酔眼独語 

時事問題を中心に、政治、経済、文化、スポーツ、環境問題など今日的なテーマについて語る。
 

「田母神講演」やらせなさい

2009-06-30 05:34:45 | Weblog
 あの田母神俊雄センセイが「広島原爆の日」の8月6日に、広島市での講演を行う予定だという。演題は「ヒロシマの平和を疑う」だそうだ。わけの分からないタイトルではある。この企画に対して、広島市長が文書で日程変更を求めたらしい。「被爆者や遺族の悲しみを増す…」を理由に挙げている。


 《広島市の秋葉忠利市長は29日、田母神俊雄前航空幕僚長が8月6日の原爆の日に「ヒロシマの平和を疑う」の演題で予定している広島市での講演会は「被爆者や遺族の悲しみを増す結果になりかねない」として、日程の変更を文書で要請した。

 田母神氏の事務所と、講演会を主催する日本会議広島へファクスや郵送した。田母神氏の事務所は「主催者側から依頼がない限り、変更する予定はない」とコメントしている》=共同=。


 8月6日に田母神が何をしゃべるのか。存分に語らせて、その無内容さを広範にアピールした方がはるかに有益だ。「原爆投下の当日」「広島で」「田母神が」講演するというだけで意味がある。主催者の意図がそこにあるのは明らかだ。日程変更になど応じるわけがない。「秋葉市長による言論弾圧」と言い募るのは目に見えている。秋葉クンも思慮が足りない。

 核はいま最も論ずべきテーマだ。北の核武装に対抗して、日本も核を持てという声が高まっている。アメリカは、ほうっておくとまずいというので「力強い核の傘を提供し続ける」となだめるのに懸命である。

 在日米軍や日本に来航、飛来する艦船や航空機の核所持は黙認するとした密約が確かに存在したと元外務次官が実名で証言した。

 《日米両政府が1960年の安全保障条約改定時に、核兵器を搭載した艦船の寄港や領海通過を日本政府が黙認する密約を交わしたとされる問題で、1987年7月から89年8月まで外務次官を務めた村田良平氏(79)は29日、読売新聞の取材に対し「そういうたぐいの文書はあった」と述べ、密約の存在を認めた》=読売ONLINE=

 密約があろうがなかろうが、寄港する米空母などが核兵器を搭載していると考えるのは軍事の常識だろう。沖縄の嘉手納基地にも核兵器がおかれている可能性が高い。核戦略では、どこに、どれぐらいの核があるかは最大の秘密だ。相互確証破壊の下ではなおさらである。

 田母神サンには大いに弁じてもらえばいい。日米密約も語ってほしいところだが、こういうノー天気な人物は蚊帳の外だったんだろうな。
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陸上日本選手権の拍子抜け

2009-06-29 05:59:37 | Weblog
 世界選手権の選考会を兼ねた陸上の日本選手権が28日、閉幕した。スプリント系を中心に好記録が続出した大会だったが、最終日のクライマックスに主役2人が不在で、興味をそがれたのが残念だ。

 《陸上・第93回日本選手権兼世界選手権代表選考会最終日(28日・広島広域公園陸上競技場=読売新聞社など後援)――男子100メートル決勝は、江里口(えりぐち)匡史(早大)が10秒14で初優勝し、世界選手権(8月、ベルリン)代表に内定。江里口は準決勝で日本歴代4位の10秒07をマークした。

 4連覇を狙った塚原直貴(富士通)は左太ももを痛めて決勝を棄権。女子100メートルは、200メートルとの2冠を狙った福島千里(北海道ハイテクAC)が足の付け根を痛めて決勝を棄権し、高橋萌木子(ももこ)(平成国際大)が11秒34で2年ぶり2度目の優勝を果たした》=読売ONLINE=

 いい風と高速トラックを味方に、塚原がアジア人初めての9秒台をたたき出すシーンと福島が颯爽と10秒台で駆け抜けるシーンを期待していただけに残念だ。2人とも準決勝までは順調そうに見えていただけになおさらだ。

