酔眼独語 

時事問題を中心に、政治、経済、文化、スポーツ、環境問題など今日的なテーマについて語る。
 

「猪瀬の肖像」

2013-12-19 09:27:17 | 社会
 東京都の猪瀬直樹知事があっけなくその座を去った。辞職会見で自ら語ったように「政治家としてアマチュアだった」ことに尽きる。議会で追及を受けていた時は顔を引きつらせていた猪瀬だが、19日の会見ではすっきりした表情だった。これがアマ。プロの政治家は苦しければ苦しいほど余裕を演出するものだ。それができない猪瀬は、やはり器ではなかったと言わざるを得ない。

 猪瀬は代表作「ミカドの肖像」でロラン・バルトの言葉を引いて「(皇居について)いかにもこの都市は中心を持っている。だが、その中心は空虚である」と述べている。自身の中心もまた「空虚」だったとは皮肉である。

 鼻の穴を膨らませながら対象に突っ込んでいく作家は、攻めたり、相手の弱みを突いたりすることは得意でも、巨大組織をマネジメントすることは不得手なのだ。猪瀬はそれが分からなかった。道路公団の追及などを通じて「改革派」などとおだてられて勘違いしたのだろう。気の毒なことだ。

 だが、この男、根は善人と見た。嘘をつくと顔がゆがみ、汗が吹き出す。徳田毅について「親切な人だと思った」などというセリフは、プロの政治家なら決して吐かない。小心者が精一杯の虚勢を張るとこんな姿が出来上がる。退職金が1000万円出るそうで、結構!!なことだ。

 さて、後任。自民党では小池百合子、丸川珠代、下村博文ら、民主党は蓮舫らの名前が挙がっているが、この連中は出ないだろう。どちらも現職国会議員以外から担ぎ出しそうな予感がある。東国原は「現時点では考えていない」そうだが、豹変しそうだ。話題の中心にいないと気が済まない性格が、goサインを出すのではないか。

 知事選といえばもう一つ、沖縄もきな臭い。仲井真知事は年内に辺野古埋め立て容認の決断を下す。知事選での公約に反する行為だ。「普天間移設を実現し、日米関係を良好に保つための苦渋の決断だ。選挙公約を反故にしたことについては、辞職して責任を取りたい」。というような決着になるのではないか。体調もかなり悪いようだし、早く辞めたいと思っているのは間違いないだろう。

 二つの知事選挙の動向次第で安倍政権も揺らぐことになる。
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田原総一郎の妄言

2013-09-04 20:16:50 | 社会
 田原総一郎が「日経bp」のウエブサイト「復興ニッポンメール」に面白いことを書いている。タイトルは「汚染水漏れ事故は東電にすべてを押し付けた政府の責任だ」。

 この見出しは全く正しいが、書いている内容は民主党政権に責任を押し付け、現安倍政権をヨイショする噴飯ものだ。政権交代から半年以上もたっている今、政府の責任と言えば現政権の責任も当然問われなければならない。そこに目をつぶる田原、齢のせいなのか、本来の体質なのか。こうも露骨だと、憐れみさえ感じてしまう。

 ≪汚染水漏れはこれまでにもあったが、なぜこれほど深刻な事態になったのか。基本的には、原発事故対応の体制に問題があったと私は考えている。原発事故が発生したのは民主党内閣のときで、民主党内閣は原発事故の責任と対応をすべて東電に負わせた。それが事態を悪化させたのだ≫


 ここまでは正しい。ならば安倍政権がまずやるべきは、内閣発足と同時に「福島第1の始末は政府が責任を持つ」と言明することではなかったか。

 汚染水漏れが大きく報じられたのは、4月6日。地下貯水槽のシートが破損して120トンが漏れたとの報道だ。翌日には別の貯水槽の漏えいも報じられた。4月22日にはIAEAの調査団から「汚染水の問題が直面する最大の課題だ」と指摘されてもいる。

 その後、8月になってタンクからの漏えいが発覚、国際的な大問題になったのは承知の通りだ。

 ≪原子炉建屋に1日約400トンの地下水が流れ込む問題は、本来なら敷地内に入る前段階で地下水をくみ上げ、汚染されていない状態で海に流せば何の問題もなかったはずだ。そうした対策がとられずにこれまでやってきたのである。
 自民党政権になり、今年5月、経済産業省が原子力建屋の地下に流れ込む地下水を減らすため、建屋を囲む遮水壁をつくるように東電に指示していた。技術的課題が多いのは確かだが、これまで実行に移されなかったのは東電には費用負担する余力がなかったことも影響している≫

