※前回の山口の記事はこちら(順延25節・金沢戦、4-1)
※前回の水戸の記事はこちら(29節・秋田戦、0-3)
とうとう完全に残留争いに巻き込まれ、抜け出すべくの戦いを強いられる事となった山口。
個人的には、前回観た際の勝利で沼から抜け出すと思っていましたがそんな事は無く。
そんな最中に発生してしまった、監督の渡邊晋氏の辞任劇。
その際のコメントを額面通り受け入れる事が出来ないのは、仙台時代の忍耐強く、かつ組織的なチームを作り上げた監督業があったからでしょうか。
この状況で自発的に指揮を投げ出すとはどうしても思えず、フロントとの軋轢という穿った要素を想像してしまいます。(詳細は闇の中でしょうが)
スクランブルな事態に則し、火中の栗を拾うように監督の座に就いたのはヘッドコーチであった名塚善寛氏。
現役時代は平塚(現湘南)のセンターバックとして有名で、クラブが経営危機に陥った際、コストカットで泣く泣く移籍せざるを得なくなったという中心人物。
移籍先の札幌で現役を全うしたのち、札幌一筋で16年もの長い指導者生活を送り。
湘南・札幌という繋がりからか、中山元気氏が指導者として所属する山口へと転身し、ここまでに至ります。
あくまで個人の印象ですが、所属クラブへの忠誠心・義理堅さが伺える経歴であり、この苦境を打開するには相応しい人選なのかもしれません。
前節は上位・新潟相手に、敗れはした(0-1)ものの良い内容の試合を演じたという事で、結果に繋げたい山口。
もう既にリーグも終盤で、新監督の理想を落とし込むには決定的に時間が足りない状況。
そのため外野の自分としては、「前監督のサッカーを踏襲しつつ、前からのプレスを強めた総員突撃体制で上位に引けを取らない内容を演じる」という(勝手な)想像の下の視聴でした。(実際前節は新潟のビルドアップに対するプレッシングが冴え渡ったとの事)
しかしこの日の相手である水戸は、中位的な位置ながらサッカー的にはそんな山口と大差無いチーム。
前からの守備を重視し、実際にボランチやサイドバックが前に出てのパスカットないしはパスを受ける瞬間の選手に対するデュエルでの奪取が目立ったこの日の前半。
同じ属性のチームと相対した事で、腰が引けるような内容となってしまった前半の山口でした。
前半4分、ロングパスを受けにいった中山仁斗が山口・桑原に倒されての、右サイドからのフリーキックを得た水戸。
キッカー・伊藤がファーサイドへクロスを上げ、中山仁がヘディングシュートを放ちましたが、クロスバーを直撃して跳ね返り。
それを詰め、奥田がシュートを放つも枠を逸れてしまい、最初の決定機はモノに出来ず。
その後も水戸のディフェンスの前に中々ボールを運べない山口、11分に長いポゼッションで敵陣でサッカーを展開するも、楠本のパスがズレてしまいそこから水戸のカウンター。
これを松崎が右ハーフレーンからスルーパスを送るも、楠本のアフターチャージを受けた事で反則、再びの水戸のFKとなり。
先程と同じく右からのFKとなり、キッカー伊藤はエリア内中央へクロスを入れると、合わせたのはタビナス・ジェファーソン。
またもクロスバーを叩くも、内側に当たった事でそのままゴール内へと吸い込まれて得点となり。
攻勢をしっかり先制点に結び付けた水戸。
スコアが動いた事でどう変わるか、と思われた刹那の14分。
山口の攻撃、佐藤謙介の縦パスから島屋→池上へと繋がり、池上がドリブルする所を水戸・タビナスに倒されて反則。
左ハーフレーンからの直接FKとなり、シュートかクロスかという迷いを(攻守ともに)生みやすい位置から、キッカー池上は直接シュートを選択。
速い弾道で壁を越えてゴール左へと突き刺さり、最初のチャンスで同点に追い付いた山口。
