そのとき金閣が現れたのである。
雨の京都で訪れた金閣寺は
予想以上の存在感で、
霞む視界に金色の輝きを湛えていた。
25年ぶりに見る金閣。
息を呑んだ。
それは私と、私の志す人生との間に立ちはだかり、
はじめは微細画のように小さかったものが、みるみる大きくなり、
私をかこむ世界の隅々までも埋め、
この世界の寸法をきっちり満たすものになった。
巨大な音楽のように世界を充たし、
その音楽だけでもって、
世界の意味を充足するものになった。
時にはあれほど私を疎外し、
私の外に屹立しているように思われた金閣が、
今完全に私を包み、その構造の内部に私の位置を許していた。
…そのままだ。
溝口の心をわしづかみにし、
その美しさゆえに現実とのはざまに常に介在した
あの金閣が、そのままの姿で、そこに、在った。
…これは現実なのか。
世界を変えるのは、行為ではなく認識だと
溝口は炎燦めく金閣を眺めながら、想った。
…その存在を眼前にしながら、私もまた、
私自身を内包する世界の再認識を迫られている…と想った。
雨の京都で訪れた金閣寺は
予想以上の存在感で、
霞む視界に金色の輝きを湛えていた。
25年ぶりに見る金閣。
息を呑んだ。
それは私と、私の志す人生との間に立ちはだかり、
はじめは微細画のように小さかったものが、みるみる大きくなり、
私をかこむ世界の隅々までも埋め、
この世界の寸法をきっちり満たすものになった。
巨大な音楽のように世界を充たし、
その音楽だけでもって、
世界の意味を充足するものになった。
時にはあれほど私を疎外し、
私の外に屹立しているように思われた金閣が、
今完全に私を包み、その構造の内部に私の位置を許していた。
…そのままだ。
溝口の心をわしづかみにし、
その美しさゆえに現実とのはざまに常に介在した
あの金閣が、そのままの姿で、そこに、在った。
…これは現実なのか。
世界を変えるのは、行為ではなく認識だと
溝口は炎燦めく金閣を眺めながら、想った。
…その存在を眼前にしながら、私もまた、
私自身を内包する世界の再認識を迫られている…と想った。