酔眼独語 

時事問題を中心に、政治、経済、文化、スポーツ、環境問題など今日的なテーマについて語る。
 

08年10大ニュース考

2008-12-31 04:55:19 | Weblog
 今年もあと10数時間で暮れる。
 時間の流れが年々速くなっているように感じるが、今年は格別だった。世界も日本も、あれこれ大きな出来事が多すぎて整理がつかない。こうした激動こそ「2008年」を象徴するものだろう。

 かつて各新聞は、年末になると競って「10大ニュース」を掲げたのもだが、いまは読売の「読者が選んだ10大ニュース」と地方紙ぐらいしかない。10大ニュースにはその社の価値観やセンスが現れる。謹厳なるわがメディア各紙は、あまり自分をさらしたくないと考えているに違いない。大読売は、読者任せだから安心して掲載できるというわけだ。

 その読売読者が選んだ国内10大ニュースは次の通り。


1 中国製ギョーザで中毒、中国産食品のトラブル相次ぐ
2 福田首相が突然の退陣表明、後継は麻生首相
3 ノーベル物理学賞に南部、小林、益川氏、化学賞には下村氏
4 北京五輪で日本は「金」9個、競泳・北島選手ら連覇
5 東京・秋葉原で無差別7人殺害
6 後期高齢者医療制度スタート、保険料の年金天引きなどに批判
7 元厚生次官宅襲撃事件で3人死傷、出頭の無職男を逮捕
8 東京株、バブル後最安値を記録
9 岩手・宮城で震度6強、13人死亡
10 洞爺湖サミット、温室効果ガス排出量半減の長期目標


 ギョーザ・中国食品が1位ねえ。生活に密着している点ではうなずけなくもないが、国産食品のでたらめぶりも負けてはいない。「中国」を前面に出したところが読売らしいとい言えよう。誘導の上手さかな。ノーベル賞と五輪の金が上位にきているのことにも注目したい。明るい話題に飢えているということだろう。


 地方紙の10大ニュースは、共同通信と加盟社幹部の投票で決まる。あまりバイアスは掛らず、常識的なところに収まっているが、尖がってもいない。国内10大ニュースは以下の通り。

1 福田首相政権投げ出し。後継麻生も支持率低迷
2 景気後退、株価は急落
3 秋葉原などで「通り魔的」事件続発
4 冷凍ギョーザなど食の不信きわまる
5 ノーベル賞、日本人4氏に
6 後期高齢者制度スタート、悪評ふんぷん
7 ガソリン、暫定税率も絡み大混乱
8 元厚生次官ら連続殺傷
9 年金不信拡大
10 非正規雇用拡大、蟹工船がブームに

 1位と2位がこういう配置になったのは政治を経済の上に置きたがる古い体質の表れか。国際ニュースで「世界同時不況」を1位にしているから、という判断が働いたかもしれない。今後に与えるインパクトなどを考慮すれば、やはり大不況だ。


 業界紙である「新聞之新聞」は次のようにまとめた。

 《新聞之新聞社(東京都千代田区)主催の「社会部長が選ぶ今年の10大ニュース」の選考会が11日、都内で開かれ、毎日新聞など在京の新聞、通信8社の社会部長らがトップに「米国発の世界金融危機。日本でも経営・雇用の悪化が深刻に」を選んだ。2位以下は次の通り。

(2)秋葉原7人殺害など無差別殺傷事件相次ぐ
(3)福田首相突然の退陣と麻生政権の迷走
(4)中国産冷凍ギョーザ中毒事件など食の安全揺らぐ
(5)ノーベル物理学・化学賞を日本人4人が受賞
(6)イージス艦衝突事故や田母神論文問題など防衛省の不祥事続発
(7)宮崎勤死刑囚ら15人に刑執行
(8)妊婦死亡など医療崩壊が顕在化
(9)大分県教委で採用や昇進を巡る汚職事件
(10)角界や大学で大麻汚染広がる
(10)岩手・宮城内陸地震   》=毎日web=

