※前回の熊本の記事はこちら(33節・群馬戦、3-2)
※前回の山口の記事はこちら(32節・千葉戦、1-4)
<熊本スタメン> ※()内は前節のスタメン
- 32節(甲府戦、4-2)で負傷交代し、以降離脱していた唐山が復帰しスタメン出場。
- 神代の負傷が発表され、9/16に発生して全治約5か月との事。
- 前節(徳島戦、1-2)負傷した藤井の詳細が発表され、全治約6週間との事。
<山口スタメン>
- 相田が累積警告により出場停止。
- 32節の試合前に負傷し、以降離脱していたGK関が復帰しスタメン出場。
- その関が今季限りでの引退を発表。
- 32節で負傷交代した河野の詳細が発表され、全治約8ヶ月との事。
- 酒井の負傷が発表され、発生日不明で全治約3週間との事。
前節で連勝が途切れたチームと、連敗が未だ続いているチームとの対戦。
勢いは前者の熊本に分がありそうですが、順位は後者の山口の方が上(10位)というねじれ現象。
それをさらにややこしくしたのが自然環境で、(メインスタンドから見て)左から右への強風が吹き荒れる一戦となり。
何処からどう見ても難儀という試合が幕を開けました。
コイントスでコートチェンジが行われ、前半は向かい風となった熊本。
しかし放送席(解説=松岡康暢氏)によると、熊本サイドがそれを選んだとの事であり。
あえて向かい風の方を選ぶのは後半勝負の思惑の表れ、というのが一般的ですが、熊本の強風での試合といえばこの試合(14節・アウェイ水戸戦、0-2)の事を思い出し。
この日も後半追い風だったものの、その試合運びがあまりにも拙く、攻め手を掴めないまま失点を重ねての敗戦。
この内容が熊本サイドの脳内に印象付いていた、という邪推を生んだこのコートチェンジ。
かくして向かい風となった前半、その3分に自陣でのこぼれ球に対し、GK田代は地を這うフィードを選択する事で風を無効化させて前へ送り。
石川→唐山と経由し、唐山のドリブルで左サイド奥を突き、逆風にも負けない攻撃で得たコーナーキック。
しかしここでも容赦の無い逆風、それを嫌がるかのようにショートコーナーを選ぶも、山口の出足の良いプレスを受けGKまでの戻しを強いられて終わります。
この弱気な姿勢が山口ペースを生む事となり、以降空中戦を中心にゲームを支配しに掛かる山口。
5分に浮き球での攻防から、吉岡足下でフリック→若月右奥へ運んだ所で(江﨑に)反則を受け、右ワイド深めからのフリーキックに。
これをキッカー新保は、追い風をフルに活用するように直接ゴールへ向かうボールを蹴り込み、ヘナンも跳び込む前でGK田代がパンチングと何とか防ぐ熊本。
直後に得た右スローインでは、相田が不在ななか佐藤謙がその代役を務める体制となり。
ヘナンや下堂もボックス内に入った事で、ロングスロー……と見せかけて近場に送り、受け直しからクロスを入れるも風の影響で精度を欠き。
佐藤謙がロングスローを投げられるのか?という疑問と、普段の残像を活かしての立ち回りを見せ。
ペースを掴んだ山口は、地上でゲームを作りたい熊本の思惑を封じ込めに掛かり。
つまりはハイプレスで、風に影響されにくい地上でのショートパス攻勢に活路を見出さんとする熊本への対抗策としては当然のものであり。
これが良く嵌り、熊本は3バックが右肩上がりとなり、前に出る大西を利用して運ばんとするもこれが悉く裏目に。
上村周にもキッチリマークが付く事でアンカーも経由できずに、次々とパスを遮断され窮地に陥ります。
9分には田邉がパスカットすると、その勢いのまま遠目から放ったシュートがブロックを掠めてゴールバーを直撃と、冷や汗を掻かせ。
この流れを打開できない熊本。
迎えた14分、ここも右サイドで詰まらされた末の縦パスを末永にカットされ、山口のショートカウンター。
そのままエリア内へパスを送り、受けた若月がカットインの姿勢からシュートを放つと、岩下のブロックを掠めてゴールに突き刺さります。
得意手のハイプレスが最大限に活かされ、先制点に辿り着きました。
スコアが動いた後も、強風が目立つ試合絵図。
16分に再び山口が右スローイン、佐藤謙は先程と同様の手口で短く入れ、その後の繋ぎを経て新保がこれまた先程と同様に風を利用したクロス気味のシュート。(枠外)
