#photobybozzo

沖縄→東京→竹野と流転する、bozzoの日々。

【bozzo】オンマイクとオフマイク(2)

2010-07-19 | MUSIC
0706-0708 China

マイクを音源に近づけた「オンマイク」と、
マイクを離して録る「オフマイク」。

距離があるから、空気ごと音が録れる。
すると、音が普遍性を持つ。
時代が、宇宙が、全部おさまっているような音…になる。

それが「オフマイク」だと、細野氏は気を吐く。

それはアナログとデジタルの特性を語っている。
…とボクは思った。

新聞紙で読まれる時世と、WEBで取り込む世の流れと、
とらえ方はまったく違っていて、
新聞紙は「オフマイク」で、WEBは「オンマイク」だと考える。

マイクを音源に近づける「オンマイク」は
事件そのものを取り込むには非常に効果的かもしれないが、
マイクを離してとらえる「オフマイク」は
事件の周りにある空気感や普遍性などもしっかり「雑音」として
読者の心に入り込む。

それは、時事漫画だったり、コラムだったり、
社評だったり、読者の声だったりするのかもしれないけど、
そういったさまざまな位相で共時的に発生する思考や論考が、
結構、そのものズバリを言い当てていて、一人合点するのだ。

現代の思考感覚そのものともリンクしている。

書店を賑わすビジネス書や生き方指南などのHowto本が「オンマイク」で、
時代を映したArt展覧会や写真集、老獪な作家の小説などが「オフマイク」。

アナログならではの「雑音」が、次代の符牒を発信している…のではないか。

写真にもそれは当てはまると勝手に思っていて、
解像度と感度ばかりに意識がいったデジタル指向は、
大きく振り子を戻しつつあって、
フィルムならではの空気感や温度、匂いといったものが発せられた写真が、
これからの時代には恰好な表現なのではないか…と、
自身の解像度と感度を上げるべく、日夜研鑽するのだけれど、

たとえば、女性の美意識そのものも変化をしていて、

化粧品会社が煽る「アンチエイジング」や「見た目の美しさ」
…といった「オンマイク」な指向には、実際女性も辟易していて、
「マクロビオティック」や「ヨガ」…といった体内循環、淀みない肉体に
…人生そのものを見た「オフマイク」な美意識を指向していないか…

突き詰めてしまえばその「生命を尊う」指向が、
情報が過剰に供給され、バランスを失った現代社会への警鐘として、
これからは大きなうねりになるのではと、期待を寄せているのだ。

「オンマイク」から「オフマイク」へ。

まさに的を射たり…なキーワードだった。
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【bozzo】オンマイクとオフマイク(1)

2010-07-19 | MUSIC
07月19日。「海の日」の月曜日。
チョー晴天。

東京にもこんな行楽日和があるのか…と
失礼な思考が頭をもたげる。

フローリングが傷ついてきたので
朝からワックス掛けをする。

何かを一掃するかのように
執拗に部屋の埃を拭き取り、
隅から隅までピカピカにした。

ここに越してきて以来の大掃除だった。

      ●

朝日新聞のGLOBEを興味深く読む。

「音探し」の新次元…
目覚まし時計で起き、イヤホンで音楽を聴きながら家を出る。
駅の改札口を「ピッ」と通り、発車メロディーが流れるなか電車に飛び乗る。
私たちの日常は音にあふれている。
音を求めてビジネスが動き、さらに音が作られる。
デジタル時代のいま、新たな音を探す旅が始まっている。

…といった音を巡る特集記事の中で、
細野晴臣がおもしろいことを言っていた。

「昔のアナログ盤レコード時代は、可聴範囲の音楽だった。
 今は周波数の幅が広がったけれど必要のない音も入っている。
 行き過ぎたデジタル処理がなされた音は、耳が拒絶反応をおこす。
 匂いでいうと、“臭い”。
 ジャンコクトーは言ってるんですよ。過剰にいじった音楽は臭い…と」

アナログとデジタルの音の違いに
臭覚を持ってくるところが、わかりやすいと思った。

アナログが音と音を波線でむすぶ山の稜線の情景だとすれば、
デジタルは音と音が林立するコンクリートジャングルの摩天楼。

「木を見て森を見ず」じゃないが、
ディテールや効果にこだわるあまり、
調和や空気感を無視したプロダクトがあまた世に出回る。

JAZZ喫茶megで働いていたころ、
CLIFORD BROWNがマイク1本で録音したレコードを聴いて
鳥肌が立ったことを思い出していた。

奏者が前後することで、
ハーモニーの主旋律がトランペットからサックスへ
移行するような奥行き感があり、度肝抜かれたのだ。

JAZZ喫茶という特殊な音響空間だからこそ、
そのような聴覚体験が出来たのだろうけれど、
奏者がブレスを取る時の急激な鼻息や、
超絶なアドリブで楽器が悲鳴を上げるような指使いの臨場感は、
マイク1本ですべてを取り込もうとする
当時のエンジニアの執念が結実したものだろう。

そんな録音についても細野氏は語っていて、

マイクを音源に近づけた「オンマイク」と、
マイクを離して録る「オフマイク」の違いについて…

「距離があるから、空気ごと音が録れる。
 すると、音が普遍性を持つ。
 時代が、宇宙が、全部おさまっているような音。
 それをボクが今持っている、今の機材で、空気ごと録りたい。
 試みを重ねた時代を通り越して、今のテクノロジーを使って、
 音楽の可能性を引き出していく。
 それをやれば新しい次元が開けるのではないか」

まさに時代は大きく動いていて、
DNAの解析で運命がわかるヒトゲノム的発想が神の領域をも超え、
人間の寿命を2倍にも3倍にもするのではないか…という科学至上主義や、
build&destroyで開発を繰り返せば、経済は右肩上がりに発展し、
金が金を生む利子で雪だるま式に富は増える…という経済至上主義に、
頭打ちを感じている現代人が、

人間本来の感覚を研ぎ澄まそうと
五感の恢復にベクトルを向けているのに
寄り添うようなセリフだと思った。



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