青山円形劇場にて5月14日から5月18日まで上演されていた「クロードと一緒に」と言う舞台を観ました。
昨年、上川隆也さんが真田幸村を演じた舞台「真田十勇士」を観て、御出演された役者さんの他の舞台も観たいとずっと思っていたんです。
でも、なかなか観に行けなくて今回やっと真田で豊臣秀頼役であった相馬圭祐さんの舞台を観に行く事が出来ました。
この「クロードと一緒に」と言うお芝居は30年前にカナダ人の作家が書いた物語で、カナダやイギリスで上演されただけではなく1992年には映画化もされています。
・・・・。
なんて全部ネットから拾った情報。
アタシはこの物語についてほぼ何も知らずに、劇場へと向かいました。
何せ、このお芝居の事を知ったのが公演も半ばを過ぎた頃。
殺人をおかしたと自首して来た男娼の話、R-15指定。
????????
R-15????????
何がなんだかまったくつかめないまま、でもなんかこれは観ておいた方がよさそうだと直感し慌ててチケットを取ったわけです。
劇場は青山「こどもの城」内にありました。
R-15指定のお芝居でありながら、劇場の扉から出るとお子達のはしゃぐ声の行き交う不思議な空間になっておりました。
なので劇場の扉の中に入ると何かずぅーん、と体が暗がりへ落ちてゆく様な、現実からゆっくりと引き剥がされ吸い込まれてゆく様なトリップ感がことさら強かった。
真ん中にある舞台は縦長で、両脇を囲むように客席が配置されていました。円形の劇場での観劇は初めてです。
舞台の上下と言うか、客席ではない両脇と言うか、長方形の短い辺にあたる部分と言うか、そこにはどちらにも木製の「扉」が設置してありました。片方の扉は天井まである大きな扉で沢山取っ手が着いていました。小さな扉が集まって大きな扉になってた。そして何故か斜めに設置されてた。開演までの時間、その小さな扉のひとつひとつがランダムにスポットで照らし出されていました。この扉と向かい合って役者さんがお芝居をするスペースを挟み、ごくごく普通の扉がもうひとつありました。
そこは裁判長の執務室。
人を殺したと言う男娼にその執務室へ呼び出され、刑事、速記、警備官がここへやって来ます。
舞台の中央には大きな木製のテーブルと、その向こうに判事が座って仕事をするであろう立派なデスク。どちらもどっしりとした調度品と言う趣でした。
大きな扉と向かい合ってる方の扉は開閉し、人物が登場する場面と去る場面ではここを使っていました。
警備官役の鈴木ハルニさんはお芝居中ずっとこの扉の向こうに立っています。警備官なので当然の行動なのですが、扉は勿論閉じている事の方が多く角度によっては客席から完全に見えません。
アタシは今回このお芝居を2回観ましたが、相馬さんチームの方の時は警備官と目が合いそうな位の所で観ていました。
警備官が執務室へ入って行って台詞を言う場面はありますが、9割がた彼は扉の外に立っている演技です。
腕時計を覗き込んだり、少し歩きまわって自分の立つ「廊下」の向こうの方を眺めてみたり、ギュっと目を閉じてぶつぶつ何かを呟いていたり。
彼のそう言う細かいお芝居を見ているのがとても楽しかった。
彼の名は「ラトレイユ」と言います。素敵な名前ですねぇ~。
台詞を言う場面でもハルニさんは客席の笑いを誘うお芝居で、思い切り吹いてしまいました。
扉の向こうではいつでもピリピリした空気が充満しているため、「ラトレイユ」の存在はアタシにとって、もはや「救済」でした。
大きなテーブルには書類のような物が雑然とし、コーヒーの入っていたであろう紙コップがいくつか乗っていました。
そのテーブルでは速記の男性がペンを走らせます。小柄でスタイルが良くて、少し神経質な感じがするけどカッコいい。名前は「ギィ」。
パンフレットの表記は「ガイ」となっていますが、お芝居ではギィと呼ばれていました。
ギィが一番「青山」って街には合いそうだな、などと思いました。演ずるのは井上裕朗さん。
犯人の男娼と刑事はダブルキャスト。でも、警備官と速記は同じ役者さんです。
刑事は伊藤陽佑さん。背中が広く長身で、男っぽい。このお芝居の冒頭場面は取調べが始まってから36時間が経過しているにも関わらず、犯人の自供から真実につながる証言が何も得られていないところから始まります。
当然、調べる方は苛立ちを隠せません。
伊藤さん演ずる刑事は、その苛立ちや焦り、怒り、疲労を素直に表面化させていて「あぁ、うんざりなんだろうなぁ・・・」と、こちらが同情することしきりでした。
そして相馬圭祐さん。
柔らかな金色の髪、事前にメディアで見てた時よりも随分痩せていました。
パンフレットの写真よりも痩せていたと思う。
判事のデスクに寄りかかり、後ろ手をついて立つ彼の姿に釘付けになりました。
女性的でも男性的でもない怪しげな美しさを身にまとっていました。
凄く綺麗だった。
でも怖かった。
彼の瞳は空虚であり、あざ笑っているかの様に反抗的で、それでいて恐ろしく扇情的だった。
あんな男の子は見た事がない。
足を踏み入れてはいけない美しさだった。
彼がアタシが初めて出会った「イーブ」でした。
つづく。
昨年、上川隆也さんが真田幸村を演じた舞台「真田十勇士」を観て、御出演された役者さんの他の舞台も観たいとずっと思っていたんです。
でも、なかなか観に行けなくて今回やっと真田で豊臣秀頼役であった相馬圭祐さんの舞台を観に行く事が出来ました。
この「クロードと一緒に」と言うお芝居は30年前にカナダ人の作家が書いた物語で、カナダやイギリスで上演されただけではなく1992年には映画化もされています。
・・・・。
なんて全部ネットから拾った情報。
アタシはこの物語についてほぼ何も知らずに、劇場へと向かいました。
何せ、このお芝居の事を知ったのが公演も半ばを過ぎた頃。
殺人をおかしたと自首して来た男娼の話、R-15指定。
????????