 故障の程度は軽いということなので、早く治してベルリンで大暴れしてほしい。

 それにしても、短距離でこう好記録が出るのはちと不思議だ。江里口は高校時代からそれなりの選手だが、昨年までのベストは10秒34である。一気に0秒3近くも短縮するとは驚きだ。本人も「00台がでるとは」とびっくりしていた。

 高反発系のレーン全盛だが、それでいいのかという疑問もある。硬すぎて選手への負担が大きくなるからだ。普段練習しているトラックとの違いなどの影響も考えられる。

 記録が出やすいのはいいが、選手が壊れるのでは困る。選手の健康や安全と両立しない用具の進化は邪道である。国際陸連によるレーンの統一規格化と超硬質・高反発系レーンの歯止めを求めたい。ただ、そうなると現在の世界記録がかなりの期間存続することになり、新記録に沸くシーンが減ることになる。興行本位の大会から抜け出すには、それもいいことかなとも思うのだが…。

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7月2日解散………かな

2009-06-26 05:19:05 | Weblog
 麻生太郎首相が25日、日本記者クラブで会見し「解散の時期はそう遠くない」と述べた。これまでは「しかるべき時期に、私が解散します」だった。「そう遠くない」と言ったって、衆議院議員の任期はあと2か月と少ししかない。どのみち、そう遠くはない。となれば、この「遠くない」は「ごく近く」と解釈すべきだ。

 前日、東国原発言などについてメディアに囲まれた時の麻生の顔は、余裕がなく引きつっていた。ところが、日本記者クラブで会見する麻生の表情は、すっきりとしていた。何かを決断した顔と見たのだが…。

 《麻生太郎首相は25日夕、日本記者クラブで会見し、衆院解散・総選挙について「今日時期を申し上げることはないが、そう遠くない」と述べた。かねて検討している「7月上旬解散~8月2日衆院選」を視野に早期解散を探る考えを示したとみられる。

 解散前の大幅な内閣改造には慎重姿勢を示し「いま直ちに(閣僚を)代えなければいけないと思っていない。担当閣僚は頑張っている」と強調した。自民党役員人事については「いろいろな方がいろいろおっしゃるので丁寧に拝聴している」と述べた。首相は25日夜、党役員人事の検討に着手。党四役のうち選対委員長を除く三役を入れ替える方向だ》=共同=

 24日の夜、安倍晋三が公邸を訪れ二人で政局について話し合ったらしい。

 《自民党内で、次期衆院選を前に内閣改造と同党役員人事を行うよう求める声が強まっている。24日夜には安倍晋三元首相が首相公邸に麻生太郎首相を訪ね、人事刷新と早期の衆院解散・総選挙を求めた》=毎日com=

 天皇が外国訪問に出かける(7月3日)前に解散を断行する。お坊ちゃま二人はそう決めたのではないか。何より麻生の背を押したのは、東国原の「私を総裁候補に」発言だろう。元お笑い芸人に「俺が代わる」とマジで言われたのだ。プライドだけは高い麻生が、これで黙っているはずはない。

 一寸先は闇、が政界だから、どう転がっていくか本当のところは分からない。麻生自身も読めていない。だから何も決断できないのだ。共同によれば、幹事長、政調会長、総務会長を2日にも交代させるという。幹事長には石破農相を当て、政調会長に舛添厚労相を持ってくる。閣僚との兼務は無理なので、この手当ても必要だ。

 与謝野と佐藤の兼務も合わせて解消するとなると、小幅の内閣改造と同じだ。若くて人気のありそうな連中を引っ張り込んで、改造の勢いで一気に解散。これが当ブログの見立てである。このところ見込み違いが多いので、確率は13%と言っておこう。投票日は8月2日である。
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「東国原首相」 いけるかも