 選考委員が社会部長連中だということを反映したラインナップだ。2位と6位以下にその傾向は顕著に表れている。「死刑執行15人」は前法相鳩山による「自動化」に警鐘を鳴らした? 裁判員裁判をにらんだ? よく分からない。番外で「誤報や虚報、今年もやまず」を入れてほしかった。


 09年は一段と混迷の年になる。そう断言しておこう。総選挙で政権交代も起きる。首相は岡田かなあ。
 裁判員制度が始まり、合議の内容をべらべらしゃべるなど、想定外の事態が続出する。株価は一進一退を繰り返しながら上向き傾向を示すが、首切りは止まらない。あちこちで食い詰め者たちが騒動を引き起こす。ようやく日本の若者も怒り出した。ざっとこんな具合で推移するかと思われる。何の裏づけもないですが…。
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朝日とJTB

2008-12-29 06:12:17 | Weblog
朝日新聞がJTBと包括的な業務提携を結ぶという。朝日旅行株の51%をJTBに譲り、JTBのカルチャー事業を引き取る。本業での頭打ちがはっきりしてきたので、なりふり構わぬ多角戦略に走るの図である。


《JTBは26日、朝日新聞社と旅行事業、カルチャー事業で提携すると発表した。2009年3月にJTBが朝日新聞社の旅行子会社を買収、10月には JTBのカルチャー教室事業を朝日子会社に譲渡する。購読者向けサービスを強化したい朝日新聞社と旅行事業を充実させたいJTBの思惑が一致した。
 
 朝日新聞社の旅行子会社「朝日旅行」の発行済み株式の51%をJTBが取得する。ホテル・航空券の共同仕入れや販売網の拡大などで相乗効果を見込む。朝 日新聞社は中高年向けバス旅行など購読者へのサービス拡充で新聞の販促にもつなげる。朝日旅行は売上高を08年度見込みの92億円から3年後に103億円 に引き上げる。
 
 また、JTB子会社のカルチャー教室事業を、朝日新聞子会社の朝日カルチャーセンターに譲渡したうえで、JTBは朝日カルチャーセンター株式の33.4%を取得する。旅行関連の講座拡充や検定制度の新設などを検討する》=日経web=

 なぜJTBが相手なのか。いうまでもなくJTBは日本交通公社から変形したした半独占的、国策型会社である。社員をこき使うことでも知られる。こんな会社と朝日が手を組む。そこには報道機関としての矜持や節度は見られない。

 JTBは春秋の観光シーズン前を中心に広告を大量出稿する有力クライアントである。メディアが最も気を付けなければならないのは、大広告主との距離感であろう。ここがぐらつけば記事の信頼度が傷つく。JTBは途上国で時々ヘマをやらかす。こうしたことが明るみに出る機会がますます減るのは間違いない。そういえば、トヨタへの切り込みも随分と甘い。

 まあ、本音は朝日旅行を引き取ってもらいたかったのかもしれない。読売旅行も同じようなものだと聞いているが、偉いさんの天下り先になっているだけで、営業益は上がっていないいう。JTBは「朝日」の冠を付けたパック旅行を売り出せる。悪い話ではないと考えたのだろう。

 最近のABC調査が伝える大手紙の部数減は深刻だ。毎日は10万単位で減っている。県によっては1000部をきっている所もある。朝日、読売も5万部前後の減少と見られる。実売数はもっとひどい状況だろう。

 朝日などは記者の志気の低下が目立つという。自前の記者が育たず、地方紙からかき集めてしのぐ有様だ。若手だけでなく幹部まで引っこ抜き始めた。断末魔ということか。紙面を軽視して準国策企業と提携するなど、朝日の自壊を早めるだけだろう。

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リニア新幹線は必要か

2008-12-28 05:28:40 | Weblog
 JR東海が進めている「リニア新幹線」計画が徐々に動き始めた。金子国交相が24日、着工の前提となる需要予測、建設費などの4項目について調査するようJR東海に指示したのだ。