 田原は一応「技術的課題は多いが」と断っているものの、「敷地内に入る段階でくみ上げて海に流せば何の問題もなかった」などと妄言を吐いている。地下水の経路も分からないで、めくら滅法に井戸を掘るなどありえない。遮水壁など造っても、どこにでも流れていく水を食い止めることは不可能だろう。そんなに簡単にいくのなら、東電でもやっているはずだ。

 田原は汚染水は金さえかければ何とかなると思っているらしい。あげく、「大変だというばかりのメディアもおかしい」と八つ当たりだ。メジャーメディアの原発報道に問題があるのは確かだが、メディアの一翼を担う田原からこんな言葉を聞くとは笑止千万である。

 参院選が終わるまで汚染水問題を顕在化させなかったのはなぜか。2020年五輪の開催地が決まるIOC会議の直前になって、慌てて「政府が責任を持つから心配しなくで」と言い出した理由は…。

 田原が問うべきは霧消した民主党政権の責任をあげつらうことではなく、現政権の場当たり対応ではないか。
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除染費用5兆円!!

2013-07-24 09:02:29 | 社会
 昨夕のNHKニュースで「福島原発事故の除染費用は最大で5兆円を上回る―産業技術総合研究所試算」と伝えていた。今朝の読売を見るとどこにも載っていない。地方紙にも見当たらなかった。ネットで調べると日経と毎日は報じている。日経の記事は[共同]のクレジット付きだ。

 ≪東京電力福島第1原発事故に伴い、福島県内で実施する除染費用の総額が最大で5兆1300億円に上るとの試算結果を、産業技術総合研究所の研究グループが23日、発表した。これまで政府は1兆円を超える除染関連費用を計上しているが、将来の見通しは示していない。

 研究グループは「エリアや工程ごとの費用や総額がどの程度かを推計することで、除染の在り方に関する議論の材料にしてほしい」としている。

 試算結果によると、国直轄で除染する「除染特別地域」の費用が1兆8300億~2兆300億円。市町村が除染を進める「除染実施区域」で7千億~3兆1千億円だった。土地の利用区分ごとの標準的な単価で除染した場合と、自治体などへのヒアリングで最も高かった単価で除染した場合の総額を算出。仮置き場や中間貯蔵施設に汚染土壌などを移す費用や、中間貯蔵施設での保管費用も推計した。

 具体的な除染方法や、除染実施の判断は、自治体の方針のほか、いつの時点の線量で除染を実施するかで違う結果となるが、試算では過去のモニタリング結果などを基に一律に仮定した。このため、実際の予算額の積み上げとは異なるとしている〔共同≫=日経web=。

 除染については労働問題から手抜きに至るまででたらめぶりが明らかにされている。効果のほども定かではない。それなのになぜここまで「一生懸命」に除染をするのか。

 政府や東電は「福島は取り戻せる」「原発事故から立ち直れる」。こうアピールしたいのだろう。不幸にして事故が起きたが、きっちり除染すれば元通りになる―福島県民にこう呼びかけているのだ。

 故郷で暮らしたいと願う、あるいは現に生活している方々にとって除染は必要不可欠な作業であることは間違いない。ただ、どこをどれだけという点については、もっと厳密に詰める必要がある。福島第1原発の事故は、なお継続中であり、汚染水を中心に放射能汚染も拡大中だからだ。このところ連日湯気を立てていると伝えられる3号機は実際はどうなっているのか。

 福島第1の廃炉には30年以上かかるとされる。この間、何が起きるか分からない。除染はこれらも考慮し、超ロングスパンで超広域に考えるべきだ。巨額の費用をかけて除染したのに誰も住まないという事態も想定できる。地域や町の再興とセットにして論議を深めてもらいたい。
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親は大変だ!!

2013-07-08 11:19:14 | 社会
 自転車に乗った子どもが人をはね、大けがを負わせた。その際、親はどこまで責任を負うべきか。神戸地裁は「親には監督責任ある」と認定し、高額な損害賠償を命じた。

 ≪小学生が乗った自転車にはねられて植物状態になったとして、被害女性(67)の家族と保険会社が児童の母親(40)に対し、計約1億600万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、神戸地裁の田中智子裁判官は4日、児童の母親に計約9500万円を支払うよう命じた。

 判決によると、事故は2008年9月、神戸市北区で発生。時速20~30キロで坂を下っていた小学5年生の男子児童=当時(11)=の自転車と、散歩中の原告女性が衝突。女性ははね飛ばされて頭を打ち、意識不明の重体となった。

