「 イノセント・デイズ 」 早見 和真

　　　　　「　イノセント・デイズ　」　　　早見　和真

　　　　　　　　　

田中幸乃、３０歳。元恋人の家族に付きまとい、家に放火して妻と１歳の双子を死に追いやり死刑を宣告されている。
彼女の生い立ち、学生時代、その後、かかわった人たち、産科医、母、義理の父と姉、中学時代の友人、元恋人とその友人、刑務官らの追想から浮かび上がる真実。
日本推理作家協会賞を受賞した長編ミステリー。

初めての作家さんの作品です。
～～～～～～ネタバレ。
別れた男の妻と幼い子供を焼き殺した田中幸乃の男への執念が怖くて、重苦しい気持ちで読みだしました。
しかし、幸乃の幼少時代や、学生時代を読み進めるうちに、世間で言われている虚像と実像が明らかになっていきます。
妻子を殺された井上敬介は、幸乃に対しても友人の八田に対してもひどい男だとわかってきます。
事件その後の彼の心情が描かれていないので、幸乃や妻子に対しての今の彼の気持ちはわかりません。

幸乃は確かに悲惨な生い立ちで、祖母をはじめ友人の理子、義父、恋人もクズばかりで同情はしますが、自分で死ねないからと言って死刑にならなくても、、。
友人理子の犯した罪をかぶって児童自立支援施設に入るなんて。私なら絶対に嫌！　そんなのは友情でも何でもない。
結局、理子も理不尽ないじめに遭っていたからだけれど、口をつぐんでそのまま大学まで行き教師になって、最後まで幸乃に関わろうとしない。

丘の探検隊で仲良しだった翔が弁護士になって、幼馴染の佐々木慎一、幸乃と敬介の事情を知っている友人の八田たちが再審請求に奔走するが、
真実、真犯人がわかった時、すでに刑は執行されて、、。

その終わり方に唖然としました。これで本当に良かったのか。
孤独と絶望で死を選んだ彼女でしたが、最後に慎一の手紙と数枚の桜の花びらが彼女の心を暖かく染めたと思います。

刑場に向かう途中、刑務官の思惑道理に病気が出て、もしかして助かるのではと淡い期待を抱きましたが、壮絶な発作に耐え、死に向かう彼女の意志の強さには驚きました。



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