<両軍スタメン>
- 北九州ホームだが、↓とは逆のコートで前半スタート。
この日は「ギラヴァンツサマーフェスティバル」という特別なイベントで、5桁の観衆を集める(12,448人)に至ったミクニワールドスタジアム北九州。
この専用スタジアムが完成したのが2017年ですが、その前年にまさかのJ3降格に至ってしまった北九州。
それ以前は、プレーオフ圏に入りながらもJ1ライセンスが無く出場出来ずというシーズン(2014年)もあり、ようやくJ1昇格への道筋を整えた所での降格はダメージが大きく。
以降J2復帰した(2020年)ものの結局定着できず、前年は2度目のJ3最下位に沈んでしまい。
辛うじてJFL降格は免れたものの、汚泥からの脱却を目指す事となった今シーズン。
しかし13節からここまで無敗(7勝4分)という歩みで、それを果たしつつある現状。
そんな上昇機運でこの試合を迎えましたが、相手は強敵の富山で、これに打ち勝つ事で本格的に昇格争いに加わりたい。
イベントの他にも、一戦に賭けるべき思いが強く出たでしょうか。
キックオフから初手、最後方からのロングパスを牛之濱が落とし、左サイドの狭い局面での繋ぎを経て好機に持ち込み。(奥から牛之濱がクロスもクリア)
スローインを経由して最初のコーナーキックを得ると、ゴール前に6人を集めて(富山のマンツーマン守備とも相成って)密集を形成し守り辛い状況を作るなど、何としても先に1点が欲しいという立ち回り。
出鼻を挫かれる格好となった、目下4位の富山。(北九州は7位)
最後方からの組み立てでリズムを作りたい状態となったのは一目瞭然で、前半6分にGK田川が左右にフィードを散らしてのビルドアップ。
しかし同じフォーメーション故にピッタリと嵌められ、2度目の田川の右へのフィードを受けた西矢が牛之濱に奪われた所で、たまらず引っ掛けてしまい反則。
このフリーキックを素早くリスタートする北九州、乾のアーリークロスに永井が中央で跳び込むも、惜しくも合わずに終わり。
ホッとしたのも束の間、続くゴールキックからの空中戦で、富山のクリアボールをダイレクトで藤原がスルーパスを送ってまたも北九州の好機。
左奥へ走り込んだ牛之濱が低いクロス(GK田川キャッチ)と、少ないタッチでアタッキングサードを突いて来るその攻撃はまさに鋭い槍のようでありました。
気を取り直す富山、落ち着いて本来の姿である、最終ラインが距離感を長く保ってのパスワークで相手のプレスをいなす立ち回りに入り。
立ち上がりは嵌っていた北九州の前線の守備も、これにより長い距離を走らされるのみとなって無効化されます。
12分に河井の縦パスを中央で受けた椎名に対し、マーカーの牛之濱が倒してしまい反則。
これにより良い位置での直接FKとなる(キッカー高橋馨が直接シュートも壁に当たり枠外)など、ボール保持の相手に対しどう守るかがキーとなりそうな試合展開に。
しかし16分の北九州、後方からのラフなロングパスは繋がらずも、すかさずゲーゲンプレスを掛けて右サイドで山脇が奪い返すという「ストーミング」に近い好機の作り方。
高の持ち運びが後ろから河井に倒されて反則・警告となった事で、こちらも直接FKを得ます。
右ハーフレーンで距離的にもやや遠目ながら、キッカー藤原は直接シュートを放ち、無回転のボールが枠内を襲ったもののGK田川が正面でしっかり弾いて防ぎ。
これで再び北九州の流れとなり、サイドから攻め上がり何度もクロスに持ち込む北九州。
その内容はサイドバック・サイドハーフの2枚が追い越しを混ぜながらの繋ぎで前進するというシンプルな内容。
右サイドは高・山脇の突破力、左サイドはボランチ・トップ下が加わっての繋ぎという、ギャップを混ぜ合わせての攻撃を繰り広げ。
迎えた24分、中盤の底の藤原は縦パスで右からの前進を選択すると、ここでは突破は図られずに高吉を加えてのパスワークを展開。
スルーパスを受けた山脇が奥へ切り込む見せかけて、戻しを経て藤原のアーリークロスという手法が選ばれると、これが走り込む永井にピタリと合いヘディングシュート。