 田中裁判官は事故当時、男子児童がヘルメットを着用していなかったことなどから「(母親が)十分な指導や注意をしていたとはいえず、監督義務を果たしていなかったのは明らか」として保護者の責任を認めた。

 交通事故に詳しい高山俊吉弁護士(東京弁護士会)は「被害が重大だと自転車事故でも高額な支払いが求められるケースが増えている。自転車事故自体が増える中、裁判所も過失を厳しく捉える傾向にあり、判決は保護者の監督責任を厳しくみたのだろう」と話している≫=神戸新聞com=。

 法廷でどのようなやり取りが交わされたか分からず、判決要旨も不明なので断定的なことは言えないが、かなり親に厳しい判決だと思う。「ヘルメットを着用していなかった」ことなどから「(安全について)十分な指導や注意をしていたとは言えない」の指摘も一面的な見方だ。

 では、注意や指導がなされていて、重大事故を起こしたときはどうなるのか。監督責任論だけでは対処しきれまい。

 高性能の自転車が増えるにつれ、対人事故の危険性も増大している。結果に対する責任は大人であろうと子どもであろうと負わねばならない。時代に合った新しい過失責任論の構築を期待したい。
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被害者はどっちだ

2013-07-04 08:57:32 | 社会
 いま、小学校の周りなどを歩いてみると「不審者に気をつけよう」とか「怪しい人を見かけたらすぐにとどけでよう」というポスターが目につく。子どもの周りは危険人物でいっぱいということらしい。しかし、「おかしな人」は昔からいた。もっと普通に街を歩いていたように思う。でも事件沙汰になることなどほとんどなかった。なぜ近年、「事件」が多発するのか。

 人は余裕がなくなると攻撃的になる。キャパが小さければ小さいほど、沸点は低くなる。社会全体に余裕がなくなり、一人一人もいっぱいいっぱいのところで生きている。そうした連鎖が「キレル」人格を生んでいるような気がする。

 もう一つ。勝手に「事件」をつくる傾向もみられる。たとえば坂戸の「児童襲撃事件」である。

 ≪埼玉県坂戸市の公園で2日夕、小学生2人が刃物のようなものを持った男に襲われた。4日前には東京都練馬区の小学校前で男児3人が刃物で切りつけられる事件が起きたばかり。子どもたちを守ろうと、学校は見守り態勢を強化する。

 「(不審者に)カッターナイフのようなものをあてられた」。午後4時半ごろ、市立千代田小に5年生の男児(11)と女児(10)が駆け込んできた。帰宅後、徒歩10分ほどの同市千代田5丁目の千代田公園で遊んでいたところ、男に突然刃物のようなものを押しつけられ、自転車で逃げてきたという≫=朝日degital=。

 事実は当初の報道とはだいぶ異なっているようだ。

 ≪埼玉県坂戸市千代田の千代田公園で2日夕、小学校の児童2人が男にカッターナイフのようなものを押しつけられたとした通報で、児童が公園のベンチで寝ていた男の写真を無断で撮ったことを発端に、怒った男が木の枝を振り回し児童の腕に痕がついた可能性があることが3日、県警幹部への取材で分かった。

 県警幹部によると、男は、公園のベンチで寝ていたところ、児童が近くで大声で騒ぎ、携帯電話で撮影したため、怒って追いかけたという。児童は公園からいったん逃げたが公園に戻ったところ、男が木の枝のようなものを振り回し、男児(11)が左腕に、女児(10)が右腕にひっかかれたような痕ができたという。

 西入間署は暴行事件とみて引き続き捜査しているが、刃物を押し当てられた事実はないとみて調べを進めている≫=読売online=。

 以下は推測である。
 
 この男性は失業中、しかもホームレスである。夏の午後、気持ちよくベンチで寝ていたら子どもがはやし立て、あげくの果てに写真まで撮り始めた。「こらー、ガキどもいい加減にせえよ!!」。子どもたちはなおも「こじき」「ホームレス」などとはやし立て、あっかんべをしながら逃げ去った。「面白いね」-子どもたちは男の様子をまた見たいと公園に引き返した。そこで男が木の枝を振り回し、先端が子供たちに当たった。

 実際にどのようなことが起きたかは分からない。しかし、子どもたちが嘘をついていたのはほぼ間違いないと思われる。子どもは(一部の大人も)自分を正当化するためには平気で嘘をつくものだ。警察もメディアもそんなことは百も承知しているはずなのに、だまされてしまう。今日の社会では、「被害者」は絶対的だ。ならば、なおのこと誰が被害者かを慎重に見定める目が必要だろう。
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