2009-06-24 05:31:33 | Weblog
 そのまんま東、あらため東国原英夫が首相(自民党総裁)の座に色気を見せているらしい。朝日などの報道ぶりからは、本気とも取れる。

 《自民党の古賀誠選挙対策委員長は23日、宮崎県庁で東国原英夫県知事と約20分間会談し、次の総選挙に自民党から出馬するよう正式要請した。知事側は自民党総裁候補とすることなどを出馬の条件に挙げたが、結論は出なかった。

 東国原氏は総選挙で「次期総裁候補」として当選した後、総裁に選ぶように求めたと見られる。

 古賀氏は会談で「自民党も自浄能力を発揮して変わっていかないといけない」と出馬を要請。これに対し、東国原氏は(1)全国知事会でまとめた地方分権に関する方針を自民党の政権公約(マニフェスト)に盛り込む(2)自分を次期総裁候補とするとの2条件を提示した》=朝日com=

 東国原はその後出演したテレビなどで「722分の1(1国会議員)にはならない」と述べるなど、意欲を見せていたという。

 まあ、冗談と受け止めるのが妥当だ。大阪府知事の橋下徹は「断るためのしゃれ」と解釈しているが、いいところを突いている。東国原の要求が自民党に受け入れられる可能性はゼロだからだ。無理難題を吹っかけて、相手の要請を交わす。昔からある手法だ。

 東国原の条件提示を真っ正直に解釈して、発想を疑うなどと批判する諸君も大勢いる。気持ちは分かるが、センスが無い。同じことを言うにしても、別な言い回しがあるだろう。

 《自民党の古賀選挙対策委員長が宮崎県の東国原英夫知事に次期衆院選への出馬を要請したことについて、大島理森国会対策委員長は23日、「総裁になりたいなら、国政での経験、研さんを積んで、期待が集まってからだ」と否定的な見方を示した。

  一方、民主党の鳩山代表は「知事はまだ1期目も終えていない中で、政党を救うため、知事の職を投げ捨てるみたいな発想が県民、国民に理解されるのか」とけん制した》=読売ONLINE=

 大島はまじめそうな人だから、こんな発言になってしまう。経験と研鑽を積んで期待が集まった連中の中に、安倍、福田、麻生も入るのだろう。それを思い浮かべると国民はしらけてしまう。宇宙人・鳩山も根は正直なのか、通り一遍の反応だ。

 イチモツを満座で披露? したり、淫行や暴行で活躍した東国原である。常識に掛からない言動や行動があっても不思議ではない。国政転出は冗談半分、色気半分というところだろう。こんな条件を出せば、自民党の古い部分からは総すかんを食う。それも織り込み済みなのではないか。そう考えると、怪しい雰囲気も漂う。

 麻生も東国原もたいした違いはない。というか、麻生よりはましな気もする。自民党が本気で東国原を担ぐと面白い。面白いが、選挙で負ける確率がさらに高まるのも確かだ。「国民をおちょくってるのか」と大ブーイングが沸くだろう。でも、東国原ブームが起きる可能性もゼロではない。どの道、自民党は負けるのだ。東国原を担いで賑やかにお祭り選挙兼自民党葬送選挙をやればいい。大敗した後は政界再編だ。

 

 

 
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「泳ぐのは選手だ」

2009-06-23 05:56:25 | Weblog
 世界記録として認められるかどうかが注目されていた入江のタイムは、公認されなかった。男子200背泳ぎは、日本記録が世界記録を上回る珍現象が確定することになる。

 《国際水泳連盟は22日、男子200メートル背泳ぎで入江陵介(19)=近大=が5月10日の日豪対抗(キャンベラ)でマークした1分52秒86のタイムについて、認可された水着を着用していなかったという理由で世界新記録に公認しなかったと発表した。

