理想国家日本の条件 さんより転載です。
◆4月全面スタート「パワハラ防止法」とは
4月から、いわゆる「パワハラ防止法」(正式名称:改正労働施策総合推進法)が全面スタートとなりました。
この法律が始まったのが2020年6月からで、このときは大企業のみが義務の対象でしたが、この春からは中小企業へも対策が義務付けられるようになりました。
今回の法律で定められたパワハラの定義とは、以下の3点です。
(1)優越的な関係を背景とした言動
(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
(3)労働者の就業環境が害される
そして上記(1)から(3)までの要素を全て満たすもの
例えば、みんなの前で「辞めてしまえ!」と怒鳴りつければ、これはパワハラと認定される可能性があります。
怒鳴るという行為は「仕事上必要ない」と考えられ、定義(2)の「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」と判断されてしまうわけです。
また、会社の宴会で若手に余興をやらせて、場は大盛り上がりと思っていたら、実は「あんなことはやりなくなかった」と、後でパワハラと断罪されることもありえます。
これは、上司から「やれ」と言われたら断れないということで、特に定義(1)の「優越的な関係を背景とした言動」にひっかかってくるわけです。
実際に、会社の研修会などで、パワハラと認められた裁判事例は出ており、例えば、2015年に大分地裁は、うさぎの耳型のコスチュームを着させたということで、60代女性に対し、20万円の支払いを命じています。
◆何でもかんでもハラスメントになる時代
ちなみに、「自分は関係ないか」と思う若手の方もいるかもしれませんが、若手の平社員もハラスメントをする可能性があります。
例えば「テクノロジー・ハラスメント」いわゆる「テクハラ」です。
IT機器に弱い目上の先輩たちに「こんな簡単なこともできなくて、よくこれまで仕事ができましたね」などと言ってしまったら、テクハラ認定になりえます。
この他にも、年齢を理由とした嫌がらせをする「エイジ・ハラスメント」(エイハラ)。
恋人がいる人が自分の恋愛や結婚の価値観を人に押し付ける「ラブ・ハラスメント」(ラブハラ)など何でもかんでも「ハラスメント」になる時代です。
◆厚生労働省が示したパワハラの6つの類型
今回のパワハラ防止法に併せて厚生労働省は、以下の通り、パワハラの6つの類型を示しました。
(1)身体的な攻撃
(2)精神的な攻撃
(3)人間関係からの切り離し
(4)過大な要求
(5)過小な要求
(6)個の侵害
こちらは厚生労働省が過去のパワハラ裁判を元に、分類をまとめたものになりますが、非常に広い範囲を対象としているようです。
例えば、専門家は、部下の指導するため机を叩いたり、椅子を蹴ったりすると威嚇をしたということで、(2)の「精神的な攻撃」として、パワハラと認定される可能性があると指摘しています。
また、(6)の「個の侵害」は、要はプライバシーの侵害になるため、部下の女性に対し「子どもはまだ?」と聞くこともNGです。
ちなみに、「30才を過ぎているのに結婚していない人は信用できない」という価値観を披露してもパワハラとなり得ます。
これらのパワハラの多くは、以前から、裁判でパワハラと認定されたことがあるケースです。
◆パワハラ防止法の問題点
今回の法律の肝は、6つの類型が明記されたこと、企業に対して、パワハラ防止の取り組みを義務付けたことです。
罰則はないのですが、違反した場合、勧告が行われ、それを無視すると会社名が公表されてしまいます。
そして、この法律の問題点は、具体的な取り組み違反の内容は、「指針」という形で、すべて政府に丸投げしているところです。
その結果、厚生労働省は就業規則の改定や相談窓口の設置など、具体的には条文には書いていない10種類の取り組みを企業に対して義務付けました。
これは中小企業には重い負担です。
ほかにも男女雇用機会均等法では「セクハラ」が、育児・介護休業法では「マタハラ・ケアハラ」が同じように指針という形で細かく規制されています。
こういう形の規制は気を付けないと「言葉狩り」のように広がる可能性があります。
何がハラスメントになるかを政府が決めるようになっていくと、中国のような個人個人に「社会信用スコア」をつけて、善悪の基準を管理しようとしている全体主義国に近づいていくと言えます。
◆政府の強権が若者のためになるのか
