初めての別役実作品でしたが、鋭く現代を衝いた戯曲でした。
「一軒の家・一本の樹・一人の息子」とは、かつての英国における人生観。
まともな職につき、まともに稼いで
一軒の家を建て、一本の樹を育み、一人の息子を得るのが、“満ち足りた人生”だと。
そのオルタナティブを示した作品…というのが、webに載ってたこの作品の批評なのだけど、
いやいや、ボクにはもっともっと根源的な問いかけが、別役さんにはあると映った。
公園のベンチで出会う男と女。
結婚相談所で紹介された男と会う予定のその女を、
手を変え品を変え、やたら引き留める男。
事情を伺うと、購入したはずの建売住宅が騙されたのか、
他の人の手に渡ってしまっていた…と。
すでに引っ越しの手はず整え、家族も今からこちらにやってくる。
…と語っているうちに運送屋が荷物を運び込み、男の妻と父が姿を現す。
あれよあれよと、公園が新居の佇まい。
荷物が広げられ、お茶が振る舞われ、結婚相手の男も合流して、楽しいひとときに。
ワイワイガヤガヤと騒いでいたら、通報されたのか、警察がやってくる。
「ここは公園だから、すぐさま退去しなさい!」
男はムキになって「邪魔しないでくれ!」と逆ギレ。
「オレの幸せを邪魔しないでくれ!」と。
なにかがちょっとずつズレている。
妻が携えてきた「よしこ」と呼ばれる子供もただの大きな人形だし、
公園で団欒が始まり、建売住宅が手元にない話がうやむやになる辺りも、
なにか決定的なものから逃げているように見える。
そう考えると、この戯曲は始まりから終わりまで結論をはぐらかしながら話が進んでいる。
常に論旨を外し、話題をすり替えながら、取り留めない会話が進行していく。
…そう、これはまさしく敗戦後繰り返されてきた日本の姿勢そのもの。
“敗戦”を“終戦”にすり替え、“責任”を“復興”にすり替え、
“国体”を“経済”にすり替えてきた戦後70年の日本の歩みそのものなのだ。
欺瞞を欺瞞で刷新し、看板を貼り替えることで常に前進してきた、パチンコ屋のような体たらく。
そこに大きく横たわる虚空の暗がりに目を背けたまま、いつまでも虚勢を張り続けるニッポン。
「オレの幸せを邪魔しないでくれ!」の叫びは、
正論のようでいて、まったくの根拠を欠いた戯言でしかない…。
そのことをこの戯曲は見事に晒している。
これだけほつれ、無様な肢体を剥き出しにしている…というのに、
いまだ背骨を糺そうとしない、今のこの国のミライを暗示している、とボクは思いましたよ。
そこに着目した演出家の波田野さん、流石です。
「一軒の家・一本の樹・一人の息子」とは、かつての英国における人生観。
まともな職につき、まともに稼いで
一軒の家を建て、一本の樹を育み、一人の息子を得るのが、“満ち足りた人生”だと。
そのオルタナティブを示した作品…というのが、webに載ってたこの作品の批評なのだけど、
いやいや、ボクにはもっともっと根源的な問いかけが、別役さんにはあると映った。
公園のベンチで出会う男と女。
結婚相談所で紹介された男と会う予定のその女を、
手を変え品を変え、やたら引き留める男。
事情を伺うと、購入したはずの建売住宅が騙されたのか、
他の人の手に渡ってしまっていた…と。
すでに引っ越しの手はず整え、家族も今からこちらにやってくる。
…と語っているうちに運送屋が荷物を運び込み、男の妻と父が姿を現す。
あれよあれよと、公園が新居の佇まい。
荷物が広げられ、お茶が振る舞われ、結婚相手の男も合流して、楽しいひとときに。
ワイワイガヤガヤと騒いでいたら、通報されたのか、警察がやってくる。
「ここは公園だから、すぐさま退去しなさい!」
男はムキになって「邪魔しないでくれ!」と逆ギレ。
「オレの幸せを邪魔しないでくれ!」と。
なにかがちょっとずつズレている。
妻が携えてきた「よしこ」と呼ばれる子供もただの大きな人形だし、
公園で団欒が始まり、建売住宅が手元にない話がうやむやになる辺りも、
なにか決定的なものから逃げているように見える。
そう考えると、この戯曲は始まりから終わりまで結論をはぐらかしながら話が進んでいる。
常に論旨を外し、話題をすり替えながら、取り留めない会話が進行していく。
…そう、これはまさしく敗戦後繰り返されてきた日本の姿勢そのもの。
“敗戦”を“終戦”にすり替え、“責任”を“復興”にすり替え、
“国体”を“経済”にすり替えてきた戦後70年の日本の歩みそのものなのだ。
欺瞞を欺瞞で刷新し、看板を貼り替えることで常に前進してきた、パチンコ屋のような体たらく。
そこに大きく横たわる虚空の暗がりに目を背けたまま、いつまでも虚勢を張り続けるニッポン。
「オレの幸せを邪魔しないでくれ!」の叫びは、
正論のようでいて、まったくの根拠を欠いた戯言でしかない…。
そのことをこの戯曲は見事に晒している。
これだけほつれ、無様な肢体を剥き出しにしている…というのに、
いまだ背骨を糺そうとしない、今のこの国のミライを暗示している、とボクは思いましたよ。
そこに着目した演出家の波田野さん、流石です。
820製作所『一軒の家・一本の樹・一人の息子』@RAFT
作/別役実
演出/波田野 淳紘
写真UPしました〜!
【on_Flickr】0304_ONE_820
出演/今井勝法(theater 045 syndicate)、洞口加奈、大谷由梨、佐々木覚、
千葉恵佑(ひるくらいむノ快車)、森悠輔、加藤好昭、印田彩希子
人形制作/荒井るり子
照明/伊藤幸江
宣伝美術/来住真太
共催/820製作所、RAFT
作/別役実
演出/波田野 淳紘
写真UPしました〜!
【on_Flickr】0304_ONE_820
出演/今井勝法(theater 045 syndicate)、洞口加奈、大谷由梨、佐々木覚、
千葉恵佑(ひるくらいむノ快車)、森悠輔、加藤好昭、印田彩希子
人形制作/荒井るり子
照明/伊藤幸江
宣伝美術/来住真太
共催/820製作所、RAFT
820製作所『一軒の家・一本の樹・一人の息子』@RAFT
作/別役実
演出/波田野 淳紘
写真UPしました〜!
【on_Flickr】0304_ONE_820
出演/今井勝法(theater 045 syndicate)、洞口加奈、大谷由梨、佐々木覚、
千葉恵佑(ひるくらいむノ快車)、森悠輔、加藤好昭、印田彩希子
人形制作/荒井るり子
照明/伊藤幸江
宣伝美術/来住真太
共催/820製作所、RAFT
作/別役実
演出/波田野 淳紘
写真UPしました〜!
【on_Flickr】0304_ONE_820
出演/今井勝法(theater 045 syndicate)、洞口加奈、大谷由梨、佐々木覚、
千葉恵佑(ひるくらいむノ快車)、森悠輔、加藤好昭、印田彩希子
人形制作/荒井るり子
照明/伊藤幸江
宣伝美術/来住真太
共催/820製作所、RAFT