88グリーンビートル

活動内容や、案内

庭師のブログ 奄美報歳蘭

2023年03月26日 | 日記
【記事一覧】 記事一覧を見る/ 【庭師のブログ】 庭師のブログを見る

第45話 奄美報歳蘭

ずっとずっと昔のことです。

まだ、庭師でない、ただの若者だった私は、友人のNさんと一緒に、新婚間もないNさんのお兄さんの家を訪ねた時のことです。

Nさんのお兄さんは、パイプオルガン奏者で、色々面白い話を聞きました。なにしろオルガンが大きく、4本の手足をあっちこっち伸ばして演奏するので、タコが躍っているような動きになるのだそうです。

部屋の戸を開けると、狭い敷地にたくさんの鉢が置いてありました。いま思うと蘭の愛好家だったようで、こちらの話も興味深いものでした。

覚えている話が二つあります。

すっと伸びた細い蘭の葉っぱは、草そのものですが、その辺の草と違って、葉は枯れずに7年間ずっとそのままの形でいるのだそうです。

そして、蘭はどこの山にも生えているのですが、稀に斑や縞のような模様が入ったものが見つかるそうです。そういうものは、愛好家が金に糸目をつけず欲しがるので、山に分け入って、珍しい葉の蘭を探すことを生業にしている人たちが江戸の昔からいて、蘭一株と、持山を交換したという話も聞きました。

ことほど左様に、蘭は人を夢中にさせるものだそうです。

さて、湯湾岳の頂上で、知り合ったNさんのお誘いに甘えて、ご自宅で栽培している報歳蘭(ホウサイラン)をみせていただくべく、厚かましく訪ねました。

報歳蘭は、東洋蘭の一種で、日本では屋久島と、ここ奄美大島にだけ自生しているのですが、奄美報歳蘭の方は、30年前に見つかったきりで、今は絶滅したかもしれない、大変貴重な植物です。

その30年前の株を、少しづつ株分けで増やした努力の甲斐あって、今やNさんのご自宅にある、広い温室の中は報歳蘭の鉢でいっぱいになりました。



そうなると愛好家に譲って少し減らしていかないと、置き場がないとNさんは言ってられました。

この珍しい蘭に興味のある方は、ホームページでご覧ください【奄美報歳店/芳】。報歳蘭は、旧正月に花を咲かせ、大変いい香りのする、中国では縁起のいい、高貴な植物だそうです。

【記事一覧】 記事一覧を見る/ 【庭師のブログ】 庭師のブログを見る

奄美の旅 奄美パーク/田中一村美術館

2023年03月18日 | 日記
【記事一覧】 記事一覧を見る/ 【庭師のブログ】 庭師のブログを見る

奄美の旅 奄美パーク





2日目は、空港近くまでもどって、奄美パークに行きました。

奄美パークは、奄美の自然や、歴史、文化などが展示してある施設でした。沖縄とは異なる、独特の文化があったようです。

それはそれとして、私の目当ては、併設されている田中一村美術館です。

この間、原田泰治の美術館を見てきましたが、今回の美術館は想像していた以上に大きく、田中一村という画家は、そんなにすごい人だったのかと思いました。

田中一村は、奄美に移住してから、奄美の景色、主に植物を題材にした絵が多く、東洋のゴーギャンと呼ばれているそうです。

有名なアダンを描いた作品は、本人も気に入り、これは死んで地獄に行ったとき,閻魔大王に見せる絵だから100万円(今でいえば、何千万)でも売らないといって、お金に窮していた生活にもかかわらず、手元に残していました。絵を売るのは、魂を売ることだと言って、他の絵も売らなかったので、折角の才能も世に出ることはなく、本人は貧乏なまま生涯を閉じましたが、おかげで作品はいっぱい残り、美術館に収容されることになりました。

(写真)田中一村は、この小さな家に住み、近くの染め物屋で働きながら絵を描いていました。(傷んだ一部を修理)


美術館の横に、田中一村が好んで描いた植物だけを、集めて植えたエリアがあります。





不思議なことが一つありました。

田中一村は、いろんな植物を題材にしたのに、ヘゴを描いた作品がないのです。アダンや、ソテツは描いたのに、島中いたるところに生えている、いかにも南国を象徴するあの巨大なヘゴを、どうして描かなかったのか、自分なりに検証してみました。

ヘゴは、幹の先端から、大きな葉を10枚くらい出しています。

それを絵にすると、【図1】のようになります。

【図1】 【図2】


しかし、ヘゴを省略したこの葉っぱでは、バナナか、ヤシのような絵になってしまいます。そこで省略を減らして少しリアルに描いたつもりが【図2】です。

かえって、ヘゴとはかけ離れた絵になってしまいました。

【図3】 【図4】


そこで、さらに細かく描いてみました。まだヘゴというより、ゼンマイか、リュウビンタイのようです。もうこれ以上葉を細かく描けないので、一枚の小羽片を棒線に省略して描きました【図4】【図5】。ちょっとヘゴらしくなりました。本当は、もう一段階あるのですが、これ以上は、一枚の絵では描けません。この小さなギザギザ,裂片というのですが、これを描くとなると、田中一村は一本ヘゴを描くのに160万のギザギザを描かなくてはならず、ヘゴを描くのはあきらめたのではないかと、勝手に憶測しまた。

