ぶらりドリブルの旅

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個人昇格した男達~2020年開幕前・その3

2020-02-04 16:47:07 | 雑記

その1 その2

まだまだレンタル絡みの話は続く。

<レンタル元に帰らず移籍した選手達>

・櫛引一紀(名古屋→大宮→広島) DF 前年の成績 18試合・1620分出場 得点1
札幌でキャリアをスタートさせ、2012年にはJ1で10試合出場。しかし2度目の昇格を経験した後の札幌ではプレーする事は無く、2017年に名古屋にレンタルで移籍。
名古屋でも昇格に貢献したのだが、翌2018年のJ1での戦いは彼にとって苦難の道となり、守備組織が脆弱な当時のチーム状況で序盤の8連敗に被ってしまう(古巣札幌戦でオウンゴールとかあったね)と、夏の大型補強の後はサブに転落した。そして前年も出場は1試合に留まり、移籍を選択。
元々能力的には問題無く、3バックの右センターバックで25節以降フル出場。攻撃参加も積極的で、主にイッペイ・シノヅカの右サイドアタックに絡む事数多と充実。
それが目に留まり広島が獲得に動き、移籍。レンタルの間に監督が代わった(風間八宏→マッシモ・フィッカデンティ)とはいえ、確かに名古屋復帰では負のイメージを抱えてのプレーとなりそう。これが正解と成績で証明する事は出来るだろうか。

・宮大樹(神戸→水戸→鳥栖) DF 12試合・925分出場 得点2
まさにCBをやるべきポテンシャルを持つ選手で、北本・渡部の後釜として期待されての入団。前年も期待(11試合出場)を受けたが、夏の大型補強であっさりと有耶無耶になり、水戸へレンタル。
折りしも伊藤がマリノスに引き抜かれた直後の水戸なので、定着するのにそれほど時間は掛からず、ストロングヘッダーとしてチームの昇格争いを支えた。
ただ、ロングパスでのビルドアップが目立っていたので、CBに繋ぐのを求める神戸では使い所に困るタイプなのも納得。鳥栖移籍は彼にとってステップアップになると素直に信じたい。

・島村拓弥(京都→ブラジルリーグ→セレッソ) MF リーグ戦では出場無し
J2→海外2部→J1というやや特殊な経歴でJ1の舞台へ。京都ユース出身だが、2年目の2018年岐阜へレンタル(4試合出場)と、「若手はレンタルに出して成長させる」という路線に乗っかる。
すると前年、ブラジル2部のロンドリーナECというクラブへ、同じユース出身の江川・荻野とともに修行に渡る事に。そこで「パラナ州選手権」という大会でかなりの活躍を見せたらしい。
すると今季は、チームに戻った江川らを尻目に島村はJ1のセレッソに。J2→J1へのレンタルという珍しい図式で、活躍すれば完全移籍になる事が濃厚だろう。ただしセレッソの選手層を考えると厳しい道のりだろうが。

・一美和成(ガンバ→京都→横浜FC) FW 36試合・2499分出場 得点17
特別指定での加入先は熊本(現J3)だったが、横取りなのか内定先はガンバに。J3(U-23)で結果を出しつつJ1の場も経験と、ゆったりながらも確実な成長曲線を描いていたが、京都へ育成型レンタルとなった前年が運命を加速させる……とは言い過ぎか。
開幕当初はサブに留まっていたが、初スタメンとなった8節で2得点を挙げ、14節から3試合連続得点を挙げると以降はCFとして定着。3トップのCFとして得点・ポストプレイで攻撃の中心を担い、自身もチームも快進撃。
まさに我が世の春というシーズンとなったが、その間にガンバのFW事情は激変。宇佐美・パトリックの復帰で層は厚くなり、ガンバに復帰しても出番は限られるのは明白な状況。クラブは再度育成型レンタルという手法を取り、今季はJ1に上がりたての横浜FCで戦う事に。1トップの戦術には合うだろうが、ここにもイバ・皆川とライバルが多く、勝ち抜く事が出来るか。

・呉屋大翔(ガンバ→長崎→柏) FW 36試合・2927分出場 得点22
大卒でガンバに入団。当時は争奪戦となったらしくその能力は高く、1年目(2016年)から14試合出場・1得点とそれなりの活躍。しかし殻を破れずレンタル移籍となった2018年、移籍先の徳島で不振と暗転。
そしてレンタルバックとなった前年だが、開幕早々に長崎に再度レンタル。今度は軌道に乗り、ほど無くしてチームの点取り屋へと飛躍した。13節から7試合連続得点という大爆発、その後もゴールを奪い続け、最終的には日本人最多得点となる大活躍を魅せた。
しかし前年の長崎は途中から、ボール支配を重視したサッカーへと移り変わり。そのため「呉屋目掛けてロングパス」という手段は減っていき、本人の思惑と方針のズレが窺えた。ビクトル・イバルボ、秋野が完全移籍へ移行するのを尻目に、手放す事となったのはそんな背景からかも知れない。(単に予算面からなのかも知れないが)