 《JR東海のリニア中央新幹線計画について、国土交通省は24日、輸送力、技術の開発状況、建設費、変電設備の4項目に関する調査を同社に指示した。すでに報告済みの地形・地質調査に続くもの。国交省は地元自治体の同意も求めており、JR東海は同日、自治体との協議を始めた。

 JR東海は沿線の1都5県の同意をとりつけたうえで、ルートも盛り込んだ報告書を1年程度で提出する意向だ。ただ、同社が南アルプスを貫く直線ルートを提示するのに対し、長野県は中央部も走る迂回(うかい)ルートを希望しており、協議は難航が予想される》=朝日web=



 JR東海は25日から長野県など沿線自治体訪問に精を出している。ドン・葛西敬之会長は、プレスセンターで講演してPRにこれ務めている。ここで葛西が述べている内容は、なかなか興味深い。

 《JR東海の葛西敬之会長は26日、日本記者クラブで講演し、東京-名古屋間のリニア中央新幹線計画で沿線の神奈川、山梨、長野、岐阜各県に1駅ずつ設ける「1県1駅」を自民党などが求めていることについて「常識的と言っていい」と述べ、容認する考えを明らかにした。24日に国土交通省から指示された建設費など4項目の調査については、2009年度中に回答したいとの意向を示した。

 リニアの高速性を重視するJR東海はこれまで、中間駅を極力少なくしたいとの考えだった。葛西会長は「リニアが通過するだけでは地元の了解は得られない」と語った》=中日web=


 東海が志向しているのは、南アルプス貫通の直線ルートである。トンネルが多い上に停車駅は少ない。長野県などは露骨に反発している。葛西の発言はこれをなだめようというものだ。名古屋--東京間をノンストップで結ぶ列車と各駅(各県)停車の2系統で運転する。鉄道屋としては「常識的」な発想だという。


 この話は眉に唾をつけて聞いたほうが良さそうである。なにせ17年も先の話だ。葛西の本音は「いまはまず着工を確定させること」だろう。後は何とでもなると考えているのではないか。社長らに地元交渉を任せ、ご自分は「大所高所」から「常識」的な発言をする。見事な役割り分担だ。


 でも、一体誰がリニア新幹線なんて要望しているの。5兆円も掛けてそんなものを造るなら、現在の新幹線車両改善など安全性と快適性の向上に金を使うべきだ。名古屋--東京間を先行運行するのは中京圏が元気がいいから、という理由だけだ。これからの名古屋は沈む一方かもしれない。直通列車など意味がない。


 時速580キロで突っ走るなんて、バブル的発想そのものだ。日本が世界に先駆けて開発したリニアだが、もたついている間に追い抜かれてしまった。商業運転では中国に先んじられた(上海トランスピッド=時速430キロ)。


 「世界最速の長距離リニア」で日本の技術力を示そう。JR東海(葛西)の意気込みの裏側にあるのはそんなものではないか。

 東海は黒字になるように生まれた会社だ。そんなに儲かっているのなら、貨物や三島会社にてこ入れしてはどうか。各社とも決算上は利益を計上しているが、経営安定基金からの繰り入れでしのいでいる状況だ。今後ももジリ貧は変わらないだろう。施設更新もままならず、保線はずさんになっている。大事故が心配される。


 日本列島のゆがみを加速するリニア計画など不要である。リニアは成田--羽田、成田--東京などアクセス輸送に特化すればいい。
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中国とロシアの危ない年末

2008-12-27 17:27:55 | Weblog
 「100年に一度」の大不況はこれまで好調な経済発展を続けてきた中国やロシアにも容赦なく襲い掛かっている。先進各国に比べ社会基盤が脆弱なだけに、社会的弱者はもろに影響を受ける。対応を誤れば、大暴動に発展しかねない。



 《18日付の中国紙「21世紀経済報道」は、広東省など沿海部の出稼ぎ労働者「農民工」のうち約780万人が失業し、来年1月下旬の春節(旧正月)を待たずに帰郷したと報じた。農業省の調査で、中国全土に約1億3000万人いるとされる農民工のうち、約6%が帰郷したことが分かったという。