 入江はライアン・ロクテ(米国)が昨年の北京五輪で出した1分53秒94の世界記録を1秒08も上回った。しかし、3月に導入した水着の新規定に基づき審査した国際水連は、入江が着用したデサント社製水着は「空気をためる効果を発揮する構造をつくってはいけない」というルールに抵触するため認可しなかった。国際水連は3月から世界記録公認の条件に、認可水着の着用を追加し、入江の記録公認の結論を出していなかった。

 国際水連は22日、これより先に入江が着たデサント社製など、5月に認可せずに改良後に再提出された世界20社の計188タイプを認可したと発表した》=22日・共同=

 FINAが結論を出すまで1か月以上も掛かっている。水着の構造だけの話なら、もっと早く裁定が下されていたはずだ。デサントなどの改良型水着に対する認可を同じ日に出す必要もない。「直した方は認めてあげたから、あの速い水着と記録は諦めなさい」ということか。

 FINA御用達ともいえるスピード製水着の記録を上回らないようにという「気遣い」が透けて見える。以前にも書いたが、推進力と直接関係のない設計にごちゃごちゃいうのは極力避けるべきだ。オープンにするのがいい。途上国の選手などにはFINAが援助して最新モデルを提供すればいい。

 泳ぐのは選手である。ジャパンオープンでLRを着けた入江のタイムが世界記録に及ばなかったことにメディアが大きく反応していた。毎レース世界記録やそれに近いタイムをたたき出すなど、神様の領域だ。心技体ともベストな状態で、しかも環境も整っている。観衆の後押しもある。こういう条件がすべてそろって、世界新記録が生まれるのだ。

 「跳べば世界新」は1cm刻みの更新を旨としたブブカだけだ。こんなことが誰にでも当てはまることでないぐらい、常識で分かりそうなものだが…。
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浮き足立つセンセイたち

2009-06-19 05:56:58 | Weblog
 臓器移植法改正案の衆院本会議採決が行われ、「脳死は人の死」とし移植の年齢制限を撤廃する「A案」が大差で可決された。

 今国会の最終版で「D案」なるものが駆け込みで提案され、委員会審議に付された改正案は4本に上った。脳死についての国民的合意がいまだに存在していないことの証明だろう。共産党を除く各党は、党議拘束を外して議員個人の「良識」に委ねた。メディアは「過半数を得る案はないかも」と予測していた。ところが、の結果である。

 《衆院は18日の本会議で、脳死後の臓器提供の年齢制限を撤廃し、本人の意思表示がなくても家族の同意で提供を可能とする臓器移植法改正案(A案)を賛成多数で可決した。自民、民主など各党は党議拘束をかけずに各議員の判断で投票し、賛成263票、反対167票、欠席・棄権は48人だった。同案の可決により、その他の3案は採決されずに廃案となった。

 1997年に成立した現行法は脳死後の臓器提供について、15歳以上で本人による提供の意思表示がある場合に限っている。衆院を通過したA案は臓器移植を推進するため、提供者の年齢制限を撤廃し、本人が事前に拒否を表明していなければ家族の同意で提供可能とした。これまで国内ではできなかった小児の臓器移植に道を開くとともに、15歳以上の臓器提供例も増える可能性がある》=日経NET=

 日経の別の記事によれば、賛成者の大部分は自民党議員だという。

 《賛成票263のうち、約8割が自民党議員。参院で主導権を握る民主党議員の賛成は2割以下にとどまる。賛成したのは自民党が67%の202人、民主党は37%の41人、公明党は39%の12人。社民党は全員が反対に回った。欠席・棄権(議長含む)は全体で48人だった》

 朝日が全議員の賛否を掲載している。これを見るとなかなか興味深い。共産党は審議が不足として党として棄権した。社民党も全員が反対だ。硬骨の人・平沼赳夫も棄権、民族派色が濃い稲田朋美は反対だ。ごく大雑把に言えば、左右は反対、中はぐちゃぐちゃということだ。

 それにしても、なぜ100票もの差がついたのだろう。総選挙が目の前にぶら下がっているからだろう。テレビなどでは、若い夫婦が涙を流して「立法不作為」をなじる。「恨まれてはたまらない」と議員心情が揺れる。

