※前回の大分の記事はこちら(21節・鹿児島戦、0-3)
※前回の熊本の記事はこちら(24節・千葉戦、2-0)
<大分スタメン> ※()内は前節のスタメン
- 前節(山口戦、0-2)は中川アンカーの3-3-2-2(3-1-4-2)だが、そこから微調整しドイスボランチの3-4-2-1に。
- 吉田がJ1・マリノスから育成型レンタルで加入し、22節(甲府戦、0-0)から登録されて即スタメン出場。
- 高橋大悟がJ1・町田からレンタルで加入し、前節から登録されて即スタメン出場。
- 来季加入が内定している宮川(順天堂大)が特別指定選手となり、前節から登録される。
<熊本スタメン>
- 岡田がJ1・札幌からレンタルで加入し、前節から登録される。
- 岡崎がJ3・岐阜へレンタル移籍となり、前節(栃木戦、0-2)をもって登録抹消。
- チーム離脱していた道脇の移籍先が決定し、ベルギー2部・SKベフェレンへレンタル移籍。
- 東郷が四国・FC徳島へレンタル移籍となり、前節をもって登録抹消。
- 宮㟢が東海1部・FC刈谷へレンタル移籍となり(以下同文)
- 酒井がJ3・福島へレンタル移籍となり(以下同文)
クラブ30周年記念マッチという事で(その他、亀祭りなどイベントも絡め)、大分のホーム・レゾナックドーム大分に大観衆が殺到した一戦。
その数実に28,359人と、J2らしさを微塵も感じさせないスタンドの環境となり。
その大分は、30年の間に実に浮き沈みの激しい歴史を歩み。
J2の強豪という位置付けながら中々昇格出来ず、やっと上がったJ1の座を守り通さんとして財政難・クラブ消滅の危機に陥るという具合に、その内容は望んで振り返るべきものとは言い難く。
それでもこうして根強い集客の下地は整い(当然、アウェイの熊本サイドの力も加わりましたが)、その期待に応えたい所ですが果たして。
試合開始から間も無く、ペレイラがボールキープする所反則を受け、右サイドからのフリーキックを得た大分。
ほぼ中盤という位置ながら早くも放り込みを選択すると、跳ね返りを藤原がミドルシュート(枠外)とファーストシュートに辿り着き。
決してチーム状態は良くなく、得点力不足かつ長沢・渡邉(2人で11得点)がベンチ外な状況で、どんな形でも良いからシュートそしてゴールが欲しいという思いが溢れ出たシーンとなりました。
組み立てとしては、基本の3バックから、ペレイラが右サイドバック化する変形を見せての最終ラインでのビルドアップ。
新加入(とはいってもこれが5試合目)の吉田に高い位置を取らせ、矛とする攻撃を目立たせ。
しかし熊本の攻撃サッカーが火を噴き始めるとたちまち劣勢に。
前半4分、右スローインを受けた唐山がそのまま持ち運び、右ポケット奥まで切り込んでシュート。
GKムンキョンゴンがセーブするも跳ね返りをさらに岩下が追撃し、ゴール前で保田がブロックと何とか凌いだ大分。
直後の右コーナーキックでも、サインプレー気味にエリア手前へのグラウンダーでのクロスから上村周がシュート(ブロック)と、直ぐに熊本がフィニッシュを放ちまくる展開へと移行します。
8分またも熊本の攻撃、石川の前進がペレイラに反則気味に止められるも小長谷が繋いでアドバンテージ。
さらに中央での唐山のポストワークも倒されますが、右へのパスが繋がってまたも継続し、大本がカットインからミドルシュート。
しかし野嶽のブロックで跳ね返されると大分がカウンターに持ち込み、右サイドから野村のスルーパスに吉田が走り込んでクロス、ブロックされてCKと激しく入れ替わる攻撃権。
その後熊本がポゼッションを高める流れとなり、こちらの基本は3バック+アンカー(上村周)の立ち位置から、唐山がポストワークを務めに降りて来る所を大本が上がって追い越す形がメイン。
大分は上記の8分のシーンで、果敢に潰しにいくも繋がれた事で、リトリートの意識を高める守備体勢に落ち着いたでしょうか。
熊本は労せず全員敵陣に進入してのポゼッションに持ち込む絵図を増やし、15分にはその状況から左サイドで小長谷を軸としてのパスワークで、受け直した小長谷がエリア内中央へ送ったパスを石川が右へと切り返してシュート。
しかしこれもGKムンキョンゴンがセーブと、前節同様にゴールが遠い状況となり。
続く16分には最後方から、岩下がドリブルで持ち運び野村と中川の2人を剥がすという積極性が見られるなど、人数を掛けて敵陣で展開する姿勢を強めるものの得点には結び付きません。
一方大分も、20分に保田の中央の持ち運びから、右ハーフレーンでパスを受けたペレイラがワイドの野村に託すとそのままオーバーラップ。