R-15????????
何がなんだかまったくつかめないまま、でもなんかこれは観ておいた方がよさそうだと直感し慌ててチケットを取ったわけです。
劇場は青山「こどもの城」内にありました。
R-15指定のお芝居でありながら、劇場の扉から出るとお子達のはしゃぐ声の行き交う不思議な空間になっておりました。
なので劇場の扉の中に入ると何かずぅーん、と体が暗がりへ落ちてゆく様な、現実からゆっくりと引き剥がされ吸い込まれてゆく様なトリップ感がことさら強かった。
真ん中にある舞台は縦長で、両脇を囲むように客席が配置されていました。円形の劇場での観劇は初めてです。
舞台の上下と言うか、客席ではない両脇と言うか、長方形の短い辺にあたる部分と言うか、そこにはどちらにも木製の「扉」が設置してありました。片方の扉は天井まである大きな扉で沢山取っ手が着いていました。小さな扉が集まって大きな扉になってた。そして何故か斜めに設置されてた。開演までの時間、その小さな扉のひとつひとつがランダムにスポットで照らし出されていました。この扉と向かい合って役者さんがお芝居をするスペースを挟み、ごくごく普通の扉がもうひとつありました。
そこは裁判長の執務室。
人を殺したと言う男娼にその執務室へ呼び出され、刑事、速記、警備官がここへやって来ます。
舞台の中央には大きな木製のテーブルと、その向こうに判事が座って仕事をするであろう立派なデスク。どちらもどっしりとした調度品と言う趣でした。
大きな扉と向かい合ってる方の扉は開閉し、人物が登場する場面と去る場面ではここを使っていました。
警備官役の鈴木ハルニさんはお芝居中ずっとこの扉の向こうに立っています。警備官なので当然の行動なのですが、扉は勿論閉じている事の方が多く角度によっては客席から完全に見えません。
アタシは今回このお芝居を2回観ましたが、相馬さんチームの方の時は警備官と目が合いそうな位の所で観ていました。
警備官が執務室へ入って行って台詞を言う場面はありますが、9割がた彼は扉の外に立っている演技です。
腕時計を覗き込んだり、少し歩きまわって自分の立つ「廊下」の向こうの方を眺めてみたり、ギュっと目を閉じてぶつぶつ何かを呟いていたり。
彼のそう言う細かいお芝居を見ているのがとても楽しかった。
彼の名は「ラトレイユ」と言います。素敵な名前ですねぇ~。
台詞を言う場面でもハルニさんは客席の笑いを誘うお芝居で、思い切り吹いてしまいました。
扉の向こうではいつでもピリピリした空気が充満しているため、「ラトレイユ」の存在はアタシにとって、もはや「救済」でした。
大きなテーブルには書類のような物が雑然とし、コーヒーの入っていたであろう紙コップがいくつか乗っていました。
そのテーブルでは速記の男性がペンを走らせます。小柄でスタイルが良くて、少し神経質な感じがするけどカッコいい。名前は「ギィ」。
パンフレットの表記は「ガイ」となっていますが、お芝居ではギィと呼ばれていました。
ギィが一番「青山」って街には合いそうだな、などと思いました。演ずるのは井上裕朗さん。
犯人の男娼と刑事はダブルキャスト。でも、警備官と速記は同じ役者さんです。
刑事は伊藤陽佑さん。背中が広く長身で、男っぽい。このお芝居の冒頭場面は取調べが始まってから36時間が経過しているにも関わらず、犯人の自供から真実につながる証言が何も得られていないところから始まります。
当然、調べる方は苛立ちを隠せません。
伊藤さん演ずる刑事は、その苛立ちや焦り、怒り、疲労を素直に表面化させていて「あぁ、うんざりなんだろうなぁ・・・」と、こちらが同情することしきりでした。
そして相馬圭祐さん。
柔らかな金色の髪、事前にメディアで見てた時よりも随分痩せていました。
パンフレットの写真よりも痩せていたと思う。
判事のデスクに寄りかかり、後ろ手をついて立つ彼の姿に釘付けになりました。
女性的でも男性的でもない怪しげな美しさを身にまとっていました。
凄く綺麗だった。
でも怖かった。
彼の瞳は空虚であり、あざ笑っているかの様に反抗的で、それでいて恐ろしく扇情的だった。
あんな男の子は見た事がない。
足を踏み入れてはいけない美しさだった。
彼がアタシが初めて出会った「イーブ」でした。
つづく。