 「参院があるから」という安易な気持ちも白票を投じる背中を押したように思える。信念を持って臓器移植法改正を仕上げるというより、とりあえず「賛成しました」とポーズを取ったのだ。

 人の死の定義を、国会がたった8時間足らずの審議で変えてしまう。考えようによっては恐ろしいことだ。情緒が支配する政治は願い下げである。

 それにしても、メディアの取材力のなさにはびっくりした。
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麻生vs鳩山2回戦

2009-06-18 05:01:14 | Weblog
 「政権担当能力の違いを見せつける」という麻生首相の狙いは、大はずれ。というより、「これでは鳩山さんの方がまし」との感想を国民に抱かせてしまったのではないか。麻生vs鳩山の党首討論2回戦のことである。

 《麻生首相と民主党の鳩山代表の2回目の党首討論が17日、国会で行われた。鳩山氏は日本郵政の西川善文社長の人事について「私どもが政権を獲得した時には、西川社長にはお辞めになっていただくしかない」と明言し、次の総選挙で政権交代が実現すれば、解任する考えを示した。

 これに対し、首相は「民営化された株式会社に対して政府の介入は最小限にとどめるべきだ」としたうえで、「(対応が)ぶれているとか、いないとか(ではなく)、結論が出るまでの間、いろいろな意見を聞くのは当然のことだ」と反論した》=朝日com=。

 麻生の反論は一般論に過ぎない。規制改革会議議長だった宮内が君臨するオリックス(不動産)がかんぽの宿を一括落札した時点から国民は胡散臭さを感じているのだ。単に価格の問題ではない。麻生はこうした点が全く分かっていない(ふりをしている?)。これでは、まともな論議にならない。

 機転の利かなさも相当なものだ。おそらく麻生は財源問題と安全保障問題で攻め立てようと考えていたに違いない。そのチャンスもあった。例えば鳩山が先手を打って「船舶検査新法」を持ち出したときだ。なぜ、これに絡めて民主党の防衛政策を槍玉に挙げないのか。時間切れ間際に慌てて「(日本防衛が)第7艦隊だけで十分とはいかがなものか」などと突っかかるのは、みっともないだけだ。

 財源論議はさらにひどかった。官僚の発想から抜け出して予算の大胆な組み直しや見直しを行えば、無駄が見つかり財源が出てくる、と鳩山民主党は主張する。その見直しに要する期間が4年間、この間は消費税は上げない、というのである。次の総選挙で民主党が勝てば、直ちに予算編成だ。このときの財源はどこに求めるのか。来年、再来年、その次の年はどうか。麻生はここを聞くべきだった。でも、できなかった。能力も余裕もない。指導力はもはや皆無に等しい。

 後は身を引いてもらうしかない。麻生らしく威勢のいい啖呵を切って官邸を去っていただきたい。「友愛」の由紀夫クンも頼りないが、まだましだろう。
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村木局長は「被害者」か

2009-06-16 05:40:42 | Weblog
 障害者団体割引郵便不正事件に関与したとして厚生労働省の村木厚子雇用均等・児童家庭局長が逮捕された。障害保健福祉部の企画課長当時、資格のない団体に虚偽の証明書を発行したという容疑だ。

 《自称・障害者団体「凛(りん)の会」(現・白山会)を郵便割引制度の適用団体と認めた証明書を不正に発行したとして、大阪地検特捜部は14日、厚生労働省雇用均等・児童家庭局長の村木厚子容疑者(53)を虚偽有印公文書作成・同行使の疑いで逮捕した。厚労省によると、同省局長が逮捕されるのは初めて。村木局長は容疑を否認し、「凛の会や証明書のことは知らない。私はこの件に関与していない」と述べているという》=朝日com=