 沿海部の輸出企業などでは世界的な景気悪化を受けて倒産が相次ぎ、農民工の失業が社会問題化。農民工の多くは四川省や河南省、湖南省など内陸部出身者で、例年は春節に合わせて帰郷する》=共同=


 上海では10月ごろから失業者が目立っていた。子連れの女性ホームレスが残飯をあさる光景も何度となく見かけた。万博を控える上海でさえこうなのだ。内陸部の農村の疲弊度はどれほどだろう。

 もっとも、いつも貧しい地域は貧しくなりようがないとも言える。問題なのは進出した工場が逃げ出したり、沿海部に出稼ぎに出かけた連中が帰ってきて不満をつのらせる、などのケースだろう。一度いい目を見てしまうと、貧困には耐えられないものだ。


 春節以降、景気がさらに悪化し寒波が厳しいようなら大規模な暴動があちこちで起きるかもしれない。中国政府が最も力を入れているのは、ずばり「飢えさせないこと」である。四川地震の際は現金と米を直接渡して不満を押さえ込んだ。全国的にばら撒く事態も想定しているのではないか。


 ロシアもひどいらしい。原油価格が暴落しているのが大きいのだろう。ウラジオストクでは輸入車に高率関税を掛けたことに抗議しする大規模なデモも起きている。ロシア国民は17年前のソ連崩壊の悪夢を思い出しているのではないか。

 《【モスクワ大木俊治】世界的な経済危機の影響でロシアの産業界が深刻な不況に陥っている。首都モスクワの建設業界や地方都市の基幹産業では、操業縮小に伴って大量の従業員が解雇・休職に追い込まれ、社会不安の拡大を懸念する声も出始めた。下落を続ける通貨ルーブルへの不信感も募り、国民は不安な年末を迎えている。

 ロシア各紙の報道によると、特に深刻な影響を受けているのは、需要の落ち込みで生産縮小に追い込まれた鉄鋼業や自動車産業だ。ウラル地方のマグニトゴルスクでは、基幹産業の鉄鋼コンビナートがこの3カ月で約3800人の従業員を解雇し、治安の悪化が懸念されている。また南部ボルガ川沿岸地方の自動車企業「カマズ」と「アフトバズ」は1月まで大半の生産ラインの稼働を停止することを決め、給与の不払いが問題化した90年代の混乱を想起させる事態になっている。

 ロシア政府の統計では、全国の失業者は11月だけで37万6000人増え、失業率は6.5%になった。また国民1人あたりの所得は11月、前年比で6.2%低下した》毎日web=


 ソ連崩壊のときは、医師や研究者、教師などインテリ層の困窮ぶりが目立っていた。それまで安定した生活をしていただけになおさらだ。でも、この人たちは文句はブーブーいうが、行動的ではない。いまは全体的に生活水準が上がっており、金が滞ればたちまち破綻する。中国同様の爆弾を抱えているといっていいだろう。


 プーチンは「巨大なオルガリヒ」になることを目指しているのだと解説してくれたロシアの学者がいる。権力より金、というわけだ。金を手っ取り早く貯め込むには、政治を握ることが一番だ。なるほど。
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海賊征伐は誰の仕事か

2008-12-25 21:02:50 | Weblog
 ソマリア沖の海域で暴れまわっている海賊の被害を食い止めるため、海上自衛隊を派遣する方向で話が進んでいるらしい。


 《河村官房長官は25日午前の記者会見で、アフリカ・ソマリア沖での海賊対策に関して、「現行法であれば(自衛隊法の)海上警備行動(の発令)だ」と述べ、海上警備行動による海上自衛隊の派遣の可否を検討していることを明らかにした。


 ただ、現行法に基づく艦船派遣には、防衛省や公明党を中心に慎重論も強く、最終的な判断は麻生首相に委ねられる》=読売web=


 11月半ばに既に派遣の方向性は打ち出されている。


 《自民、民主、公明各党などによる超党派の議員連盟「新世紀の安全保障体制を確立する若手議員の会」は20日午前の役員会で、アフリカ・ソマリア沖に海上自衛隊の艦艇を派遣し、海賊対策に当たらせるための特別措置法案を議員立法で策定する方針を決めた。来年の次期通常国会への提出を目指す。
 