ともにFKをフルに生かした得点を挙げた序盤でしたが、その後は従来の通り水戸が押し込む展開に。
17分に新里のミドルシュート(GK関キャッチ)、20分に伊藤のエリア内左からのシュート(GK関キャッチ)を炸裂させるも、同点のまま飲水タイムに入ります。
28分に水戸が敵陣での新里がパスカットしたボールを、ダイレクトで伊藤がエリア内へスルーパス。
奥田が走り込む絶好機となるも、前に出たGK関に防がれてシュート出来ず。
危ないシーンは相変わらず健在でしたが、徐々に水戸の前掛かりな守備に慣れてきた山口は、右CB(眞鍋)を前に出してのビルドアップを見せるシーンを作り始め。
前監督のサッカーを踏襲する姿勢も見られ、山口の攻撃機会も多くなりつつあったこの時間帯。
しかし38分に水戸が再度カウンターを展開し、伊藤がドリブルを経て右へ展開し、今掛のクロスがファーサイドに上がると大崎がヘディングシュート。
SBからSBというフィニッシュへの道筋が築かれたものの、GK関がセーブして何とか防いだ山口。
その後の水戸の攻勢を凌ぎ、42分に山口も流れの中から好機。
中央CBの渡部から右へ展開すると、手前からのクロスを選択し、田中渉のクロスにファーサイドで跳び込んだのは左ウイングバックの桑原。
ゴールネットを揺らす事に成功するも、オフサイドとなってしまいノーゴール。
水戸が押し気味でかつシュート数も上回っていましたが、スコアとフィニッシュシーンの影響故五分に近い印象を受けつつ、前半を終えます。
後半開始し、水戸の最初の攻撃。
ここも新里のカットから、中山仁がスルーパスをエリア内へ通すという素早い攻めで、伊藤が受けるも山口・楠本のスライディングに阻まれフィニッシュには結び付かず。
しかしこの際に、伊藤の脚が楠本の後頭部に当たってしまうアクシデントが発生。
脳震盪の疑いが持たれ、治療が行われましたが、何とか起き上がった楠本はプレーを続行します。
後半は山口の攻撃機会が多くなった立ち上がり。
水戸のプレスをロングパスでいなし、そのセカンドボールを拾って好機に結び付けるという、前半とは打って変わった攻撃。
しかし8分の水戸の攻撃、中山仁のポストプレイを交えて中央から伊藤がラストパス、エリア内右から奥田がシュート。(枠外)
水戸ペースを剥がすには何か大きな切欠が欲しい。
そんな状況で、直後のゴールキックでショートパスを繋ぐ選択を採った山口。
この攻撃を桑原のエリア内左でのクロスに繋げ、ブロックされて左コーナーキックに。
キッカー池上のクロスをニアで川井がフリックにいき、こぼれた所を桑原がシュート(枠外)と、主体的な攻撃でフィニッシュまで繋げます。
しかしこのCKの際に、楠本が再度脳の異常を疑われるシーンが見られると、12分には水戸・中山仁の反則を受けた際にとうとう続行不能になってしまいます。
頭部固定用の担架が持ち出されるも、何とか自力でピッチ外へ退き、ヘニキと交代となった楠本。(脳震盪のためカードは消費せず)
これが今季3試合目の出場と、すっかり忘れられていた感のあるヘニキでしたが、以降存在感を発揮します。
15分に、交代により左CBへとポジションを移した眞鍋が、前半の水戸のような前へ出てのパスカットで水戸・奥田の反則を誘い。
敵陣左サイドでのFKを得た山口、キッカー田中渉のクロスがファーサイドに上がると、大外から合わせたヘニキの強烈なヘディングシュートが炸裂。
ゴール左へと突き刺さり、再びのセットプレーによるゴールで逆転に成功した山口。
投入されて間も無い時間で得点を挙げたヘニキでしたが、直後に空中戦の際、自身がクリアしたボールを再度合わせに前に出たヘニキ。
勢い余って水戸・中里に思いきり体をぶつけてしまい、反則・警告となってしまう有様。
出場して5分と経たない間に、正と負両面で記録を残してしまう事となりました。
