※前回の栃木の記事はこちら(41節・千葉戦)
※前回の磐田の記事はこちら(40節・北九州戦)
既に6位が確定している磐田。
後半戦の中心選手として君臨していた大ベテラン・遠藤は、体調不良との事で前節に続いてベンチ外となり、形式上一足先にシーズン終了となりました。
その遠藤が、来季も契約延長(レンタル)という噂が出始めている現状の磐田。(現在もまだ未定)
経験豊富な中盤の選手の力を借りるのは確かに必要でもありますが、その遠藤は最早最晩年で無理をさせられないのは明白。
名波浩監督がJ1で苦闘していた時代も、中心選手とされていた中村俊輔(現横浜FC)の衰退で、あっという間に降格の危機が訪れてしまう事となりました。
果たしてその時からチーム全体として意識は変えられているのか。
言い換えれば、遠藤加入という事象をチーム力の上昇に還元できているのか。
その試金石ともいえる遠藤不在の今季ラスト2節となり、前節・町田戦は0-2からの逆転勝利、しかもアディショナルタイムでの2得点による大逆転。
とりあえずは結果を出し、最終節を迎えました。
前節に続き、カンセキスタジアムとちぎでの稼働となったこの試合。
最終節とあって、前節(千葉戦)からは倍以上の観衆を集めての一戦。
ホームの栃木は前半2分に早くも矢野が、黒﨑の右サイドのドリブルからのクロスに合わせボレーシュート(GK八田キャッチ)と見せ場を作ります。
その後も栃木は最大の特徴である「ストーミング」スタイルから、磐田がシュートまで行けないのを尻目に好機を作っていく試合を展開します。
しかしこの日は何処と無く迫力が無く、ボールを繋ぐスタイルの磐田に巧くかわされているという印象。
その磐田の攻撃、序盤は大森がボールの引き出し役として、実にピッチ上を広く動き回る。
それがいつものスタイルなのですが、遠藤不在なためそのウェイトも大きくなり、栃木側もその対応に苦難していました。
栃木も混乱状態に陥っていたのか、磐田の最終ライン相手にプレスを躊躇するシーンが目立つ事となりました。
まあ3バックがそのまま最終ラインになり、一列前の受け手(ドイスボランチ)に大森が加わったりするので、プレスにいっても剥がされる危機が大きそうでしたが。
パスワークで攻撃を展開するも、フィニッシュには繋げられなかった磐田。
24分にようやく山本康裕の左への展開から、大森のエリア内左へのスルーパスに走り込んで受けた松本がシュート(GK塩田キャッチ)と初のシュートを放ち、飲水タイムへ。
確実に良い流れはそこまで迫っていた磐田。
そして29分、右サイドで山本義道・小川大貴・山田を中心にパスを繋ぎ前進するも、一旦最終ラインへ戻され作り直し。
そして再び右サイドを選択し、上原縦パス→山田スルーパス→小川大と渡り奥へ進入、エリア内へのパスを受けた山田が切り返しからシュート。
GK塩田がセーブするも、跳ね返りを詰めた松本がネットに突き刺しゴール。
長いパスワークを得点に繋げ、遠藤不在を感じさせない先制点となりました。
その後も磐田はゲームを支配。
36分には再び、大森のスルーパスをエリア内右で受けた山田が、カットインからシュート。
ブロックされた跳ね返りに松本が走り込んでシュートと、1点目のシーンと同じ2人がフィニッシュに絡みましたがGK塩田のセーブに阻まれます。
栃木は以降も得意のプレスに難儀し、持ち味が中々生まれず。
リードされた後は最終ラインにプレスを掛けていく事が増えましたが、それも実らず磐田に攻撃権を独占されてしまいます。
結局反撃の糸口を掴めぬまま、ビハインドで前半を終了。
クラブの最高順位である9位に並んでいる現状、1万人を超す大観衆の中、勝利して記録更新を期待されての試合となった栃木。
前年の最終節を思い出しますが、あの時はアウェー(フクダ電子アリーナ)で、J2残留のために何が何でも勝たなければならないという悲壮感溢れる状況でした。
それとは正反対で、プレッシャーの薄い状況の中、さらに上を目指すという未来溢れる展開。
J2という下位カテゴリーの中でも、パスを繋ぐ・ボールを支配するサッカーを基調とするクラブが蔓延する状況にあって、その真逆のサッカーを追求する栃木。
中途半端にポゼッションを踏襲するようなクラブを喰っていく今季の戦いぶりはある意味爽快でしたが、1点勝負のシビアな状況が続き、当事者にとっては相当苦しかったと思われます。