この後熊本が反撃し左CKに持ち込むと、向かい風なのもありアウトスイングを選択。
そのキッカーは豊田で、ニアに低いボールを入れ、収めた江﨑が中央へ横パスと変化を付けましたが実らず。
ここも、この環境下ではとてもファーへと届ける事は不可能という思惑での、弱気にも見える選択だったでしょうか。
しかし20分、GK田代のフィードが伸びずにバウンドするも、石川の落としから繋いで左奥へ運んで好機。
そして逆サイドに張り出してボールを持った大本がカットインしてエリア手前中央まで流れ、右へ展開ののち(豊田の)クロスが上がり。
クリアが小さくなった所を唐山がボレーシュートを撃ちにいき、これがミートせず前方へこぼれますが、丁度そこに居た石川がさらにダイレクトでシュート。
まさかのミスからのジャストヒットに、山口ディフェンスも虚を突かれた格好となってゴールへと突き刺さります。
ビハインドを引き摺る事無く、同点に追い付いた熊本。
かくして1-1となったものの、依然として展開は山口の方が有利。
熊本が攻め手の無い状態を強いられるのを尻目に、風を利用しながら幾度も好機に辿り着き。
29分に熊本最終ラインのロングパスをブロックした末永、これがエリア方向へ転がった所に、すかさず走り込んだ若月がシュート。
しかしGK田代がこれを何とかセーブし、持ち込まれたCK攻勢の2本目で、ショートコーナーからの繋ぎを経て左から新保のクロスがニアに低く入り。
これを下堂が身を倒しながらヘディングで合わせるも、枠を捉えられず決められません。
熊本は相変わらず右サイドで詰まるのを受け、24分に一度左サイドでのショートパス攻勢で山口のプレスを打開し。(奥へのスルーパスに唐山が走り込んでCKに持ち込み)
それでも根本的な解決とならず、以降修正を施します。
大本が下がり目でボールを受け、出口にならんする動きを取り始め。
それに伴い豊田がボランチ寄りになる、可変……というよりは、守備時は大本が最終ラインに降りて守る絵図となり。
即ち大本がウイングバックで、豊田・上村周のドイスボランチと化したようでした。
つまりは今季前半に取り入れていた、3-4-1-2のシステムへと先祖返りするかのような布陣に。(トップ下は石川とはならず小長谷のまま)
これにより右で大本のキープを利用しながら、山口サイドを寄せたのち中央→左へと展開してから前進という道筋が出来上がり。
しかし肝心のフィニッシュには繋げられずに時間が進み。
そして終盤、再び山口が押し込みから右スローインを獲得という運びになり、今度こそ佐藤謙はロングスローを放り込み。
ここからアディショナルタイムにかけ、スローインの連続で揺さぶり続ける山口。
最後は新保のミドルシュートが唐山にブロックされ、こちらも結局モノに出来ず終わります。
1-1のまま後半開始……の前に山口は選手交代。
前→板倉へ交代と、後半向かい風になるのを受けて後方の高さを補填しに掛かったでしょうか。
一転追い風となった熊本ですが、水戸戦を彷彿とさせるように、この日も後方からのロングパスが伸びすぎて繋がらない絵図が目立ち。
相手がそんな慣れなさを見せているうちに、立ち上がりから攻め上がる山口。
しかし獲得した右CK(後半5分)では、キッカー新保はニアに低いクロスを選択と、やはり前半とは違う環境での攻めを強いられます。
それでも直後の右スローインからの繋ぎで、クロスが跳ね返されたのちも尚も左サイドで細かいパスワークに入り。
この局面での、バックパスを交えて熊本ディフェンスを引き付けながらの崩しは山口の十八番といった所で、ここも例に漏れず田邉バックパス→板倉1タッチパス→田邉受け直して持ち運びからパス→吉岡スルーでディフェンスを外し。
受けた若月がカットインした所に、上がっていた田邉がスイッチ気味にダイレクトで強烈なシュートを放ちましたが、GK田代のセーブに阻まれ勝ち越しならず。
風向きが変わっても(風自体が変わった訳では無いが)、劣勢ぶりは変わらないといった熊本。
しかし9分、山口はGK関のフィードが風で戻され、慌ててヘナンがヘッドで送った所をカットして攻撃開始に。
ここはフィニッシュには繋げられずも、これで風を味方に付ける機運が高まったでしょうか。
10分、中盤での空中戦を制したのち三島の縦パスを受けた石川、そのまま遠目からロングシュートを狙い。
