今年は桜も咲くのが早かったね
次から次へと
咲く準備をしている花々たちも
今年は急ぎあし
いつも遅咲きのはずが
うちのヤマツツジさえも
蕾が顔を出した
手のひらを合わせたように
ツンッとして出してきた
美しく咲きますように
緑が眩しくて
涙が流れていく
そう
緑がまぶしすぎて‥
去年は
その蕾を見てはしゃぐ人がいたんだ
また
季節が変われば
新しい思い出も芽を出していく
傷つけられた心は
どこに置けばいいのだろう
こだまする
罵倒された言葉
繰り返し
繰り返し
切なくて
自分の腕を掴んでみたら
思ったより
この手のひらが冷たいことに
はっとした
温かな手のはずが
言葉と同じに凍てついていたから
腕から離して
思わず握りしめてた
親って
なんて
つまらない生き物なんだろう
自分の親を空に送ったら
私が親だと
指を刺された
胸を刺された
私は
そんな言葉を
自分の親には決して言わなかったよ
そんなひどい言葉を
決して言わなかったでしょう
暗くなっていく空に
聞いてみたくて目を閉じた
あれこれ
言ってみたところで
届かない気持ちを
どうすることも出来なくて
最後には
私の心なんてどうでもいい
最後には
私の思いなんて届かなくていい
どうか
どうか
元気でいて‥
自分の足でしっかり歩いて‥
そうして
手を合わすことしかできないことに気づいた
大切にしていた母の紫陽花を
枯らしてしまった
あの時
花の世話をできるほどの
余裕がなかったと言えば
綺麗ごとになるかもしれないけど
もしかしたら
母が一緒に連れて行ってしまったと
そう思えば気持ちも
少しは楽にはなるけれど
新しい紫陽花を買ってきたよ
大好きな紫色の紫陽花だよ
もう
鉢植えのままにはしないでおくね
私だって
どうなるかわかんないから
土に私の気持ちも込めて
託して植えることにするから
いつの日か娘が
その大きくなった紫陽花を見て
何を思うんだろう
私の気持ちのまま
受け取るなんてこと
有りはしないだろう
気づいてくれるまで
毎年咲き続けてくれるように
願いをこめながら植えるから
綺麗に咲き誇ってね
紫陽花の名前は『藍姫』
嵐がわかっていて
出掛けるのも悪くない
大人になって
もう雨に打たれることはなくなった
けれど
雨や風やと
両手を上げて
打たれ
吹かれたあの幼い日々
その時だけのために生きていて
その時の気持ちだけで動いていた
体に浴びる雨は冷たくはなかった
手足に当たる風は
今にも何処かへ連れて行ってくれそうだった
遠く
遠く
風に吹かれて
飛んで行きそうになのに
楽しくて仕方がなかった
余計な思考が邪魔をして
不器用なまま
大人になったけど
ただ
静かに見ている方を選んだだけ
また
雨に打たれれば
幼い頃に帰れるかしら
また
風に吹かれれば
飛んで行ってしまいそうに感じるのかしら
あの雲はどこへいくのかしら
あれは、魚のような雲だねって
子供のように聞いても
雲を見もせずに
『何を言ってるのかコイツは』
って
私の見たものが
その人の目には映らない
生ぬるい風が
一気に乾いた風になった
私はまた
静かに見ている方を選んだ
ひとり
バーにいるんだと
握っているスマホは
どんな色なのか
私は知らない
カウンターにでも
腰掛けて
癒されたい言葉を
探していたんでしょ
もう
現世では会えないからと
不思議な言葉を綴るけれど
あなたには私が必要で
私にもあなたが必要で
しかし
置かれた立場がちがうから
離れたままでも
繋がっているんだと言って
私を驚かせてしまう
外は嵐だけど
静かな場所にいる割に
あなたの心は濡れねずみのようだと思ったよ
あなたは強いけど
あなたは儚さを知っている
あなたは凛としてるけど
あなたは無邪気で可愛いことぐらい
ちゃんとお見通しだから
どうか
私の前ではありのままで
剣先を収めて
静かに目を閉じればいい
そうして
夜は更けていく
私は変わらず
同じ場所にいるから
また
お月様の話でもしましょう
ああ、そうだね
また、新月が来たよ
新しい扉が開かれて
力強い追い風が吹く
フレッシュな気持ちで
人と出逢えそうな
『牡羊座の新月』