ブロブロガー@くつログ

Proと呼ばれたい...そして日々悪戦苦闘する
Brofessional な職業人の安息の日誌

◇今こそ吼えよ達磨さん!~高橋財政に学ぶケインズ経済政策論

2010-08-05 | 経済学
> 前回は,昭和初期の井上緊縮財政がテーマだったので,今回は井上蔵相の
> 後を受けて,積極財政に転じたという高橋是清蔵相について,もう少し話
> して下さい。


そう来ると思って,ネットで動画を探していたら,良いのを見つけたのですよ。
「動いている達磨さんの映像」を見るのは,私も初めてだったので,とても
興味深かったです!

> 「達磨さん」て何ですか?


高橋是清蔵相の愛称ですよ。
この動画をみれば,一目了然です。


 URL http://www.youtube.com/watch?v=bOAa-GN1bHc


> なるほど,高橋財政の解説も付いていたので,良く分りました。
> でも,Broの主張する「ケインズの復権」って,世界金融危機の影響が最
> も深刻だった去年あたりから,世界中でブーム化しているみたいですね?


ええ,去年は私も仕事にどっぷり嵌っていて,世情の動きを良く捉まえていな
かったのですが,今調べてみると,世界的にケインズ経済学の見直しの動きが
始まっている様子です。嬉しい傾向です,私としては!


> 高橋是清蔵相は,ケインズ経済学を学んでいた訳ですか?


いえ,高橋蔵相の経済理論は,自身の実務経験から導いた全くの独学ですよ。
まあ,例の2・26事件で,青年将校達に「達磨切り」に斬り殺された際,
寝室の脇に,発刊されたばかりのケインズの「一般理論」の原書が,読みかけ
たまま置いてあったという伝説も伝わっていますがね。

> へ~え,凄いものですね!全くの独学で,あのケインズと同じ見解に達し
> ていた訳ですか!


だからこそ,「日本のケインズ」なのですよ。
そして,浅学の私がケインズの経済学を信用する理由も,むしろ高橋蔵相の
眼力を信じるが故なのです。実務の達人が,自身の観察眼を基礎にして唱え
た理論だと断言して良いのです。それは宗教でも何でもなく,極めて実際的
な,実用の学問なのです。


> なるほどね。Broの主張はよく分りました。
> そう言えば,Broは学生時代「日本のケインジアンの父」である伊東光晴
> 先生の教えを受けたのでしたよね,確か?


まあ,直接「伊東ゼミ」に入れてもらった訳ではないので,ただ先生の講義
を何度か聞いたに過ぎません。とても面白い講義でしたのでね。
でも,やはり数学モデルを駆使して「力ずくで」説得する姿勢の時(時は,
レーガノミクスの台頭期でしたのでサプライサイダーなどは,けちょんけちょん
でした)には,切れ味とともに非常に反感を感じた事も事実です。


> 経済学は,数学モデルを使うべきではないと?

そうではありません。数学モデル自体が悪い訳ではなく,数学モデルの様な
単純化した,抽象化のプロセスによって,捨象されてしまうものへの考慮
重要性を言いたいのです。経済現象は,もっと人間の集団心理が影響してい
る現象なのだと思います。

> 大衆は,「合理的な経済人」ではないと?

今風に言えば,そう言う事なのかもしれません。
人間は感情の動物ですからね。一人一人が合理的に行動する訳ではありません。

> でも,個々人はそうでも,総体としての人間集団は合理的行動になるので
> はないですか?


個々人の感情の違いは,総体としては「誤差」に含まれる,と言う意見ですか?
それでは,株式市場の様な感情的な動きは説明できませんよね!
議会が一法案を否決しただけで,株式市場がパニックになるみたいなね。

> 一昨年の世界金融危機の時の話ですね,それは。
> でも,あの時の株式市場参加者達は,個々のプレイヤーとしては,とても
> 合理的な予測もしくは期待に基づいて行動したのではないですか?

でも総体として,その合理的期待に基づく行動こそが,株式市場を混乱の深淵
に導いた訳で,全体的には自爆的な集団行動になってしまいますよね!


> 全体的には,不合理な行動になってしまう?
> 合成の誤謬ですか??

一種のね。
気体分子の個々の運動法則を合成してみたところで,決して気象現象の解明が
できる訳ではないと云う理屈と同じだと感じます。
気象現象は,やはり高気圧や前線と云ったレベルで観察してみないと,人間に
とって,意味ある理解はできないと思います。

> やはり,複雑系としての独特の構造的理解が必要ですか?
> ミクロ理論とマクロ理論の相克を考える訳ですね,Broは?


おそらく,ミクロ経済理論の主張する均衡点などは,現実世界に実在するもの
などではなく,もっと多元的に,いくつもの均衡点が存在し得て,その間を
往ったり来たりしている様なイメージが,現実世界の現象なのだと感じています。

人間がそれを実証できるのかは,また別の哲学的問題としてですが。

> 実証できないものを仮定するのは,Broらしくないですね!
> それでは,また宗教的な理論に近づいてしまう様な…?


そうですね…
死ぬ前に一度は,とことん突き詰めて考えてみたい気がするのですが…。


> まあ,良いや。
> 高橋積極財政は,現在でも有効ですか,その意見を聞かせて下さい。

社会環境は,あの時代から随分と変わっている訳なので,注意は必要だと思い
ますが,人間や人間集団の心理に由来する基本的な経済法則は,未だ変わって
いないと思います。
従って,ケインズや高橋是清の「経済現象理解のフレームワーク=経済理論」
は,現代でもかなりの部分が有効であり,少し修正すれば大部分が実用的に
利用できると思います。


> 最後はやはり認識論に戻る訳ですね,「歴史認識の相対性理論」の時みたく!

所詮,「経済現象」と云う「もの」が実在している訳ではないから,ですね。
人間の概念的な理解を,相対的に共有しているだけなのです。
客観的認識のためのモデルに過ぎないのです,その本質はね。


> 結局,政治学や経済学の問題って,哲学の問題なのですかねぇ?

その意味では,科学全般そして宗教まで含めて哲学の問題ですよ。
伊東先生の教えで,私が唯一心に留めていたのは「経済学とは規範科学である」
と云う言葉です。当時は理解できていなかったですけどね,その真意を。

> ケインズが「モラルサイエンス」と呼んだものですね。
> 何となく理解できた気がします,今では。



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