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庭師のブログ (29)「無」

2018年05月13日 | 日記
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(第29話)鈴木大拙記念館

日本の庭園は、枯山水の庭園にみられるように、禅の影響を色濃く受けている。

と聞いて、若かった私は、さっそく本屋で禅の本を買ってきた。
岩波新書の「禅と日本文化」という本である。

著者は、鈴木大拙で、もともとは外国人向きに英語で書かれていたのだが、禅について平易に書かれた本だったので、日本人にも読んでもらおうと、誰かが日本語に訳した本なのであった。

この鈴木大拙記念館に来て知ったのだが、彼の禅や、仏教や、東洋思想についての膨大な著作は、ほとんど英語でかかれていたという。


当時、二本松造園に、H君という、陶芸家をめざす若者が働いていた。H君は、理屈をこねるのが好きで、私が本の受け売りで禅について語ると、すぐに話に乗ってきた。

私は、改まった顔で、H君に問うた

「無とは、ありやなしや」

「ありや」
彼は.即答した。

「何処にありや」
重ねて、問うた。少し考えて、H君は言った。

「無の中に、ありや」

いまだH君の名を聞かないところを見ると、陶芸の道で名を成すのは厳しいのだろう。


さて、金沢が輩出した鈴木大拙師は、たいへん偉い人だということを、あとで知った。

海外での講演も数知れず、英語のできる仏教学者というより、むしろ、日本語もできる学者というくらい英語に堪能だったようだ。

95歳まで、講演で世界を駆け回っておられた由、同じ駆け回ったと言っても、ハワイの庭をちょこちょこっと歩いた凡人庭師の私など、足元の爪先にも及ばない。師は、私にそっと耳打ちされる。

「無」


鈴木大拙館 水鏡の庭

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