南京の人々は、今、日本にどんな感情を抱いているのか―。
例えば南京大虐殺記念館の出口付近でインタビューしてみると、ほとんどの人からこんな答えが帰ってくる。
「昔の日本人は残酷だと思いました。でもこれは過去の話。もう歴史になったことです。」
南京市内で50人以上に街頭インタビューした私は、あっさりそう言って退ける彼らに唖然としてしまった。しかし考えてみれば、78年に日中平和友好条約が結ばれて以来、日本の電化製品や映画文化が中国の人々に新鮮な驚きを与え、渡日する者が増えて情報が入るようになり、今や街の至るところに日本人女優のポスターやJ-popが溢れ返っている。まさしく中国は、経済面だけでなく人々の価値観までも「激動」の数十年を歩んでいるのだ。
一方で「日本は嫌いだ!」と言われることも何度かあった。
もしくは「日本政府に少し嫌な感情を持っています。」と打ち明けられた。
歴史認識を巡って、両国の間にまだスッキリしないわだかまりがある。私たち日本人の多くは既に忘れてしまっている(もしくは目を背けている)国としての大きな課題が未解決であるために、風化されることのない“しこり”が中国人の心の中に取り残されているように思う。
大学院で日中関係史を研究している劉忠良くんは言う。
「日本に対する感情は複雑です。日本文化は大好きでも、心の中では日本を憎んでいる中国人は多いと思います。」
――であるなら、私たちはどうしたら良いのだろうか。
南京大虐殺記念館でこんなことがあった。
「日本人は嫌いだ!」と言い張る30代の男性が、なぜか私の取材行動を観察し続け、最後には自ら話したそうな表情を浮かべて近づいて来た。そして私たちはいつの間にか歩調を合わせながら一緒に歩き、話をし始めた。
「なぜ日本人が嫌いなんですか?」と聞く私に彼は
「日本人の心の中では、中国人は人間じゃないんだ。だから中国人を殺したんだ。」
と悔しそうに答えた。そして「でも日本人の中にも、いい人もたくさんいるんですよ。」と私が言うと、彼は「そうかもしれないね。君は少なくとも悪い人じゃなさそうだ。」とついに笑顔を見せるのだった。
「交流」という言葉の意味は「目と目を見て心を通わすこと」。
私と彼は、お互いのことを一生忘れないだろうと思う。
(2010年1月15日 日中友好新聞 掲載記事より)
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