吉田のワンタッチのスルーパスに走り込んで、トラップでそのままポケットを突いてグラウンダーでクロス(ニアでキムヒョンウが合わせにいくもオフサイド)と、こちらも積極的な上がりを見せるセンターバック。
スコアレスのまま飲水タイムが挟まれ(24分)、続く第2クォーターも概ね同じ展開に。
しかし熊本が次第にボールを持たされる状況となり、フィニッシュに辿り着けずに時間を潰していき。
後は大分次第という所で、30分にGKムンキョンゴンのロングフィードから、キムヒョンウがフリックで流したボールに鮎川が走り込んで(熊本ディフェンスに遭い)CKに持ち込み。
この右CKで、キッカー野村のニアへのクロスが吉田にドンピシャで合わせるも、放たれたシュートはGK田代が片手でナイスセーブ。
セットプレー一発で仕留めんとしますが果たせず、以降こちらも攻撃リズムの悪さが影響し際立った好機は作れない状況に陥ります。
その結果長らく熊本がボール保持するも、何も起こせず時間が進むという絵図は最高潮に達し。
37~42分の間、どちらも攻撃機会を得れない状態に。
そして終盤、大分がCK→吉田のロングスローと再度セットプレー攻勢に。
先程の吉田のヘディングシュート然り、セットプレー守備が今一つハマっていない風の熊本は、GK田代のパンチングなどで何とか凌ぐ格好に。
それを振り払わんと、その後は素早い前進から石川にラストパスを託す攻めを見せましたが、2度とも彼の手前で遮断されて実りません。
結局0-0のまま前半が終了。
共にハーフタイムでの交代は無く、膠着状態のなかどう動くかも注目の的となり。
そして始まった後半。
熊本は前半同様に攻勢を掛けんとするも、その流れは今一つ。
前半に比べて積極性を増した大分のディフェンス、前線五角形で果敢に熊本の最終ラインに規制を掛けにいきます。
対する熊本、その内側に上村周が位置取り、あくまで3CB+アンカーの姿勢で抗戦。
上村周がパスを引き出しつつはたくも、結局はロングパスに頼る事となり。
そこでターゲットとなるべき唐山ですが、収められないというシーンが目立つなどこの日は不調気味。
それに伴い大分が攻撃機会を増やし。
後半5分保田が上村周のプレッシャーで倒されるもそのままキープ、起き上がってドリブルに入った所を今度は石川に倒されるも、鮎川がレイオフで繋いだためアドバンテージ。
中川→野嶽へのスルーパスが繋がらずに終了するも、熊本の前進をゲーゲンプレスで阻み、野村が奪取して再度攻撃。
その野村に対しても藤井が激しくアタックして倒してしまい、こぼれ球を中川が繋いで継続と、前半とは一転して熊本が反則紛いのディフェンスも止められないという流れに。
その後保田のミドルシュートが放たれ、江﨑のブロックで左CKとなると、キッカー保田のクロスは直接ゴールへと向かう軌道となり。
安藤が合わせに圧を掛けるなかGK田代がパンチングで弾き、さらに右ポケットからの縦パスを跳ね返した所を吉田がシュート(枠外)と、数多フィニッシュを浴びた事で劣勢さが浮き彫りになります。
このまま決壊しかねない所でしたが、7分に藤井がスパイクの異常が起こり(紐が切れたとの事)、交換のためブレイクが挟まれ。
落ち着きを取り戻した熊本は、その後大分の前線の守備に対しては意地を張らずに上村周を経由しない攻撃に活路を見出し。
12分、右ワイドの大西から縦パスを受けた藤井、そのまま自身もワイドを前進に入り大本とのワンツーで野嶽を剥がして切り込み。
そしてカットインでポケット奥を突いてマイナスのクロスを送ると、中央でフリーで受けた岩下がシュートと決定機を作りましたが、これも吉田のブロックに阻まれゴールならず。
1点もののディフェンスを果たした吉田が気合のガッツポーズを見せるなど、大観衆のなか勝利に辿り着かんと奮戦する大分選手。
その作り上げたムードの通り、攻め込む大分。
主に右サイドから、ペレイラの上がりを利用しながら前進し、スルーパスで奥を突くも肝心のクロスはブロックに遭い不発が続き。
一方後半は一転して、攻撃機会の差で後手に回る事となった熊本。
唐山が無理にドリブル突破を図り、藤原に止められるなど折角のアタッキングサードでの展開も好循環を齎せず。
やはりベンチも先に動き、20分に藤井→神代へと交代。
石川がトップ下に回り、ポジションチェンジも絡めて流れを変えんとします。
22分大分が最後方から組み立て、GKムンキョンゴンが野嶽へ縦パスを通し、その戻しを中川がワンタッチでミドルパスを送って前進に成功。
鮎川・キムヒョンウを経由し、野村が中央を前進してエリア内へ決定的な縦パスを送ったものの、受けた保田はフリックか(右に居たペレイラへの)ポストプレイか中途半端なトラップになってしまい実りません。
これで流れが再度熊本へ移り、敵陣でボール保持する状況を作り。