 特措法案では、武器使用につながる海賊の取り締まりよりも、海賊による被害を未然に防ぐための対策に重点を置く方針。具体的には、護衛艦による日本関係船舶の護衛や、P3C哨戒機による海賊船の監視などを想定している。(2008/11/20-13:11)》=共同=


 自衛隊法に海上警備行動を発令するという発想より、新しい特別措置法をつくることに主眼が置かれていたようだ。特措法なら、海自の活動に1ページを加えることになる。こうして一皮ずつ剥けていくことが目的なのだろう。だが、今の国会情勢では、新法は簡単に通りそうもない。そこで、海上警備行動が急浮上しているというわけだ。



 《自衛隊法82条に基づく海警行動は、海上保安庁で対応不能な事態が発生した場合、自衛隊が海保に代わってわが国の人命・財産の保護や治安維持に必要な行動を取ることを認めている。政府は同法に基づき、ソマリア沖で日本籍船のほか、(1)日本企業が運航を管理している外国籍船(2)日本人が乗船している船舶-を海自艦艇で護送することが可能と判断。ただ、対象が2300隻以上にのぼるため、当面は日本籍船に限って護送を行う方針だ》=産経web・24日=


 海上保安庁で対応不能とはどういう状況か。

 海保と国交省は2004年から「海賊等対策会議」を設置して、情報収集や商社などとの連絡に当たっている。海自より海賊情報が少ないとは考えにくい。


 艦船の能力はどうか。世界最大の巡視船である「しきしま」をはじめ、護衛艦並みの5000㌧クラスのPLH(ヘリ搭載艦)なら海自艦と遜色はない。乗組員の練度は勝るとも劣るまい。北朝鮮工作船の撃沈など、実戦経験もある。大砲と魚雷はないが、35mm連装機関砲2門と20mm機関砲2門があれば、海賊相手なら十分だろう。


 鯨と潜水艦の見分けがつかない海自よりよっぽど頼りになりそうだ。


 でも、なぜ海保派遣という声が出ないのだろう。プルトニウム輸送などでは使っているのに…。海賊対策が政治的に語られすぎているからだ。ここは純粋に効率本位でいきたい。海軍を大遠征させて、練度を上げたい中国とは違う。大人国家日本の存在感を発揮するチャンスなのだ。
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英語の授業は英語でだって?

2008-12-23 10:16:25 | Weblog
 2013年度から適用する高校の学習指導要領改定案が公表された。「ゆとり教育」見直しを強調した小中学校バージョンとは趣を異にした中途半端なものだったようだ。


 《文部科学省は22日、13年度の新入生から実施する高校の学習指導要領の改訂案を発表した。「英語の授業は英語で行うのが基本」と明記し、教える英単語数も4割増とする。理数でも前回抜いた項目を復活。卒業必要単位数を74のままとしつつ、全体で学力向上を目指す内容だ。義務教育の学習が不十分であれば、改めて高校で学び直すことも初めて盛り込んだ。

 高校の指導要領改訂は03年度以来10年ぶり。理数は前倒しで12年度から実施する。

 高校の改訂案では英語で教える標準的な単語数が1300語から1800語に増加。同様に増える中学とあわせて3千語となる。中高で2400語だった前回改訂の前をさらに上回り、「中国や韓国の教育基準並みになる」という 》=朝日web=


 改定案のミソが「英語で授業」というのだから笑ってしまう。英語で授業できる教師は一体どれほどいるのだろう。これから3年間で促成養成でもするんだろうか。小学校から英語教育をやるといっている手前、高校ではこれぐらいやらなければ、という気分は分かるが、教師が不安がり生徒はついていけない事態になりそうだ。

 もっとおかしいのは、「小中学校の学習が足りていない生徒に対して義務教育の補修を行っていい」といいながら、履修内容を高度化している点だ。これではできない子どもはますます大変になる。


