この物語の主人公、男娼の男の子は殺人をおかした犯人だと自首しておきながら、自分の名前も殺した相手の名前も言いません。
取調べを始めてから36時間経つというのに。
その代わり犯行時の足取りやら何やらをうんざりする程何度も喋っている。
喋らされている。
刑事が彼の証言を何度聞いても、信じられる要素が少しも無いから。
相馬さん演ずる男娼は、自分のした事をどう捉えているのか全然分かりませんでした。
「殺しましたが、何か?」ぐらいの態度にすら見える。
おまけに速記係を部屋から追い出してくれないかなどと言い出します。
とても生意気です。
でも、普通の男の子が絶対に知らないであろう「何か」が、彼の佇まいを支配していました。
ただならぬ雰囲気だった。
刑事もそれを感じていたのか、速記係のギィに「コーヒーを買って来てくれ。」とお金を渡し、ギィは男娼を一瞥して部屋から出て行きました。
ちなみのに、この舞台はR-15指定です。
でも別に演技が15禁なのではありませんでした。
問題は台詞です。
男性同士のSEXに関するあからさまな表現や、15歳以下では知ろうはずもない言葉がわんさか出て来ます。
きっと意味が分からないんじゃないかと思います。
色んな言葉をその場で聞いて意味が分からなくて、後でネットで調べられても大人としては
「いやいやいや、ダメだから。まだ知らなくていいから。てか、全然知らなくていいから。」
って思いますしね・・・。
後半30分の男娼による独白がこのお芝居の一番の山場なわけで、台詞もそれまでとは比べ物にならない程の破壊力を持って観客を襲って来るんです。
ハッキリと言ってしまっているのでダイレクトに何をしたかが伝わって来ると言うのも確かですが、この舞台ではそこに主人公の恐怖や混乱やそこになお見え隠れする安らぎを表現しているとアタシは思うんです。
15歳以下にはここを理解する事は難しいんじゃないかなぁ・・・と。
舞台が上演する前のアメーバ特番で、演出の古川貴義さんが15歳と言う線引きを「ちゃんと恋愛を経験した事のある年齢から観て欲しいお芝居だから」と言う様な事を仰っていて、なるほどなぁと思いました。
あからさまな言葉による表現も理由のひとつではあるけれど、この物語が抱える肝は常識や日常と言った現実を超えた「愛情」であるし、そこへたどり着くのは大人でさえかなりのエネルギーを要します。
観る方も。
それ以上に演る方も。
この世に生まれてまだ15年も経っておらず、生活の上での常識やなんかがまだ充分に備わっていないままそれを超えた物を観たり聴いたりしてしまうと、間違った認識で生きて行ってしまうかもしれないなと、それは危険だなとアタシも思います。
そう言った事を考えると、15歳以下と言う年齢制限は妥当だったんじゃないかな、と。
彼と刑事があげあしの取り合いの様な会話を繰り返し、時折刑事は苛立ち、声を荒げます。
彼もうんざりした表情を見せますが、つかみどころの無い非現実的な美しさの中に「ほんとうのこと」をギュっと抱えて隠している様に見えました。
そんな停滞ムードの充満に観客も少しストレスを感じる頃、追い出されたギィがファイルを持ってやって来ます。
この部屋の何の進展もない36時間の間に、外では捜査が行われていてその結果が届いたのです。
刑事が彼の名前をファイルに見つけました。
「”イーブ”いい名前だな。」
男娼の名はイーブ。
「殺された男は”クロード”。」
イーブはクロードの事をずっと「あの人」と言います。
クロードの名を刑事に自供しなかったのは「クロードの名を言って欲しくないから。」
刑事の口から「クロード」の名が告げられると、イーブは瞳の中に炎が宿ったように反抗的な眼差しを向けます。
あの人の名をお前が呼ぶな、と。
更に捜査の中でクロードの恋人の存在が明らかになります。
身を強張らせるイーブ。
「そんなわけないっ・・・!」
と、震える程動揺します。
恋人が若い男娼に殺されたと聞き彼女は絶叫し続けたと刑事が話している最中も、イーブはクロードに女の恋人が居た事を飲み込めずに驚愕しています。
目を見開き、髪を掻きむしりながら「恋人」と認められる相手が自分以外に居た事に衝撃を受けるイーブ。
そんな彼を見て、イーブとクロードが男娼とその客以上の関係であったこと、イーブが並々ならぬ感情でクロードを想っていたことを知る観客達でありました。