安倍政権以降、自民党は「パワハラ防止法」を初め、日本人の特に若者の雇用環境を改善するため、「働き方改革」を進め、その関連法も制定してきました。
その結果、確かに長時間労働が減り、離職率も数パーセント下がりました。
パワハラ防止の取り組みも着実に進んでいるようで、「リクルートワークス研究所」の調査によれば、4人に1人が新入社員期に職場の上司・先輩から叱責される機会が一度もありませんでした。
20年前は10人に1人だったということですので、ある意味で改革の効果が出ていると言えます。
◆「何が社会人として正しいことなのか」を学ぶことの大切さ
問題は、「それが本当に若者のためになっているのか」ということです。
同調査を見てみると、4人に3人以上の今の若者が「不安だ」とストレスを感じています。
これは2000年代と比べると増加しています。
「ゆるい職場」でそれなりに上手くやれているけれども、このままで本当に大丈夫だろうかという不安感からきているようです。
結局、「働き方改革」で経営者側も委縮してしまって、言うべきことが言えない状況が浮かび上がってくるわけです。
若いうちに「何が社会人として正しいことなのか」を指導されないことは、間違いなく若者のためにならないでしょう。
若い世代にとっては、会社が快適でも、それが本人のためかどうかと、経営者が「従業員の生活や未来に対する責任感を持っているかどうか」は別のものです。
◆仕事は命をかけてやるだけの値打ちがある
大川隆法党総裁は経営者向けの書籍『経営戦略の転換点』で、次のように指摘しています。
・ブラック企業として批判を受けたら、「これは『黒字企業』という意味だな」と思って、「ええ、そのとおりです。うちはブラックです。もう黒字がずっと続いております。『黒字企業』のことを『ブラック企業』というのでしょう?うちはレッド(赤字)企業ではありません。ブラックです。黒字です。」とい言うぐらい、開き直らなくては駄目です。
・長い目で見たら、自分を鍛え上げ、社会の公器、公の器に変えてくれる企業が、本当は、自分をつくってくれ、世の中の役に立つ人間に変えてくれるのだ」と期待しているところもあるのです。
(引用おわり)
ブラック企業と批判されるところに比べて、「自分の会社はすごいホワイトでいいなあ」と思っていても、不況の風で潰れてしまうこともあります。
「仕事をしたい」という気持ちは人間の天分であり、「神様が創造の喜びとして仕事というものを与えたのだ」と言えるし、仕事は命をかけてやるだけの値打ちがあるものです。
◆富を創るために必要な勤勉の精神
岸田総理が「新しい資本主義実現会議」を行っていますが、資本主義には「勤勉の精神」が密接に係わっています。
道徳を語れる企業人が困難に打ち克ち新しい産業群を次々と立ち上げてきました。
日本が誇る大企業の1つであるホンダの創業者、本田宗一郎氏も「1日は24時間ある。1日8時間と考えれば3日かかるが、24時間なら1日でできる」と言っていました。
また、トヨタや松下電器も、創業して一代で大きくなった会社で、今の定義でいう「ブラックな面」がなかったとはいえないと思います。
こうした、勤勉の精神で富を創っていく企業があったからこそ、日本の経済は焼け野原から立ち上がってきたところはあります。
◆減量すべき「パワハラ防止法」
では、企業は従業員に何をやっても許されるのかと言えばそんなことはありません。
人権侵害レベルの行為を止める防波堤になるのは、実は「信仰心」です。
経営者が、神様、仏様の目から見て間違いが無いかどうか、「脚下照顧」していれば、何が正しいかを判断できるし、そこから「徳」というものが生まれてきます。
制度をいじって、魂をなくしていくような国の制度が、資本主義の精神を傷つけ、日本の生き方や考え方を台無しにしていくなら、問題だと思います。
幸福実現党は、政府が企業の仕事を簡単に増やしたり、倫理観に口を挟むような「パワハラ防止法」などは「減量」していくべき法律だと考えます。
執筆者:釈 量子
幸福実現党党首
幸福実現党
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2022年4月5日収録
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倫理観に国家が介入「パワハラ防止法」全面始動で中小企業も対象に。それでも若者の流出は止まらない。管理社会が映し出す日本の未来。(釈量子)【言論チャンネル】