一方前半の攻勢が嘘のように、ビハインドを強いられた水戸。
21分に交代カードを切り、奥田・松崎→藤尾・山根と2枚替えを敢行します。
それでも一度失った流れを取り戻すのは容易では無く、失点以降はシュートまで辿り着けぬまま、後半の飲水タイムへ。(24分)
明ける際に再度2枚替えを敢行(中山仁・今掛→安藤・村田)と、苦境を跳ね返すのに必死な水戸ベンチ。
直後の26分、クリアボールを中央で拾った伊藤がエリア内右へミドルパスを出し、走り込んだ山根が足で折り返し。
中央に藤尾が走り込むもクリアされ、惜しい所でシュートに繋げられず。
交代選手の働きもあり攻め上がる水戸。
それを受け、山口も29分に大槻→草野へと交代。
しかし正直大槻は後半消えていた時間が長く、遅かったという印象で、水戸の攻勢を堰き止めるには至りません。
そして迎えた31分、最後方からのパスワークでサイドを振っての攻撃を展開する水戸。
右サイドで受けた村田から斜めの縦パスが入り、受けた安藤からエリア内へスルーパスが送られると、抜け出した藤尾がシュート。
オフサイドの疑いが持たれる中、放たれたゴール左へのシュートがポストの内側を叩いてネットに突き刺さり。
絶妙に飛び出した(とはいってもVTRでは余裕でノーオフサイドだった)藤尾が同点弾を叩き出し、再逆転へモチベーションを高める水戸。
直後の32分、縦パスを受けにいった山根が山口・渡部のオブストラクションで反則・直接FKに。
これ(中央やや右という位置)をキッカー伊藤が直接狙うも、ゴール右へと外れてしまいました。
再び得点が欲しい状況となった山口、35分に島屋・田中渉→高井・佐藤健太郎へと交代。
これで「佐藤ケンのドイスボランチ」という図式が出来上がるも、現在の山口にはそれを笑える余裕などありません。
終盤に突入し、草野が敵陣エリア近くで反則を受けるも、FKを素早くリスタートし右サイドから攻め。
しかし高井のクロスは精度を欠く(グラウンダーのボールをGK牡川が直接抑える)など、折角の好機にも焦りが伺えるシーンが。
何とか勝ち越しを狙わんとする山口を尻目に、43分に最後の交代カードを使った水戸。(伊藤→渡邉柊斗、山根が右サイドハーフ→左SHへシフト)
44分にその渡邉柊の右→左へのサイドチェンジから、左サイドに切り込んだ山根の戻しを新里がダイレクトでループシュート。
ゴール上へ外れ、ネット上部に突き刺さるという(見た目的に)際どいシーンを作ります。
アディショナルタイムにも、渡邉柊のロングパスのこぼれ球を藤尾が拾い、左への展開から山根がドリブルでエリア内を急襲。
しかし山口・ヘニキのディフェンスに阻まれ撃てず。
水戸の攻撃力に脅かされながらも、ATにようやく自身のターンを得る山口。
その最中に2枚替えを敢行(川井・桑原→澤井・浮田)と、カードを切るのが遅いという印象が拭えない(桑原の動きが良かったため迷った末だったでしょうが)ながらも攻め上がり。
しかし代わって入った浮田・澤井のクロスが精度を欠いてしまい、有効打を放てないまま試合終了の笛が鳴り、2-2で引き分けという結果に終わりました。
クラブ最大の危機と言ってもいいような今季の山口ですが、J2に上がるまでが順調すぎたためか、苦境を跳ね返す術を知らずといった印象。(2017年はヤバめでしたが)
主力選手が引き抜かれるという事象は慣れている節があるでしょうが、監督に去られるという事は完全に想定外だったと想像します。
仮に今季降格が決まってしまうようだと、立ち直れずにズルズルと過ごしてしまう予感がしますが、果たして免れる事は可能でしょうか。
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