 これまでの報道によると、村木は上司の部長から「証明書案件」を頼まれていたらしい。「あの先生のあれ、頼みますよ」というようなことだったのだろう。部内では「政治案件」と呼ばれていたという。

 村木はさほど重大なことと認識していなかった可能性が高い。「面倒くさいことはさっさと片付けよう」。こんな意識で係長に指示していたのではないか。公印を押した公文書が、これほど杜撰に作成されるとは驚きだ。

 逮捕容疑が公文書偽造ではなく、虚偽公文書作成であることは注意を要する。大阪地検は「文書は正当なものだが、記載内容は嘘だ。しかも、故意に作成された」というのだ。誰が、何の目的でこんな文書を作ったのか。最も疑わしいのは村木にこの案件をつないだとされる元障害保健福祉部長だ。なぜこの人物を飛び越えて村木が逮捕されたのか。朝日の以下の記事を見てもその疑問は解けない。

 《04年当時、厚労省の障害保健福祉部では、元部長や、部下の企画課長だった現在の雇用均等・児童家庭局の村木局長らが、福祉サービス利用者に原則1割の負担を求める障害者自立支援法の成立に向けての責任者として、与野党の国会議員や障害者団体との折衝を続けていたとされる。

 元部長の証言によると、元部長は04年2月ごろ、面識のある民主党幹部の国会議員から「障害者団体の認可の件でよろしく頼む」と電話を受け、村木局長らに「議員絡みだからうまく対応してほしい」と伝えたとされる。
 
 元部長は、有力議員の依頼に応じることで法案がスムーズに成立することに期待した、などと特捜部に説明しているとされるが、一方で「虚偽の証明書が発行されるとは思わなかった」とも話しているとされる》=朝日com=

 元部長は凛の会を障害者団体と認識していたことになる。部長が資格ありと判断する団体に証明書を発行する。所管課長として通常の事務をこなしただけのようにも思える。

 問題は厚生労働省の対応だ。割引郵便が悪用されていると民主党の牧が衆院経済産業委員会で取り上げたのは、昨年の5月だ。事務方の答えは「承知しておりません」だった。その後、何の対応もしてこなかったということなのか。

 この不正事件では石井一、牧ら複数の民主党国会議員の名前が取りざたされている。凛の会の倉沢は鳩山邦夫の秘書をしていたこともあるらしい。政局がどろどろ状態になり、鳩山は郵政を所管する大臣を降りた。このタイミングでの村木逮捕は、気になる。民主党を狙い打ちにせよ、などという指示が出ているとは思えないが…。
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イラン大統領選

2009-06-15 05:18:55 | Weblog
 イラン大統領選挙は「予想通り」現職のアフマディネジャドが圧勝した。改革派とされ、一部メディアが「激しく追い込んでいる」と伝えた元首相のムサビは3割前後の支持にとどまった。

 《イランのマハスーリ内相は13日午後、イラン大統領選挙の最終開票結果を発表、アハマディネジャド大統領が63%を獲得し、予想外の大差で再選が決まった。改革派のムサビ元首相は34%だった。ムサビ氏は同日、選挙での不正行為に抗議する声明を発表。首都テヘランではムサビ氏支持者が警察と衝突するなどの混乱も発生、最高指導者ハメネイ師は結果を受け入れるよう求める声明を出して事態収拾に乗り出した。

 投票率はイスラム革命後の大統領選挙で最高となる85%。2450万票に達したアハマディネジャド氏の得票数も過去最高。対外協調を訴えたムサビ氏は変化を求める都市部の若年層の強い支持を得たが、アハマディネジャド氏は積極的な「ばらまき」策や「強いイラン」強調で農村や低所得層の支持を固めた》=日経NETT=

 国内メディアは前半戦では「現職の圧勝は動かない」と報じていた。ところが6月に入り、投票日が近づくにつれ「ムサビ猛追」「大接戦」「決選投票も」と書きっぷりが変わってくる。