 義務教育、高校、大学を貫く教育観がないからこうなるのだろう。これまでの指導要領は「生きる力を付ける」ことを柱に据えていた。今度は「世界に通用する学力」ということか。国際学力テストの結果に一喜一憂しているようでは、骨太の教育方針は出てこない。


 頭でっかちの子どもをつくるより、新型インフルエンザにも、突然の解雇にも負けないタフな子を育てる方が時代にマッチしているのではないか。それより何より、教育も金次第になっていることが問題だ。ここを解決しないと、出席率が50%程度のアメリカ並になってしまう。
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裁判員にはなりません

2008-12-20 20:49:18 | Weblog
 こんなことで来年五月にスタートできるのだろうか。例の裁判員制度のことである。裁判員候補に選ばれたと通知を受けた人の40%にも当たる11万人が辞退などの届出をしているという。



 《来年5月に始まる裁判員制度で、最高裁は19日、候補者に辞退希望などを尋ねた調査票に対し、15日の期限までに約10万9000通の回答が返送されてきたと発表した。期限後にも届いており、約29万5000人の候補者のうち、約40%が回答してきたことになる》=産経web=


 受け取りを拒否する人もかなりいるらしい。潜在的な裁判員拒否者は半数を超えているのではないか。なかには、法で禁止されている裁判員候補当選を公表し、会見で「裁判員お断り」の弁を述べる人もいる。


 《来年の裁判員候補者通知が届いた3人が20日、東京都内で実名を明らかにして会見し、裁判員制度反対を訴えた。弁護士や作家らでつくる市民団体「裁判員制度はいらない!大運動」の呼びかけに応じた。

 東京都の会社員男性(65)は「人は裁かないとの信条を持っており、裁判員は拒否する。法律の素人が審理しても意味がない」。千葉県の無職男性(65)は「裁判官に市民感覚で仕事してもらえばいい。制度は税金の無駄遣いで、生きるのに困っている人のために使うべきだ」と訴えた。

 裁判員法は、候補者になったことを不特定多数に明らかにすることを禁じている(罰則なし)。法に反して会見した理由を東京都の男性は「制度に反対の人はたくさんいる。自分がまず声を上げようと思った」と話した》=毎日web=



 なぜ裁判員制度なのか、という根本が理解されていない。というか、もともとこの点はあいまいなのだ。「裁判に市民感覚を」などと言ったところで説得力はない。裁判は法律に照らして行われるのであり、市民感覚はそれを補強するものにすぎない。

 市民感覚が要求されるのは贈収賄事件など、役人や政治家が絡む事件や行政訴訟などであろう。ところが、裁判員制度は対象を刑事事件、それも死刑若しくは無期に相当する事件に限定している。市民感覚が入り込む余地はどこにあるのか。


 死刑に市民を加担させることが本当に妥当なのか。大いに疑問だ。国際的にも批判の多い死刑制度を、市民参加を盾に存続させようなどと考えてはいないだろうか。裁判の進め方などにも問題を残したままだ。


 五月からの裁判員裁判が混乱することは避けられない。いまとなっては、延期もできないだろう。この責任は一体誰が取るのか。政治、経済に加え司法まで崩壊する事態となれば、日本は真っ暗だ。
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国会は何をしているのか

2008-12-19 05:58:01 | Weblog
 自動車をはじめ、大手製造業で非正規社員の「雇い止め」が広がっている。


 《厚労省によると、非正規雇用の契約途中での「雇い止め」や期間満了時の更新拒否で来年3月までに約3万人が職を失うとみられている。このうち、製造業などの派遣で働く労働者は約2万人というが、派遣労働者を組織する労働組合幹部は「実態はその数倍に上るだろう」と懸念。これらの多くが失職と同時に住居も失うとみられ、労組は住居確保の支援拡大を求めていた。

 産業界では、トヨタ6000人▽日産1500人▽いすゞ1400人▽マツダ1300人▽三菱自動車1100人以上▽大分キヤノン約1100人--など、非正規雇用の削減や契約打ち切りが打ち出されている》=12日・毎日web=