これまで散々サイド奥を抉ってきただけに、角度を付けられたクロスに富山ディフェンスも対応できずといった感じで、先制点に辿り着きました。
それと同時に飲水タイムが挟まれ。
ブレイク明け、文字通り仕切り直したい富山ですが、ダメージコントロールに時間を要し。
その間にも、28分に北九州は中盤からのFKで放り込みを選択、高のフリックでエリア内で生まれる紛れを経て工藤がボレーシュート(枠外)と脅かされ。
リードした北九州は、4-4-2でリトリートという意識を高める守備対応。
それに対し富山は当然ながら、ボール保持から何とか崩しにいくという立ち回り。
つまりポゼッションvsカウンターに近い試合展開となり。
中央を固める事を優先する北九州で、富山は最終ラインからサイドを揺さぶりながら、巧く高い位置を取ったSBに預ける事で好機を作り。
それ故に、SHも中央寄りに位置してサイドを開ける役割に徹しますが、単調さは拭えず「ボールを持たされる展開」の域を脱せません。
40分、北九州の攻めが途切れた所、ボールキープする安光がゲーゲンプレスを何とかいなした末に吉平がミドルパスを1トップの碓井の上空へ。
クリアされて拾われるも、こちらもゲーゲンプレスで安光がカットに成功して継続、再度出されたパスを受けた碓井から中央からボックスを突く状況に。
パスを選択し、受けた吉平がシュートを放ったものの枠を捉えられずに終わります。
コンパクトな布陣を掻い潜って放ったシュートも、決められずとなれば苦しくなるのは当然であり。
逆に先制点以降、北九州のロングパス攻勢を跳ね返せずに難儀する場面が増加。
アディショナルタイムには左に開いた工藤のロングパスを中央で高が合わせにいき、クリアが小さくなった所をエリア内で岡野に拾われるという危機の招き方。(その後右からクロスもブロックされる)
前半は富山が追い風という環境だったので、これは後半尚も苦戦しかねない予感が膨らむ終盤戦となりました。
結局1-0のまま前半が終了。
立て直したい富山は2枚替え、河井・椎名→布施谷・井上へと2枚替え。(井上がトップ下に入り高橋馨がボランチへ回る)
一方北九州も、永井→井澤へと交代します。
ベテランらしく限られた時間で結果を出した永井の後を継ぐように、高が1トップに・藤原がトップ下に・岡野が右SHへシフトと激しいポジションチェンジが絡み後半に臨みました。
パスの出し手であった藤原(J1・磐田からレンタルで今夏加入)、ポジションチェンジに伴いフィニッシュにも絡む役回りに。
早速の後半2分、左サイド奥を突いた乾のクロスがファーに上がり、藤原が合わせにいきましたがGK田川の跳び出しで惜しくも撃てず。
反撃に出たい富山ですが、投入された井上・布施谷は今一つボールに絡めず、流れを齎せません。
それを突くように北九州は追い風を利用してのロングボール攻勢、7分に右サイドで岡野のボールキープからの戻しを経て杉山がロングパスと、疑似カウンターにも近い手法。
受け手の藤原のダイレクトでの繋ぎを経て高が奥へ持ち運ぶ(クロスはブロックされる)という具合に、富山の速く奪い返したい姿勢とも噛み合い有効となります。
一方攻撃では、自陣で反則を受けるシーンが頻発し、それにより北九州に岡野と藤原が警告と被害が出たものの攻勢を作り上げる事が出来ない富山。
そして11分、やはり危惧されたロングボール対応からでした。
自陣左サイドでのFKから工藤が中央に向けたロングパスを送り、合わせにいった高を越えるもクリアも出来ず、そのままエリア内で藤原に渡る決定機に。
そして冷静にシュートをゴールネットに突き刺した藤原、貴重な追加点を齎します。
上位クラブから2点リードという結果に、アップセットの雰囲気を高めるスタンドの北九州サポーター。
その後も、富山は追い上げたいもののリズムを掴めないという展開を強いられ。
14分には布施谷が鼻血を出して治療を受ける(原因は不明、15分に復帰)など、途切れ途切れの流れに反撃ムードを高められず。