何度も敵陣深めでボール奪取に成功しても、そこから得点に結び付ける精度の面では今一つといった内容で、「ストーミング」本来の威力はまだ発展途上。
それでもこのサッカーを続ける事以外に選択肢は無いと思われる栃木の現状。
来季は本格稼働するであろうこのスタジアム、この日のような大観衆の中、ゴールを量産する戦いは出来るでしょうか。
ハーフタイムで2枚替えを敢行し、後半に臨んだ栃木。(溝渕・佐藤→大島・西谷に交代)
その入り、いきなり左サイドでパスカットした森がドリブルで奥に進入する展開。(プレスバックした小川大に対応される)
サイドにボールを出させて引っ掛けるというスタイルを見せ、立ち上がりは攻撃権を支配する事に成功します。
しかしすぐさま磐田も慣れを見せ、互角の様相に。
時には最終ラインを、片側のセンターバックを上がり目にした2枚でのビルドアップを敢行したりと、変化を付けて相手のプレスの狙いをそらしていきます。
13分に自陣で大井からの縦パスを上原がポストプレイ、左サイドでパスを回すも中川が右へサイドチェンジを敢行し、これを受けにいった小川大がダイレクトで前にパス。
このダイレクトプレイが栃木にとっては実に厄介となっており、この時もその後山田のスルーパスで小川大の走り込みを許し磐田の決定機に。
小川大のクロスがファーサイドに上がり、藤川の折り返しに上原が走り込みシュートと、流れるような攻撃もGK塩田がセーブして何とか防ぎます。
再び磐田のパスワークに翻弄される栃木、その通りに以降は磐田に流れが全振りになってしまいます。
セットプレーでも、18分の磐田のコーナーキックで、磐田のサインプレーに四苦八苦。(キッカー山本康エリア外へクロス→山田ボレーシュートもGK塩田キャッチ)
押せ押せの展開に拍車を掛けるべく、22分に小川航基を投入した磐田。(大森と交代)
飲水タイムを挟んだ後、27分には右サイドから上原のロビングを、収めた小川航がすかさずシュート(ゴール左へ外れる)と早速栃木ゴールを脅かし。
磐田に押し込まれていた栃木、29分にカウンター。
柳がエリア内右へとスルーパスを送ると、受けた矢野がキープののち戻し、走り込んだ山本廉がシュート。
しかしふかしてしまい枠外となると、直後の磐田の攻撃。
上原がドリブルから右奥へスルーパスを送り、走り込んで受けた小川航の戻しから、山田がダイレクトでクロス。
これを中央で藤川が合わせヘディングシュート、ゴールに突き刺して追加点。
磐田が勝利へ近づくとともに、栃木にとって痛かった山本廉の枠外シュートとも感じてしまいました。
無理にでも攻めなければならなくなった栃木。(2失点目の直後に山本廉→榊に交代)
32分に代わって入った榊がエリア内右からシュート、GK八田が足でセーブした所に矢野が詰めてヘディングシュート、しかしこれも枠を捉えられず。
34分にはセットプレー、中央やや手前からのFKで、キッカー明本は直接狙うと見せかけてロビングを選択。
エリア内やや右へと上がったボールに田代が跳び込みヘディングシュート、しかしGK八田のキャッチに阻まれます。
尚も押し込まんとする36分に岩間→有馬へと交代、明本がボランチへとシフトした栃木。
反撃体制は整えた栃木でしたが、2点のビハインドはやはり重く。
43分には再びFKを得て、今度はエリアからすぐ手前。
キッカー明本が直接狙い、GK八田は反応できずもゴールバーを直撃してしまいます。
尚もこぼれ球を明本がシュートするも、エリア内に居た大島に当たり跳ね返り。
前掛かりになる中、35分には矢野が、43分には西谷が警告を貰うなど副産物も付いてきてしまう展開に。
そしてATとなり、CKから田代のヘディングシュート(枠外)もあったものの、磐田に時間を使われる展開に持ち込まれます。
何とかマイボールにして、GK塩田のロングフィードから、柳がエリア内へと落としたボールに矢野が走り込み。
磐田・中川のスライディングを受け体勢を崩しながらも合わせ、ゴールに突き刺して1点を返します。
しかしそこまでで、1-2で試合終了の笛が吹かれて最終戦が終了。
栃木は水戸に抜かされ、10位で今季を終える事となりました。
前年の残留争いから一転、というシーズンとなった栃木ですが、本当の勝負は降格枠が広がる来年となるでしょう。
期待半分・不安半分ぐらいの状況といった現状から、どのようにチームを成長させてくるか、来季も注目したいと思います。