この機械PCAポンプっていうのですが・・・これをご存じの方は少ないと思います。あまり普及しているとは言えませんから。
PCAというのは、patient controlled analgesiaの略で、日本語では患者自己調節鎮痛法と訳されます。つまり、がんなどで痛みを感じている患者さん自身が、自分の痛みに応じて、自分で痛み止めの量を調節することが出来るシステムです。
PCAポンプは、それの主役で、痛み止め(麻薬中心)をゆっくり一定量 体の中に送り出し、患者さんが「痛い」と感じた時に押せるボタンがあって、それを押すと一定量追加の薬剤が出て、突出した痛みを抑えるというシステムです。
上記は、テルモの電動タイプで、操作が簡単で、私は愛用しています。電動タイプにはスミス社のものもありますが、相当にマニアックです。
うちは、連携型の強化型在宅療養支援診療所という立場にあるのですが、同様に在宅医療に取り組んでいる連携先の4医院は、テルモの電動タイプか、または使い捨てバルーンタイプのPCAポンプを使われています。両方使われているところはありますが、PCAポンプを使わないところは私の仲間では、ないです。
使い捨て(ディスポーザブル)のPCAポンプは、膨らんだ風船が縮んでいく力を利用して、電動ポンプと同様の働きをします。
各社がいろいろな規格のものを出していて、選択肢が多くて迷います。テルモの電動ポンプは、5mlまたは10mlのシリンジしか使えませんが、ディスポタイプは300mlくらいまでいろいろなタンク容量があって、安定した患者さんには長期使用が出来たりします。
電動ではないので、電源の無い所でも使えます。使い捨てなこともあって、プライミング(初期設定)には時間を要しますが、患者さんの使用法は割と簡単です。私は、シュアフューザーが使い慣れていて 良いと思うのですが・・・ バクスターが良いと言う方が周囲では多いです。
こんなやつです。
いずれにせよ、在宅医療に少し深く首を突っ込んでいる診療所は、PCAポンプを使っています。がんのちょっと厄介な疼痛管理には欠かせないからです。
これらのポンプに、麻薬性の鎮痛剤を詰めます。
代表格がこれです。
PCAポンプと麻薬(オピオイド)を使うと、魔法使いになれるという話でしたね
鎮痛目的の麻薬投与は、経口投与が基本です。
基本的な投与量を決めて、定時に服用していただき、それでも抑えられない突出した痛みには即効性の痛み止めをレスキューと称して臨時投与します。
痛み止めの投与経路は、経口、座薬、貼り薬、口腔内崩壊錠などいろいろあって使い方もバリエーションに富んでいるのですが・・・
それらを使い分けても症状コントロールが困難になった時に登場してくるのがPCAポンプです。
それまで、一日に数回痛み止めを定時に服用し、突出痛が出たときには座薬を入れ、それらの痛み止めの副作用を防止するために吐き気止めや下剤を多量に服用していたのが、
PCAポンプに切り替えたら、痛みはほぼうまくコントロールできるようになり、副作用も軽減、
「なんか、魔法みたいやで、先生」となることも多いのです。
良いことばかりではないのは当然の話です。一番効力の早い経静脈でのPCAポンプ使用には私はあまり賛成しません。
中心静脈栄養路(IVH)にスミスのPCAポンプをつないで、昼と夜の麻薬量を調整して・・・・などという患者の在宅医になってくれないかと言われたことがあったのですが・・・
麻薬系を静脈から皮下に移してくれたら診ます。と言ったら、却下されました。
PCAポンプを押したときに、スーっと薬が入っていくのが分かるのが良いのだそうです・・・・それは中毒じゃないかと思いましたが・・・・
魔法使いか、中毒患者製造か・・・難しいところはありますが、治療の選択肢として、非常に有力で、うまくいけば非常に喜ばれます。
在宅での癌治療、痛み止めの最終兵器?(そのあとにはセデーション:意識を落とす)という方法がありますね。)PCAポンプ。
癌の痛みコントロールがうまくいかない様だったら、入院中でも在宅でも、PCAポンプは使えます。
もっと普及するといいのになぁと、思っています。