透明な風景の中を体がすり抜けていくような、不思議な感覚だった。
息子と手をつないで、なんだか2人で未知の森林へと入っていくような気分でもあった。
◇
冷え込みがきつかったせいか、今朝、まち全体が濃霧に覆われていた。幼稚園の敷地内の林にもガスが張っていた。
子どものころにも経験したことがある、濃霧のまち。
幼稚園の玄関先で車から降りて、園舎まで2人で歩いた距離はわずか50メートルほど。しかし、楽しかった。「冒険」だった。
◇
うれしかったのは、息子が怖がらずに、逆にランランと目を輝かせながら進んで行ったことだ。
◇
怖いことに対しては怖いと認知しなくてはいけない。が、未知なるものに際して、わくわくしているのは生き物として、実に頼もしい。とも思う。
◇
延長保育では、2歳上の「コウちゃん」にやられっぱなしである。同い年のクラスでも「トワくん」に押され気味らしい。
私は、幼稚園時代は周りが嫌がるほどに威張っていたらしいから、息子を見るとなんだか「大丈夫かなぁ」と思っていた。
しかし、今朝の息子の未知へと進む姿を見て、これまでのところ順調に育っていると確信した。
◇
翻って、自分はどうか。
今夜、後輩と安い居酒屋で晩酌した。仕事仲間と晩酌できる時間帯に仕事を終えるのは久しぶりだ。後輩の不満を聞いて、自分の意見を具して、そこそこいい気分で宴を閉めた。そのあと、帰りの道すがら、かっての「兄貴分」に電話をした。
「スキーの指導員を目指して、泊り込みの合宿中」とのこと。
居酒屋と不動産屋を経営している。バイクはだれもが認めるとばしや。一方で基本操作も白バイの人くらいスゴイ。カヌーも人命救助するほどの腕。
「スキーばっかし、みんなより下手だからよぉ」
いや、充分にうまいって。
◇
楽しんでいるよな。
おれはといえば、日々の雑事をあたかも人生の一大事のように捉えてうろたえる「組織」の人々の1人として、なんとなく日々を費やしている。
空ろである。そもそも、もったいない。
◇
息子よ、きょうはわくわくした目を見せてくれてありがとう。
お父さん、虚飾な守りの人生、やめるよ。自分でもいやだったから。
息子と手をつないで、なんだか2人で未知の森林へと入っていくような気分でもあった。
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冷え込みがきつかったせいか、今朝、まち全体が濃霧に覆われていた。幼稚園の敷地内の林にもガスが張っていた。
子どものころにも経験したことがある、濃霧のまち。
幼稚園の玄関先で車から降りて、園舎まで2人で歩いた距離はわずか50メートルほど。しかし、楽しかった。「冒険」だった。
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うれしかったのは、息子が怖がらずに、逆にランランと目を輝かせながら進んで行ったことだ。
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怖いことに対しては怖いと認知しなくてはいけない。が、未知なるものに際して、わくわくしているのは生き物として、実に頼もしい。とも思う。
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延長保育では、2歳上の「コウちゃん」にやられっぱなしである。同い年のクラスでも「トワくん」に押され気味らしい。
私は、幼稚園時代は周りが嫌がるほどに威張っていたらしいから、息子を見るとなんだか「大丈夫かなぁ」と思っていた。
しかし、今朝の息子の未知へと進む姿を見て、これまでのところ順調に育っていると確信した。
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翻って、自分はどうか。
今夜、後輩と安い居酒屋で晩酌した。仕事仲間と晩酌できる時間帯に仕事を終えるのは久しぶりだ。後輩の不満を聞いて、自分の意見を具して、そこそこいい気分で宴を閉めた。そのあと、帰りの道すがら、かっての「兄貴分」に電話をした。
「スキーの指導員を目指して、泊り込みの合宿中」とのこと。
居酒屋と不動産屋を経営している。バイクはだれもが認めるとばしや。一方で基本操作も白バイの人くらいスゴイ。カヌーも人命救助するほどの腕。
「スキーばっかし、みんなより下手だからよぉ」
いや、充分にうまいって。
◇
楽しんでいるよな。
おれはといえば、日々の雑事をあたかも人生の一大事のように捉えてうろたえる「組織」の人々の1人として、なんとなく日々を費やしている。
空ろである。そもそも、もったいない。
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息子よ、きょうはわくわくした目を見せてくれてありがとう。
お父さん、虚飾な守りの人生、やめるよ。自分でもいやだったから。
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