 今の保守、強硬政権に対して都市部のインテリ層などを中心に反発が広がっているのは事実だろう。だが、地方の貧困層は別だ。特派員連中が付き合うのはインテリである。考え方が自分に近いこの層に共感を感じて不思議はない。しかも、米国が結果を注視する選挙だ。こういう時の報道にはバイアスが掛かり易い。

 《米国のバイデン副大統領は14日、保守強硬派のアハマディネジャド大統領が再選を果たしたイラン大統領選について、詳細な調査結果を待ちたいとしながらも「疑問を抱いている」とし、不正などがなかったかを注視していくと述べた。同日放映のNBCテレビの番組で語った。

 バイデン副大統領はアハマディネジャド大統領が支持基盤の弱い都市部でも高い得票率を示しているなど不自然な点があると指摘。クリントン国務長官も13日、訪問先のカナダで「米国は選挙結果がイラン国民の願望を正しく反映するように期待している」と述べ、票集計などでの不正の疑いを晴らすようイラン当局に求めた》=共同=(共同はアハマディネジャドと表記している)

 選挙の一部に不正があったのは確かだろう。米国の大統領選挙だっておかしな現象が何回も起きている。イラン程度の国で、完全に民主的で公正な選挙などあると考えるほうがおかしい。だが、当落を覆すほどの不正はなかったのではないか。生活が困窮する中での「ばら撒き効果」は大きいからだ。

 途上国の政情や選挙は、その国の国民目線で見ないと状況を見誤ることがある。タイのタクシンが、なぜいまだにあれほどの影響力を保持しているのか。核心をえぐったレポートは見たことがない。

 イラン情勢は、北と並ぶ緊張要因だ。そこからの報道がねじれていては困る。目をしっかり見開いて取材してほしい。

 
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純情すぎる? 少年たち

2009-06-14 17:00:53 | Weblog
 富田林の高校1年生が殺害された事件で、同じ市内に住む高校3年生が殺人容疑で逮捕された。女子高校生との交際をめぐるトラブルが動機らしい。

 《大阪府富田林市の石川の浅瀬で、同府河内長野市の私立高校1年、大久保光貴(こうき)さん(15)が遺体で見つかった事件で、府警富田林署捜査本部は13日、富田林市の府立高校に通う3年の男子生徒(17)を殺人と死体遺棄容疑で逮捕した。府警によると、男子生徒は大久保さんの交際相手の少女に好意を寄せ、トラブルになっていたといい、「(大久保さんが)彼女を困らせるので殺すしかないと思った」と容疑を認めているという》=毎日com=

 女の子をめぐって高校生同士が喧嘩をするなんていうのは、ごく当たり前の話だ。草食系男子全盛の時代に、頼もしいともいえよう。だが、無抵抗の相手を木槌などで殴って殺したとなると、その行動の過激さに驚かされる。なぜいきなり抹殺なのか。

 殺されたのが高1で、手を掛けたのが高3というのも気になる。昔なら上級生が呼び出して一喝するか、仲間も一緒になって脅し上げれば一件落着のはずだ。これに頭にきて、高1が逆襲する。これが“普通の”パターンだろう。こうした牧歌的なやり取りがなくなった。人間関係そのものが成り立っていないのだ。

 逮捕された高校生は目立つところのない、おとなしい少年だったという。手口やその後の供述からもそれはうかがえる。

 《調べに対し男子生徒は「交際について彼女から相談を受けているうちに(大久保さんが)許せなくなった。彼女を助けるためには、(大久保さんの)存在をこの世から消すしかないと思った」などと話しているという》=毎日com=

 「彼女を助けるためには、存在をこの世から消すしかない」。まるでアニメの発想だ。少女が何に困っており、彼にどのような相談をしていたのかが分からないので即断はできないが、思いつめていたのは確かだろう。きっと純情な少年なのだ。

 「いい子ほど危ない」がまた現実になった。草食系男子の悲哀はさらに続くことになる。困ったことだ。

 
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