・小林友希(神戸→町田→横浜FC) DF 15試合・1350分出場
神戸ユースからの生え抜き。こうして見ると神戸の育成組織は中々優秀なのが窺えるが、トップにそれを生かす意識があるのかは依然不透明な状況。
宮とともに理想的なCBとして育成されるべき素材なはずだが、それは他クラブに任せる道を選んだようで、前年途中にレンタル。28節以降全試合にフル出場と、初めて纏まった出場機会を得る。その間町田は厳しい残留争いを戦い、引き分けの試合が激増した辺り貢献度は低くなかったのだろう。
レンタル期間は終了したが、クラブは再びレンタルを選択し、今度はJ1・横浜FCへと移籍。果たして神戸に戻る日は何時になるのか、それとも永遠に来ないのだろうか。

・神谷優太(湘南→愛媛→柏) FW(MF?) 36試合・2857分出場 得点6
ヴェルディの下部組織だったが、ユース時に編入(日出高校→青森山田高校)した事で縁切れとなったか、プロ入りの際は湘南の門を叩く。1年目からJ1で出場するも、2018年からはレンタルで愛媛入り。
その背景には代表を目指す程のポテンシャルを持っており、アピールの場を増やすべくの移籍劇だったのだろう。なお愛媛には同じく代表入りを狙う長沼もレンタルで在籍しており、環境的にベターな選択といえた。
前年は数字こそ伸ばしたものの、山瀬の加入でオプションが増えた事もあり、やや希薄となった印象を受けた。それでも多数のレンタル組では最上位の成績であったが、下川とともに移籍を選ぶ事となった。柏はJ1に上がりたてなものの、選手層の厚さは健在で五輪出場をアピールするにはヘビーな状況だが、目標達成を果たしたい。

以下閑話休題、その1からの続きです。

<完全移籍を果たした選手達>

・レオナルド(新潟→浦和) FW 38試合・3100分出場 得点28
前年のJ2得点王、その栄光を引っ提げて今季ついにJ1へ。その前にはJ3(鳥取)で得点王に輝くという経歴であり、2年連続の個人昇格。
個人的には、今季マリノスに完全移籍になったオナイウ阿道ぐらい(2018年J2山口で22得点→2019年J1大分で10得点)に、「能力は発揮したが、壁にもぶつかった」というような活躍具合になると予想。得点力に関しては文句無いレオナルドだが、ボールが回って来ないと仕事が出来ないタイプ。そしてその「FWへボールを回す」という能力に疑問符が付くのが前年の浦和なので、双方現状維持ならば苦戦は必至となるであろう。
しかし今季の浦和は戦術・フォーメーション変更を示唆しているらしく、彼を活かせるようなサッカーに生まれ変わる可能性もあり。まずは開幕を待とうと思う。

・戸嶋祥郎(新潟→柏) MF 34試合・2984分出場 得点1
ボランチとして地味ながらチームを支えた、レオナルドの派手な活躍の影に隠れがちなシーズンであったが、移籍劇もその傾向が窺えたのは気のせいか。
大卒で入団し、1年目(2018年)から終始レギュラー扱いで前年シーズン終了まで突っ走った新潟でのプロ生活。その能力の高さ故、J1クラブに引き抜かれるのは自然な成り行きだともいえる。
移籍先の柏だが、ボランチの層はやや手薄で、大谷・三原とベテランは居てもそれが逆に不安なポイントだった。よってヒシャルジソンの相方としてレギュラー定着・活躍の可能性は十分だ。

・山本義道(金沢→マリノス) DF 40試合・3599分出場 得点3
戸嶋はコンスタントに出場を重ねた選手だったが、急成長を遂げた選手に対しても「個人昇格」の食指は容赦無い近年。
典型的なストロングヘッダータイプのCBらしく、1年目は12試合・1得点に留まったものの、2年目となった前年はレギュラー定着。自身だけでなく周囲も長身選手が揃い踏みの金沢というチーム内で、DFながら3得点も記録した。
ただ金沢はポゼッションに全く拘らないチームなので、その真逆といえるマリノスが獲得に走ったのはやや謎。密かに足元は巧いのか、それともまだ若いこの時期に魔改造を仕込もうとするのか。

・香川勇気(長崎→大分) DF 32試合・2671分出場 得点4
戸嶋・山本は2年で「昇格」したが、苦労を重ねてようやくそれを果たせた選手も当然居る。
攻撃的な左SBとして山口の戦術にマッチしたが、2017年のチーム低迷・監督交代(上野展裕→カルロス・マジョール)で行き場を失い、その年の夏に所属を長崎に移す。クラブが初のJ1昇格を果たす中で故障もあり満足に出番無く過ごしていたが、2018年再び夏の移籍でヴェルディへとレンタル、そこで主力に成長してようやくマイナスイメージを払拭。
再び長崎に戻った前年。左SBとして活躍を魅せたものの、終盤の米田の躍進で立場は微妙なものになっていたのだろう。米田は右SBだが、経験豊富な亀川が両方出来る選手なので、どうしても誰かがあぶれる構成に。そんな状況でのJ1クラブからのオファーはまさに渡りに船。大分は3バックが基調の現在だが、WBとしてマッチできるだろうか。