つづく。
取調べを始めてから36時間経つというのに。
その代わり犯行時の足取りやら何やらをうんざりする程何度も喋っている。
喋らされている。
刑事が彼の証言を何度聞いても、信じられる要素が少しも無いから。
相馬さん演ずる男娼は、自分のした事をどう捉えているのか全然分かりませんでした。
「殺しましたが、何か?」ぐらいの態度にすら見える。
おまけに速記係を部屋から追い出してくれないかなどと言い出します。
とても生意気です。
でも、普通の男の子が絶対に知らないであろう「何か」が、彼の佇まいを支配していました。
ただならぬ雰囲気だった。
刑事もそれを感じていたのか、速記係のギィに「コーヒーを買って来てくれ。」とお金を渡し、ギィは男娼を一瞥して部屋から出て行きました。
ちなみのに、この舞台はR-15指定です。
でも別に演技が15禁なのではありませんでした。
問題は台詞です。
男性同士のSEXに関するあからさまな表現や、15歳以下では知ろうはずもない言葉がわんさか出て来ます。
きっと意味が分からないんじゃないかと思います。
色んな言葉をその場で聞いて意味が分からなくて、後でネットで調べられても大人としては
「いやいやいや、ダメだから。まだ知らなくていいから。てか、全然知らなくていいから。」
って思いますしね・・・。
後半30分の男娼による独白がこのお芝居の一番の山場なわけで、台詞もそれまでとは比べ物にならない程の破壊力を持って観客を襲って来るんです。
ハッキリと言ってしまっているのでダイレクトに何をしたかが伝わって来ると言うのも確かですが、この舞台ではそこに主人公の恐怖や混乱やそこになお見え隠れする安らぎを表現しているとアタシは思うんです。
15歳以下にはここを理解する事は難しいんじゃないかなぁ・・・と。
舞台が上演する前のアメーバ特番で、演出の古川貴義さんが15歳と言う線引きを「ちゃんと恋愛を経験した事のある年齢から観て欲しいお芝居だから」と言う様な事を仰っていて、なるほどなぁと思いました。
あからさまな言葉による表現も理由のひとつではあるけれど、この物語が抱える肝は常識や日常と言った現実を超えた「愛情」であるし、そこへたどり着くのは大人でさえかなりのエネルギーを要します。
観る方も。
それ以上に演る方も。
この世に生まれてまだ15年も経っておらず、生活の上での常識やなんかがまだ充分に備わっていないままそれを超えた物を観たり聴いたりしてしまうと、間違った認識で生きて行ってしまうかもしれないなと、それは危険だなとアタシも思います。
そう言った事を考えると、15歳以下と言う年齢制限は妥当だったんじゃないかな、と。
彼と刑事があげあしの取り合いの様な会話を繰り返し、時折刑事は苛立ち、声を荒げます。
彼もうんざりした表情を見せますが、つかみどころの無い非現実的な美しさの中に「ほんとうのこと」をギュっと抱えて隠している様に見えました。
そんな停滞ムードの充満に観客も少しストレスを感じる頃、追い出されたギィがファイルを持ってやって来ます。
この部屋の何の進展もない36時間の間に、外では捜査が行われていてその結果が届いたのです。
刑事が彼の名前をファイルに見つけました。
「”イーブ”いい名前だな。」
男娼の名はイーブ。
「殺された男は”クロード”。」
イーブはクロードの事をずっと「あの人」と言います。
クロードの名を刑事に自供しなかったのは「クロードの名を言って欲しくないから。」
刑事の口から「クロード」の名が告げられると、イーブは瞳の中に炎が宿ったように反抗的な眼差しを向けます。
あの人の名をお前が呼ぶな、と。
更に捜査の中でクロードの恋人の存在が明らかになります。
身を強張らせるイーブ。
「そんなわけないっ・・・!」
と、震える程動揺します。
恋人が若い男娼に殺されたと聞き彼女は絶叫し続けたと刑事が話している最中も、イーブはクロードに女の恋人が居た事を飲み込めずに驚愕しています。
目を見開き、髪を掻きむしりながら「恋人」と認められる相手が自分以外に居た事に衝撃を受けるイーブ。
そんな彼を見て、イーブとクロードが男娼とその客以上の関係であったこと、イーブが並々ならぬ感情でクロードを想っていたことを知る観客達でありました。
つづく。