16分に再びベンチが動き、吉平→松岡へと交代します。(布施谷が左SHに回る)
その矢先の18分、またもGK田中のロングフィードが高の頭を越えた所を拾われての北九州の好機。
今度は右ワイドという位置なため岡野はクロスを選択し、跳ね返りを拾った乾がエリア内を突いてシュート(西矢がブロック)と、相変わらずロングボールにより不安定となる最後方。
それでも続く19分、単純な左サイドアタックと見せかけ、布施谷が奥を突く姿勢からポケットへ浮き球を送り変化を付け。
そして受け手の井上もワンタッチで中央へ浮き球で繋ぎ、受けた碓井のポストプレイを経て末木がシュート。(杉山がブロック)
左に回った布施谷の動きは言うに及ばず、右では松岡がカットインからフィニッシュを狙うという流れで、クロス一辺倒への傾倒は何とか避けられた富山。
22分には右から松岡がカットインから中央へパス、受けた高橋馨のミドルシュートがブロックされてCKに。
この左CKからも神山がヘディングシュートを放つも決められず、という所で後半の飲水タイムが挟まれます。
明ける際に北九州は藤原・高→若谷・大森へと2枚替え。
ブレイク明けの最初の富山の好機(26分)も、左から奥を突いた安光の戻しから、布施谷がポケットへパスを送るという同様の手法が選択され。
前半に比べ、北九州の4-4-2ブロックを大分動かせるようになってきましたが、肝心のゴールには辿り着けません。
押され続ける格好となった北九州、33分の富山のCKでの攻撃を切ったのちにカウンターの状況に持ち込み。
しかし若谷のスルーパスを受けた大森も、そこから受け直し前進した若谷も、守勢の後故に落ち着きたいという気持ちが前に出て遅攻に切り替わり。(その後山脇のクロスの跳ね返りを若谷がミドルシュート、ブロックされる)
複数点リードかつ、相手の猛攻を受ける状況なので、前線の選手はこうして溜めを作る事が第一の役割となり。
富山がスコアを動かせるかどうかという試合展開。
35分にCKを得たというタイミングで、鍋田・末木→今瀬・古川へと交代して5枚すべて使いきり。(井上がボランチに回る)
この左CKから、クロスの跳ね返りを布施谷がミドルシュート、ブロックされたボールをさらに西矢がミドルシュート(枠外)とフィニッシュの雨を浴びせに掛かるも実りません。
そして北九州ベンチも38分に動き、岡野→長谷川へと交代。
長谷川が最終ライン(中央CB)に入った事で5バックシステム(3-4-2-1)へと変更し、逃げ切り体制へ突入します。
これによりアタッキングサードへの侵入は容易となるも、どう崩すかという課題が重くのしかかる富山。
41分、クリアボールを松岡が落とし、拾った碓井が左サイドで溜めを作ったのちに布施谷が裏へとロングパス。
これは通らずも、拾った北九州のロングパスを安光がブロックして継続し、古川の落としで左ポケットを突く状況が生まれます。
そして拾った安光がカットインで仕掛け、中央に移った古川にシュートチャンスが訪れるも、素早い寄せを受けて撃てずに終わり。
毛色の違う好機も仕留めきれず、いよいよ苦しくなってきた富山。
その後の高橋馨のミドルシュート(42分、枠外)、布施谷のカットインから左ポケットでのシュート(44分、長谷川がブロック)も決められず。
とうとうATへと突入します。(北九州は44分に牛之濱→平原へと交代)
全員敵陣に入り込み、何とか崩さんとする富山ですが実る事は無く。
逆に北九州は、そこから脱出させるミドルパスを受けにいった大森が反則を受けた事で一息つき。
これによる左サイドでのFKから、当然クロスを選択する事は無く、ひたすら奥を窺いながら細かいパスワーク。
そしてコーナー付近に持ち込んで乾・大森がボールキープと、時間稼ぎとしてはほぼ満点な立ち回りを見せます。
結局ATではフィニッシュに辿り着けなかった富山。
2-0のまま試合終了の時を迎え、これで12戦無敗となった北九州。
5年前の「前年最下位からの昇格」のドラマを、再び描く事となるかどうか。