※前回の山形の記事はこちら(12節・甲府戦、2-2)
※前回の愛媛の記事はこちら(12節・磐田戦、0-0)
ともにシーズン中に監督交代を行ったクラブ同士の対戦。
愛媛が(實好礼忠氏を)コーチからそのまま監督に昇格させたのに対し、外部から新たな人材を招聘し、この試合から指揮を執る事となった山形では差異があるのですが。
その人物とはピーター・クラモフスキー氏で、前年清水の監督を務めた事で有名。
前年シーズン途中に解任されたものの、このご時世なためか帰国はせず、Jリーグで働き場を得る事を選んだようです。前年オフは徳島の新監督候補の一人に挙げらたりしていましたが
そのため「クラブ初の外国人監督」とはいっても親密感があり。
清水時代の基本であった4-3-3のフォーメーションは使わず、前の試合までの4-4-2(厳密には4-4-1-1との事)を弄る事はしなかったクラモフスキー氏。
サイドハーフの左右を入れ替えた(この日は右に國分・左に中原)以外は手を加えず、前節(京都戦・0-1)と同じスタメンで挑みました。
試合が始まり、先制シュートは山形で前半2分。
こぼれ球を左サイドで拾った中原が裏へロングパスを送り、跳ね返りを拾った山田康太が中央へのドリブルで前進し、そのままミドルシュート。(GK秋元キャッチ)
縦ポンから好機を作るという、これまでとは違う姿を見せた山形。
それでも山田康が軸というのは変えていないようで、8分には最終ラインでのパス回しから左サイドで山田康が受け、中央に戻すとともに山田康も中央に向かって前進。
そして藤田の縦パスを受けると、右に流れたのちエリア内へラストパスを送り、受けた林のシュートがゴールネットを揺らし。
先制ゴールと思われましたが、オフサイドで無効となります。
他に目立っていたのが、右サイドバックの半田がしばしば高い位置を取っていた事。
最終ラインでのボール保持の際は既に画面から消えており、センターバックから右に展開すると、受けるのはSHの國分というねじれ現象が良く見られ。
その前線では中央寄りでボールを受けたりと、「偽SB」的な動きも点在していた半田、これが新指揮官の理想の一つなのでしょうか。
そんな新旧の挟間が垣間見られたこの日の山形、それが影響したのかミスから危機を作る場面が散見されます。
10分にはパスミスを愛媛・藤本に奪われ左サイド奥までドリブルを許しコーナーキックを与える事に。
その後16分には愛媛が右サイドでのスローインから、西岡の手前からのクロスが上がると、誰もクリアに行かずエリア内でバウンドしてファーサイドの唐山が折り返しを許す事に。(その後クリア)
何処と無く課題が見られつつ時間は進み、前半の飲水タイムへ。(24分)
明けた直後から愛媛が攻撃権を掴み、山形はスルーパスをGK藤嶋が飛び出しヘッドでクリアするなど、シュートは浴びないものの一歩間違えば……という場面は続き。
そして28分には、中央で内田ライナーで縦パス→藤本ポストプレイ→川村シュートという流れるような攻撃を浴びますが、ここはGK藤嶋がセーブ。
ミスから流れを失う、というようなこの日の山形の歩みでしたが、この時間帯でワンチャンスをモノにします。
29分クリアボールを拾った林が右へ展開し、半田が囲まれつつもキープしたのち縦パスを送ると、國分がフリックした先に林が走り込み。
半田にプレスを掛けていたうえ國分にも1人付いていた愛媛ディフェンス、林をケアする余裕は既に無く、フリーで受けて悠々エリア内へとドリブルしシュートを放った林。
GK秋元のニアサイドを破ってゴールネットを揺らし、押され気味の中で放った一矢が見事に報われた格好となりました。
反撃したい愛媛ですが、33分に敵陣でのカットから森谷がミドルシュートを放った(GK藤嶋キャッチ)ぐらいで糸口を掴めず。
山形のミスに近い格好から得ていたペースなので、リードした山形が落ち着きを取り戻せば、こうなるのはある意味納得でもあり。
そんな愛媛を尻目に、山形は37分左サイドからのスローインで攻撃、敵陣深めでパスを繋いだのち中原がグラウンダーでクロス。
そしてニアサイドで林が合わせシュートしたものの、惜しくもゴール右へと外れ。
前半も終了間際になり、やっと愛媛が反撃体勢。
サイド突破からスローインで押し込み、CKを得てセットプレー攻勢に入る事に成功します。
そしてアディショナルタイムの右CK、キッカー内田のクロスをGK藤嶋がパンチングにいったもののこぼれ、ファーサイドで小暮がボレーシュート。