【図5】 右上は小羽片160万のギザギザ(列片)


ほんとうのところは、わかりませんが、チコちゃんなら、知っているかもしれません。

【記事一覧】 記事一覧を見る/ 【庭師のブログ】 庭師のブログを見る








奄美大島の旅 金作原原生林

2023年03月02日 | 日記
【記事一覧】 記事一覧を見る/ 【庭師のブログ】 庭師のブログを見る

奄美の旅 金作原原生林



奄美大島には、ヘゴの自生地があると本で読んでいたので、いつか行きたいと思っていました。
ガイドブックなどによると、当地域に勝手に立ち入ってはいけなくて、必ず資格を持ったガイドを伴うこと、またその場合は人数制限も行うと書いてあります。



世界自然遺産になったので、それはそれで結構なことですが、自由に見てまわれない窮屈さと、観光客の目線で説明を聞かねばならず、それがグループツアーに参加したくない理由の一つです。

また、3時間のコースといっても、参加者のホテルの送迎に結構時間をとられ、現地でも距離にして、1キロか2キロくらいしか歩かないので、一人で行く場合に比べて3倍くらい余分に時間がかかります。

でも、今回の場合、勝手に入ることは許されない地区なので、仕方がないと思っていました。

来てみると、入山規制の理由が分かりました。金作原にいく道路が細くて狭く、すれ違う退避スペースもないので、観光客が勝手にやってきて、行きの車と、戻る車が鉢合わせすると、どうにもならなくなります。

さて、私の関心のあるヘゴですが、ここ奄美のヘゴは、ヒカゲヘゴだけでなく、クロヘゴなど4種類があるそうです。昨年八丈島でみたマルハチヘゴよりも、各段数が多く、ここ金作原だけしか生息していないと思い、写真を撮りまくりました。

シダもたくさん生えていましたが、残念ながら、名前がわかりません。

ガイドさんが立ち止まって、ヘゴの幹を指さして、これは何かわかりますかと、私に尋ねました。

野外で見るのは初めてだけど、シダよりもっと古い原始的な植物で、えーっと、確かマツバ…まで口に出たとき、これはマツバランで、こうして木に着生します、とガイドさんは教えてくれました。

マツバラン(画面中央)

私の知る限りでは、4億年以上昔、藻が川沿いに上ってきて、陸地でコケになり、コケが大きくなってシダのもとになるマツバランが生まれたという風にとらえていました。

だから、根も葉もない、茎だけの変な植物です。いまだこの地上にいるだけでも、偉いと思うのですが、別に特に珍しいわけでもなく、日本でもあちこちで見られそうです。













【記事一覧】 記事一覧を見る/ 【庭師のブログ】 庭師のブログを見る


奄美大島の旅 はじめに

2023年03月02日 | 日記
【記事一覧】 記事一覧を見る/ 【庭師のブログ】 庭師のブログを見る

奄美大島の旅 はじめに



庭師は、秋の「庭の手入れシーズン」を休みなしで働くので、年が明けて仕事を始めるのは、小さな事業所ではどこも1月15日くらいからとしたものです。

私の場合、その期間にガーデニングの勉強を兼ねた旅に出かけます。寒いので、暖かい地方を探すのですが、コロナ禍で、海外へは行けませんので、せいぜい沖縄ということに落ち着きます。

とはいっても、沖縄にはもう10回くらい行きましたので、同じ施設を何度もみています。沖縄もまだ訪れたことのない島がたくさんありますが、ガーデニングの視点からすれば、海と砂浜だけの島では、ただの観光旅行になってしまいます。

そこで、以前から目をつけていたのが、奄美大島です。奄美大島にはまだ行っていないので、もう行くとこころがなくなった時の、最後の候補地として残してありました。

見たい所は、金作原のヒカゲヘゴ自生地と、天才画家の田中一村の美術館の2ケ所しか思い浮かばず、2日もあればいいところです。一応雨を見込んで4日の予定をとりました。

この奄美大島は、島の面積の80%以上が、自然の森で覆われている道もない山岳地帯で、アマミクロウサギなど固有種もたくさん発見されています。探検気分で、山の中に分け入ってみたいところですが、ハブがいるおかげで、自然が手つかずに保護されています。

一昨年、奄美大島は、屋久島、沖縄北部のヤンバル、西表島と一緒に、世界自然遺産に登録されました。今回の奄美行きで、奇しくも4つの地域を全部訪れたことになりました。

【記事一覧】 記事一覧を見る/ 【庭師のブログ】 庭師のブログを見る