 その後も減産は拡大しており、日産は全派遣2000人を削減するとしている。こうした動きに対し、地方自治体は臨時職員の採用枠を設けるなどの手を打ち始めた。杵築市や大分市、長岡市、上越市など全国的な動きだ。


 それなのに、政府と国会は相変わらずのどたばたを繰り返すだけで具体策に踏み出せない。野党3党が共同提出した雇用対策4法案をめぐる混乱はその際たるものだ。民主党も自民党も味噌汁で顔を洗って出直せ。


 《雇用問題を巡る与野党の対立が激しさを増してきた。18日の参院厚生労働委員会で、民主、社民、国民新の野党3党は共同提出した雇用関係4法案を1日だけの審議で採決を強行。自民党は民主党が4法案の協議のため求めた麻生太郎首相と小沢一郎代表の党首会談を拒否した。与野党の雇用対策は共通点もあるが、接点の模索より次期衆院選をにらんだアピール合戦の様相を呈している》=日経web=


 日経が指摘するとおり、被雇用者の窮状をどう打開するかより、党利党略が優先されているのは明らかだ。いま求められているのは、雇用不安にスピード感を持って対処することだ。素早くセーフティーネットを広げ、首切りに怯える非正規労働者に安心感を与えねばならない。


 与野党で一致できる施策に絞ってでも即刻法律に仕上げ施行してもらいたい。このまま国会を閉じて、寝正月を決め込むようなら暴動ものだ。
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経団連も連合も度し難い

2008-12-16 21:47:24 | Weblog
 日本経団連が09春闘に臨む指針を発表した。賃上げはできない、雇用確保も難しいという情けないものだ。


 《日本経団連は、来年の春闘に臨む経営側の指針を取りまとめ、景気が急激に悪化するなか連合が求める賃上げには否定的な考えを示すとともに雇用の安定も努力目標にとどめており、労使間の交渉は難航することが予想されます。

 日本経団連の指針によりますと、現在の経済情勢は石油危機やバブル崩壊後の不況に並ぶ「第3の危機」だとして厳しさを強調しています。そのうえで、来年の春闘に向け連合が8年ぶりにベースアップの要求を掲げたことについて、「企業の減益傾向がいっそう強まるなか、ベースアップは困難と判断する企業も多い」と指摘して、ベースアップに否定的な考えを示しています。また当初経営側が来年の春闘の最優先の課題に位置づけていた「雇用の安定」をめぐっては、「努力することが求められる」として努力目標にとどめています》=NHK=


 賃上げは個別企業の問題であり、経団連としてとやかく言うべきものではない。上げられるところは上げればいい。指針などを示して賃上げを牽制するのはいかがなものか。


 それよりも、雇用問題である。御手洗会長率いるキャノンは、率先して非正規労働者の解雇に踏み切った。それも、いわくつきの九州の工場である。これでは「雇用が大事だ」などといえるわけもない。こんな見識の人物が「財界天皇」だというのだから、日本の財界も落ちたものだ。


 より情けないのは連合の反応である。


 《来年の春闘に向けて日本経団連がまとめた指針について、連合の高木剛会長は「日本の経済が厳しい状況を迎えるなか、不況や格差社会をどう乗り越えていくかまったく触れておらず、失望した」と述べ、日本経団連の姿勢を厳しく批判しました。

 高木会長は、さらに「経営側は物価上昇に対応しなくてよいといっているようだが、物価が上がれば、賃上げするのは当然のことだ」と述べ、来年の春闘では、雇用の確保を徹底しながら積極的に賃上げを求めていく考えをあらためて強調しました》=NHK=


 高木発言のすべてをNHKがカバーしているわけではないにしても、真っ先に「雇用」の二文字が出てこなかったのには失望する。情勢認識に欠けている。物価上昇に触れているが、これも認識不足だ。原油価格暴落と景気後退でデフレ局面に入っているというのが世間の常識だろう。