そして24分、最後方への戻しからのパスワークを経て、左からの前進を選択して岩下のスルーパスに走り込む小長谷。
入れられた低いクロスは、GKムンキョンゴンの正面に飛んだものの、あろう事か戻ってクリアせんとした安藤がゴールに入れてしまうオウンゴールに。
これが大観衆故の緊張か、ないしはコーチングが聞こえなかったのか、痛いミスといえる失点になってしまった大分。
一方貴重なリードを奪った熊本、同時に飲水タイムが挟まれます。
ブレイク明けのキックオフで再開、苦しい状況となった大分はGKムンキョンゴンがロングフィード→キムヒョンウがフリックと、コリアンコンビの黄金連係でアタッキングサードに運び。
そこから左ポケットに持ち込むも、鮎川のキムヒョンウへの横パスはカットされて実らず。
その後中川のパスミスから好機を作る熊本、小長谷がドリブルで左ポケットを突くと、中央の神代へ横パスを送るもこちらもカットされ。
今度は大分が流れを変えたいという状況で、選んだ手段は一挙3枚替え。
野嶽・野村・キムヒョンウ→宇津元・高橋大・伊佐へと交代します。
なお伊佐はFWでは無くシャドーに入り、鮎川がトップに回り。
これを見た熊本も31分、大本・小長谷→黒木・松岡瑠へと2枚替え。
一瞬、黒木が最終ラインに入る事で岩下がウイングバックに回るという采配が過ったものの、黒木がそのまま右WBに入りました。
32分に再度大分の左CK、キッカー保田はまたもゴールへ向かうクロスを送り、中央で安藤が跳んで圧を掛けにいくもGK田代がパンチング。
掻き出されたボールは、高橋大が右ワイドからカットインを経てミドルシュートとフィニッシュに繋げ、大西がブロックで防ぐも尚も攻め続ける大分。
後方からの放り込みで、エリア内で空中戦に持ち込むと、クリアボールを拾ったペレイラがミドルシュートを放ちましたがゴール右へと外れ。
36分には今度は流れの中で、中央でボールキープする保田が松岡瑠のプレスバックで倒されかけるも、踏ん張ってアドバンテージとなり鮎川とのワンツーで前進。
そして並走する鮎川へ横パスを送り、ペナルティアークからシュートが放たれましたが、これも左ゴールポストを掠めて枠外と「惜しい」の連続。
(33分に藤原→デルランへと交代)
交代策が交わった事で大分へと針が振れ、劣勢を強いられる熊本。(36分に石川→大崎に交代、唐山がトップ下・神代が右ウイングに回る)
39分に大分のCKからの攻めを凌いでカウンターに持ち込み、神代のスルーパスを受けた大崎がエリア内でシュートするも、吉田のブロックに阻まれ。
その姿は堅守速攻のようにも映り、最早普段の攻撃サッカーを貫ける状況では無く。
そしてその布陣が決して「堅守」とはいえない点が、綻びに繋がる事となり。
41分、GKムンキョンゴンのロングフィードで一気に左奥を突き、追い付いた宇津元がクロスに辿り着いた事で再び左CKに。
キッカー保田は三度ゴールへ向かうクロスを送り、今度はニアサイドで合わせにいくボールとなりますが宇津元・デルラン共に触れず。
しかしそのまま流れた結果ボールはバウンドを経てファーサイドに突き刺さり、とうとうこじ開けて同点に追い付いた大分。
熊本は前半から見られていたセットプレーの対応の拙さが、最後まで修正できずの失点となってしまいました。
キックオフの前に中川→小酒井へ交代し、尚も前へ向く姿勢を高める大分。
熊本はそれを突くように44分に好機を迎え、右から黒木のクロスが跳ね返されるも、拾った保田から大西がボール奪取して再度攻撃。
そして唐山がエリア内へ進入してシュート(安藤がブロック)と好機を作るも、結局これが最後のフィニッシュとなり。
以降運動量の衰えにより、オープンになる守備はおろか、攻撃もロングボール偏重の単調さが目立つばかりとなります。
そして突入したAT、勢いは完全に大分のもの。
勝負を分けたのは自陣からのFKで、GKムンキョンゴンの右への放り込みを安藤が折り返し。
さらに伊佐の浮き球パスが中央のペレイラに渡ると、ペレイラは逆向きでDFを背負ったまま、ゴールを見ずにそのままヒールでシュートを放ち。
これがゴール左へと突き刺さるフィニッシュと化し、誰もが予想外な形でもぎ取った勝ち越し点に歓喜に沸く大分サイド。
ユニフォームを脱いでゴール裏スタンドに向かったペレイラ(当然ながら警告)に他選手が殺到して祝福と、大観衆の終結が実を結ぶ絵図になるレゾナックドーム大分。
その後も形にならない熊本の攻撃を尻目に、クリアと敵陣でのボールキープに勤しみ時間を進め。
そして無事に試合終了の時を迎え、ホームでは実に5節以来の2勝目(鹿児島戦、3-0)となった大分。
それだけ今まで不本意なシーズンだったという証明でもありますが、この大成功の一日が転換期となるかどうか。