・三幸秀稔(山口→湘南) MF 42試合・3779分出場 得点1
苦労の重ね具合ならば、経歴だけで言えば彼に勝るものは無いであろう。甲府でスタートしたプロ生活、その際にJ1も経験したが、故障で数字はほとんど残せず。その後J3の相模原で1年プレー、これで復活したと思い込んだか、個人昇格すべくオフのトライアウトに参加したものの果たせず浪人生活となってしまう。
そして翌年の2度目のトライアウト、何とか山口への入団が決まり、1年目から主力で活躍。そして2018年~前年終了まで欠場試合は僅か1試合と、欠かせないボランチに定着という復活劇を演じた。
移籍先の湘南は「エレベータークラブ」の域を出ず、彼の前途はまだまだ不透明だが、一度どん底を味わった男の強みを出せるかどうか。

・前貴之(山口→マリノス) DF 37試合・3302分出場 得点2
札幌民には有名な前兄弟。兄・貴之はこの度J1に返り咲き、弟の寛之も水戸で昇格しても良いパフォーマンスを見せていたが、長谷部茂利監督恋しと言わんばかりに福岡移籍となり、兄弟違うカテゴリーで挑む今季。
札幌でJ1出場も経験(2012年)していたが、次第に出番を失い山口にレンタルで移籍したのが2017年。するといきなり自己ベストの出場記録を叩き出し、完全移籍となり山口選手としてのレールに乗る。
能力的には3バック・4バック双方で、ディフェンスラインを安定して任せられる人材。SBとCB両方が出来る能力は貴重で、そのためマリノスではオプション的な扱いになるだろうが、ハイレベルな攻撃的サッカーをするクラブなので、その中で殻を破る事があればあるいは。

・菊池流帆(山口→神戸) DF 35試合・2974分出場 得点3
驚異的なフィジカルを前年J2で見せ付けた大卒新人。僅か1年でJ1への切符を掴んだが、あの強靭な身体からのディフェンス力と、数多の先輩選手に立ち向かうメンタルの強さは、J1でも即戦力になれる可能性大である。
岩手県・釜石市からの初のJリーガーでもあり、育成年代に直面した東日本大震災という苦境を乗り越え……とは月並みな表現だが、地元のためにもJ1という舞台でも活躍が期待される。
ただし近年の神戸はCBというポジションも外注が目立ち、菊池が割って入る余地があるかどうか不安は隠せないが。

・吉田舜(群馬→大分) GK 34試合・3060分出場(J3)
締めはJ3→J1へと飛び級した選手をば。
埼玉・熊谷市出身で、隣県の群馬へと入団したのが前年……の前に、特別指定として相模原に加入していたのが2017年。
時は流れ、正GKとして全試合出場と実力を見せ付けた前年。そしてクラブはJ2昇格し、今季はJ2の舞台で戦うと思いきや目を付けた大分が獲得、一気に2つ昇格を果たした吉田。
若い時期での正GKとして思い浮かぶのが広島に在籍する大迫で、前年クラブやユース代表で存在感を発揮し、A代表のGKとしての階段を上っている最中である。吉田も大分で正GKになる事があれば、その道がぼんやりと見えるかもしれない。

・高澤優也(群馬→大分) FW 27試合・1779分出場 得点17(J3)
大学時代、JFL・流経大ドラゴンズ龍ヶ崎の選手として出場を重ねる。JFL上位のレベルは決してJ3と並んでも謙遜無く、そこで経験を積んだ高澤、新人としてJ3に挑んだ前年早速活躍を魅せるのは訳の無い事だった、とは言い過ぎか。
ともかく点取り屋として結果を出し、群馬のJ2昇格に貢献した高澤。その活躍が大分強化部の目に留まる事となったのだろう、吉田とともに2ランクアップ。
大分はとにかく人材を活かしきる事がアイデンティティのクラブで、前年は「J2オールスター」と言わんばかりの選手編成ながら一桁順位を確保。そして今季はJ3にも目を付け始めるなど、方針にブレは見られない。その中で高澤は活躍し、J1選手としてキャリアを積めるだろうか。

・堀田大暉(福島→湘南) GK 33試合・2970分出場(J3)
仙台ユースに属するも昇格は果たせず、大学(東海大学)に進んだものの、J3でのキャリアのスタートを強いられる。しかも1年目にトレーニングの際頭部に大怪我を負い、出遅れも強いられる。
そんな窮状から掴んだ福島の正GKの座。前年はチームに2人もコリアンGKがレンタルで加入(キムミンジュン・イユノ)してきたが、2人が血も涙もない2番手争いを繰り広げるのを尻目に、正GKをキープ。
シーズン後に湘南は、レンタルに送ったキムミンジュンを戻すのでは無く、堀田獲得という手を選んだ。苦難を乗り越えた末に待っていたのはJ1への飛び級というご褒美だったが、ここからが勝負だ。

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