嘘みたいなことがあるからこそ、人生は面白いのかもしれない。
予定調和じゃつまらないのだ。
これは、美容院で聞いた、はるか年下娘の恋の話。
21歳の彼女は、鹿児島での女子高生時代に、念願かなって憧れのラグビー部の先輩と付き合うことになったという。
付き合って少しすると彼は、彼女にこんなお願いをする。
お弁当作ってきてくれない。
言われたまま、彼女は朝早く起きて、せっせとお弁当作りに励んだという。憧れの彼氏に喜んでもらうために。
2人で一緒に下校したあと、最後に空っぽの弁当箱を毎日渡されたそうだ。そしてまた作る。
2カ月後、あっさり青春は終わる。
もう、疲れたよ。
お弁当を作るの、に。
彼女は言ってしまった。
で、別れてしまった。
なんなんだ。これ。切ない。
キスでもなくて、弁当の強要かよ。
理性で言うのは簡単だ。材料費すらもらってないのに、何で弁当を作る必要があるんだよ。
私世代には理解できない話。
でも、そうじゃない。
きっと理屈ではない。好きなものは好きなのだ。だから、彼女は弁当作った。そして本気で疲れた。
不細工な関係が、妙にみずみずしく感じた話でありました。