 高木が言うべきことは、「何をおいても雇用確保だ。連合はそのためなら血を流してもいい」ではなかったか。連合幹部の頭の中には、傘下の組合の既得権擁護しかないらしい。こんなことだから、組織率の低下が止まらないのだ。20%を割るような組織率で労働者の代表などという顔をしているのは笑止だ。


 連合の態度は全米自動車労組(UAW)といい勝負だ。UAWはビッグスリーが破綻するかどうかより、自分たちの待遇を守るほうが大事だと言い張っている。既に首を切られている期間工のことなど全く念頭にない。


 この経団連にして、この連合ありというべきか。かてて加えていまの日本の政治がある。お先は真っ暗と言いたいが、これより悪くなることはないだろうと妙に楽観的にもさせてくれる。行動経済学的には歓迎すべき布陣なのかもしれない。
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放鳥のトキが死んだ

2008-12-15 05:19:23 | Weblog
 脚に怪我をしていたトキが、タヌキに襲われて死んだ。木の枝にとまれないため、いつかはこういうことになると思っていたが、こうも早く餌食になるとは…。



 《新潟県佐渡市で9月に試験放鳥されたトキ10羽のうち、足にけがをしているとみられていた1歳のメス1羽が死んでいるのが14日、確認された。環境省は死体を収容し、死因などを調べる。

 同省によると、14日午前10時半ごろ、佐渡市中央部の林の中で、市民の男性がトキが死んでいるのを発見。駆けつけた同省佐渡自然保護官事務所の岩浅有記自然保護官が足輪から1歳のメスと確認した。半径10メートルの範囲で羽根や骨片が散乱していたという》=毎日web=


 NHKのニュースで金子獣医は「タヌキに襲われた」と断定していた。毛かウンコでもあったのだろう。



 10羽放鳥したうちの1羽は、翌日から消息不明になっていることは以前書いた。現地では「テンにやられた」とほぼ断定的に語られている。1羽は佐渡海峡を越えて本土に渡りさまよっている。


 中国でも放鳥したトキはよく死ぬらしい。自然繁殖した動物だって「天寿」をまっとうできるのはごく少数なのだから、これは当然だ。さて、現実に放鳥されたトキが死んだことで、地元の反応がどう出るか。


 トキ飼育の専門家会議が8日決めた「給餌は原則行わない」の方針に対して「非情」「かわいそう」という声が上がっていた。死体を見せつけられたことで、保護・支援論が高まるに違いない。でも、それはひいきの引き倒しだ。結局、檻の中へ戻すのと同じことになる。



 中国からトキを持ってきて、日本の空に放そうなどと考えたこと自体が間違いなのだ。今年1月の「朝日」に興味深い記事が載っていた。兵庫医科大遺伝学教室の山本義弘教授が、佐渡市のトキと中国、朝鮮トキの遺伝子を比較して述べている。



 《環境省の委託を受けた研究で山本教授は、国内外のトキの剥製を調査。ミトコンドリアの塩基配列から、日本のトキと、中国や韓国のトキとの遺伝的な違いを調べた。

 すると、日本のトキの塩基配列が、中国のトキとほぼ一致。これまでの研究も「遺伝的な距離は比較的近い」とされていたが、科学的に裏付ける結果を導き出した。

 山本教授は、日本と中国などのトキとの間に「交流があったことは遺伝子のタイプで明らか」と話し、トキが「渡り」をしていた可能性も指摘する》=朝日web=


 ここから読み取れるのは「日本のトキと中国、朝鮮のトキのDNAは違う」という事実である。「ほぼ一致」とは科学的には「すべてでは一致しなかった」と同義ではないか。山本氏も述べているように「遺伝的な距離は比較的近い」というぐらい間柄である。



 佐渡にいるトキは紛れもなく中国のトキである。この事実を確認した上で放鳥を続けるなら続け、受け入れればいい。放されたトキが事故に遭うのは仕方がない。それにもめげす、次々と放して、群れを増やす。環境省はそういう作戦なのだろう。死屍累々、非難轟々を乗り越えて中国トキを日本の空に放つ。何か変だ。 


 
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