にわとりのにわ a hen's little garden

歌うたい時々クラリネット吹きの日高由貴のblog。
ちいさなこころのにわの風景をすこしずつ書きとめていきたいです。

しっぱいの宝箱

2015年03月27日 | 読書ノート
ー江光世/バジル・クリッツァー/岩井俊恵『あなたの想いが届く愛のピアノレッスン』ー
http://hon.gakken.jp/book/2380038200


ピアノ教育者の江光世さん、アレクサンダー・テクニーク教師のバジル・クリッツァーさん、
心理学者の岩井俊恵さんの共著。

ピアノや音楽に限らず、
先生や親も楽しみながら生徒やこどもと
一緒になにかを学ぶためのヒントがたくさんちりばめられた本だと思う。

ピアノを続けること自体が目的なのではなくて、
ほかにやりたいことや向いていることが見つかったらやめてもいい。

でも、その先何をするとしても、ピアノを通して学んだ「規律」(この本の中では、「数ある選択肢のなかで、自分にとってほんとうに大切なものを一番に選択すること」という意味で使われている)は、人生のなかできっと大きな力になる、というメッセージ。

いわゆる「西洋音楽」は数ある音楽のなかのひとつにすぎないし
(「西洋音楽」と一言で言ってもものすごい幅と奥行きがあると思う)、
ひとによって合う楽器や好きな音楽の種類は違う。

だから、なにがなんでもピアノを学ばなければならないとは思わないけれど、
わたしはピアノの音がとても好き。
弾き語りのために、最近20年ぶりぐらいにピアノの練習を再開したのだけれど、
ピアノを弾いていると
パレットに音で色をつくって好きな絵を描いているような気持ちになる。
(とはいえ、技術が追いつかなくて、思ってたのとだいぶ違う、
「変な色」ができてしまうことも多々ありますが・・・笑)

ピアノ教室をひらいておられる松井美香さんの手記も
ご自身の体験から得たことが綴られていて、胸に響く箇所がたくさんある。

本のなかで紹介されていた江光世さんの生徒さん(小学校4年生)の文章があまりにも素敵だったので
備忘のために記録。

わたしもしっぱいの宝箱に宝物をたくさんつくろう(もうずいぶん大きいんですけどね 笑)。


***
しっぱいの宝箱

 わたしの宝物は、いっぱいあります。その中でも大事な物は、しっぱいの宝箱です。しっぱいの宝箱は、次のステップにいけるようにここがだめだったから今度はなおそうねと、ふりかえられるための物だと思います。
 わたしはピアノのコンクールが大好きです。どうしてかというと、自分のいけないところやよいところがわかるし、がんばったことを発表するからです。
 わたしの今年のしっぱいの宝をちょっとしょうかいします。コンクールでソナチネのさい後の音階のところでとまってしまったことです。指番号をまちがえたのがげんいんです。先生に注意されたところです。とてもとてもくやしかったです。たくさんなきました。そしてたくさんはんせいをしました。音読みの時、正しく正かくに楽ふを読むことの大切さを、知りました。
 先生がわたしのしっぱいを聞いて、
 「小さいうちにいっぱいしっぱいをしておくと、大きくなったらそのしっぱいが力になるから」と教えてくれました。わたしはしっぱいの宝箱を心の中に作りました。そしてその中にしっぱいした宝も入れました。先生が、
 「自分がしっぱいをしてかなしい思いをした時、人の気持ちも分かるようになるよ」
と教えてくれました。たくさんはげましてくれました。
 しっぱいの宝箱に入っている宝はそれぞれ形がちがいます。大きなしっぱいだったら大きな形、小さなしっぱいだったら小さな形、べつの音をひいてしまったらへんな形の宝です。わたしはどれも大事です。でも、わたしは、コンクールの時しっぱいの宝箱を、家において行きます。なぜかというと、この前まちがえたから、あそこはぜったいまちがえないようにしようと思い、そこに気をとられてしまうからです。そう思うより、わたしの音楽を聞いてくださる人に、心をこめてひいた方がいいからです。先生が、
「あなたの音楽を聞いてくださる人に、自分の気持ちがつたわることが一番大事ですよ」
と教えてくれました。
 これからも心の中のしっぱいの宝箱を大事にして、かなしい気持ちや、うれしい気持ちや、くしかった気持ちを自分の音楽にしてあらわして、たくさんの曲にちょうせんしてみたいです。(原文ママ)



(江崎光世/バジル・クリッツァー/岩井俊恵『あなたの想いが届く愛のピアノレッスン』学研パブリッシング、2015年、pp.103-104.)

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