これが風にも乗り、ゴール右を襲うボールとなりましたがGK関が辛うじてセーブ。
続く右CKでは、前半のアウトスイング一辺倒から一転して豊田がインスイングでゴールへ向かうクロスを入れる(ゴール上部に突き刺さる枠外)という具合に、徹底して風を使いに掛かります。
山口は板倉投入により、新保を前に上げた3センターバックの色が高まり。
ヘナンが左ワイドに開いて持ち上がるといった積極性を見せ、それにより新保を中心とした攻めの威力も強まります。
人数を掛けて繋ぐなか、やはりバックパス→スルーパスで熊本ディフェンスを釣り出してスペースを作る組み立ては秀逸であり。
熊本は布陣変更の影響もあり、守備時に右サイドを押し込まれる所為ですっかり大本が突破力を生かす余地が無くなり。
そのためか18分にベンチも動き、その大本に代えて東山を投入します。(同時に唐山→松岡へと交代)
その直後山口に決定機(19分)、ヘナンの左ワイドの突破から、中央→右へと展開されたのち野寄のアーリークロス。
これに裏抜けのように跳び込んだ末永がヘディングシュートを放ち、ゴールネットを揺らしたものの、オフサイド判定に引っ掛かり惜しくも勝ち越しは幻に終わります。
その後も山口の前線の動きは勢いを増し、21分には若月が出足良くロングパスをブロック、そしてこぼれ球を拾いにいく(江﨑がカバーして防ぐ)という圧力を見せ。
しかし熊本も追い風でフィードを利用できる環境にあり、24分岩下がプレッシャーを受けるや、戻しからGK田代がロングフィードを一気に左サイド奥へと届け脱出。
ここから細かい繋ぎを経て左ポケット奥を突きCKに持ち込むと、今度は小長谷がゴールへ向かうクロスであわよくば……という場面を作り。
良い攻めは見せる熊本ですが、こうしたシュート以外での好機に終始した結果、公式記録上シュート数は前後半通じて2本という少なさだったこの試合。
25分に山口ベンチも動き、野寄・若月→奥山・小林へと2枚替え。
投入された2人での2トップとなり、末永が右サイドハーフに回ります。
その後も山口は押し込みますが、27分にはそのポジションを移した末永が右奥へ持ち込んでクロス。
これがブロックに阻まれたのち跳ね返されると、その上村周のクリアボールは狙っていたかのように一気に最終ライン裏に渡り、走り込んだ石川に繋がるカウンターと化してしまいます。
そのままドリブルでエリア内でGKと一対一に持ち込んだ石川、前に出て来たGK関を左にかわし、後は中央から撃つだけという局面に。
しかしコントロールに難儀した所に、下堂のタックルを浴びてしまい結局撃てず、決定機を逃してしまいました。
32分に熊本は小長谷→大崎へと交代。(石川がトップ下に回る?)
明確なターゲットを入れた事で、この後彼にロングボールを届ける意識が高まり。
それでも、本来の姿では無いその熊本は、さして主導権を握る事が出来ません。
35分に山口は、再び右スローインで佐藤謙が短く入れるフェイクから、その佐藤謙のクロスを末永が合わせヘディングシュート。(ゴール左へと外れる)
この後、山口の攻め疲れもあり中々局面が動き辛い展開に。
38分に熊本が最後方で作り直しという絵図になると、前に出てパスを受けた江﨑がロングパス。
これが田邉のブロックを掠めると、あろう事か新保の鳩尾に入ってしまうボールとなり、痛んで倒れ込む新保によりブレイクとなる試合。
こうしたハプニングが目立った事も、その試合の動かなさを証明するに至ってしまったでしょうか。(新保は無事にプレー続行)
終盤を迎えた事で、大崎狙いを中心として、ロングボール攻勢へと本格的に舵を切る熊本。
体力が落ちてきた山口は、それを跳ね返し自身のターンにする余裕は既に無く。
42分に佐藤謙→ユーイェンに、ATに末永→平瀬へ交代するも、流れを変えるには至りません。
尚、平瀬はお馴染みの最前線では無く、そのまま末永の居た右SHに入る形に。
結局試合はそのまま動かず。
熊本はやはりロングボール攻勢に慣れておらず、度々放り込むもフィニッシュに繋げられずに時間を潰してしまい。
そのまま1-1で引き分けとなり、改めて難しい試合だったという事を実感した一日となりました。
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