポルトガル語で検索したら、見つかるのかな。

 

そして夕飯のうどんに、今日は卵を2個入れた。

おいしいのは、やっぱり黄身だった。

 

 

追記:後日、別のブラジル人の友人に「卵8個病」の真相を聞いてみたところ、それは病気ではなく、筋力を上げるためにそう指導されることがあるのだということでした。
彼らはそれを病気と認識しているのか、もしくは日本語で上手く説明できないために手っ取り早く病気ということにしたのか分かりませんが、いずれにしても「毎日卵白8個」というのは大変だわね…^^;


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