叩き付けてバウンドしたボールがゴールに向かうも、その前で山形・山﨑がヘッドで跳ね返し、惜しくもゴールはなりません。
結局山形の1点リードで前半を折り返す事となります。
後半が始まると、流れは一変して山形の攻勢に。
主に縦パスやスルーパスを軸にした攻撃を展開し、そのうえ敵陣でのボール奪取も目立つようになり、愛媛は全く攻撃権を得られなくなります。
そして決定機は後半6分の左CKからで、ショートコーナーから國分がクロスを入れ、中央で山田拓がヘディングシュート。
ネットに突き刺したものの、手前からのクロスになった事が災いしてこれもオフサイドで無効となり、チームを楽にする追加点は奪えず。
追い付きたい愛媛ですが、10分にCKを得たのみでその切欠すら掴めない状況を強いられます。
12分に2枚替えを敢行(唐山・小暮→近藤・忽那)するも流れを変えられず。
直後には山田康のスルーパスが中原へと通ったのち、エリア内から何度もクロスを入れられる攻撃を浴びる(山田康が跳び込むも合わずという際どいシーンも)など、失点を防ぐのみで精一杯。
そんな展開を一変させたのは再び山形のミスで、17分に最終ラインでのパス回しを近藤がこぼさせ、エリア内で拾った忽那がシュート。
ブロックされたこぼれ球に茂木が走り込んでシュート(ブロックされCKに)と連撃を浴びせます。
続く右CK、キッカー内田のクロスがクリアされるも、拾った森谷がロビングを入れると茂木がGK藤嶋の眼前へ。
フリックの体勢で方向を変えるか否かの選択を強いられた藤嶋でしたが、スルーされたボールを何とか弾いて防ぎました。
以降は完全な愛媛ペースへと移り変わる試合。
山形は21分に山田康がエリア内中央からシュート(枠外)する好機を作ったものの、攻撃機会はその一度きり(自分の集計です)という状況が37分まで続く事となり。
ひたすら耐える時間帯となったものの、ベンチも32分(林→木戸)まで動かずと、「無策の策」を敷いて我慢していたのでしょうか。
攻撃権を支配する愛媛。
その攻撃を山形が防いでも、クリアボールを拾って攻撃継続という転回も少なくなく。
攻撃の流れとしては、3トップという布陣故の、ウイングの存在を活かしてのクロス攻勢。
主に右サイドで組み立て、中央からという意識を振りつつ、右SBの茂木が上がってのクロスがメインとなりました。
中央での攻撃が巧く繋がっていたのもそれをスムーズにさせ、23分には右サイドからの茂木のパスを近藤がポストプレイ、中央で受けた森谷がエリア内右へラストパス。(受けた藤本は撃てず)
32分は左サイドのスローインから左→中央→右と渡り、前田から再び中央へと戻されたのち、川村が近藤とのワンツーでエリア内を急襲。
ディフェンスに遭いこぼれた所を近藤がシュート(ゴール上へ外れる)と有効打を放ちました。
メインであろう右からのクロスでは28分、森谷のパスを受けた茂木が溜め、小暮の追い越しを見せたのちクロスを上げ。
そして走り込んだ藤本がファーサイドで合わせヘディングシュートと会心の攻撃となりましたが、ボールはゴール左へと外れモノに出来ず。
長らく攻め続けた愛媛ですが、結局はゴールを奪う事は出来ず終わり。(32分に内田→池田に交代、前野がセンターバック→左SBへシフト)
何とか凌いだ山形は、37分に2枚替えを敢行(南・國分→岡崎・松本幹太)し守備を固めます。
その目論見通りに以降愛媛はペースを失う事となり、試合終盤には逆に攻撃権を独占した山形。
シュートこそ40分の右CKで、キッカー中原のクロスをファーサイドで野口がボレーシュート(ブロック)した場面のみでしたが、リードを守り切るにはこれで十分だったでしょう。
44分に愛媛が最後の交代カードを使った(藤本・森谷→西田・岩井)後もその流れは不変で、セットプレーも得つつ時間を使っていく山形。
まさに攻撃したいという思いを根元から折るような振る舞いで、ATに入ってもそれは変わらず。
最後は池田を前線に上げるパワープレイ体勢を試みた愛媛ですが、最後まで好機を作る事は出来ず。
試合終了の笛が鳴り、山形がウノゼロで勝利と、幸先良いスタートを切ったクラモフスキー監督。
最悪の状況からは脱したと思われますが、果たして今後はどうなっていくか。
清水での監督経験を経たクラモフスキー氏が、以降自身の理想とどう折り合いを付けていくかも見物ですが、ここから遅れを取り戻し上位を目指せるでしょうか。