村上春樹とユニクロのコラボTシャツが発売されたと聞いた。
けれど、メンズである。
大好きな『スプートニクの恋人』のTシャツは、いかにも男っぽい。
けれど、こんなに可愛いのがあったのだ。
Sサイズでも随分大きい。
XSは瞬殺で売り切れたらしい。ww
いーーでしょーーーー♪
胸にポチッと乗っているのは、これもコラボ商品のピンバッジである。
ところで、村上春樹ならぬ、文豪某S氏による『うめさん連絡ください物語』を入手した。
どういうわけか、某泡沫ブログのコメント欄に連載されていたのである。ww
「あいつらが来た。この街には、長く居過ぎたようだね。潮時だよ」
そう言って、ご主人様は、しゃんと背筋を伸ばし、振り向きざまに、私に聞いた。「うめ、お前も行くかい?」
私が歩く。とぼとぼと。ご主人様が歩く。ほとほとと。まだ肌寒い春の風が、ふたりの背中を撫でていく。私は、ご主人様の、ちょっとくたびれた白い尻尾がゆらゆら揺れるのを、ただぼんやりと眺めていた。
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「ふん、どうやらひと足遅かったようだね」
「でも、確かにあいつらはこの街にいたんだよ。見てごらん、食べるのも切り詰めて息をひそめて暮らしていたんだよ。私の兄さんは、ガリガリだったようだ。今となっては、私たちの鼻をもってしても、残り香を追うのは難しそうだ。この街には人が多過ぎる。はな、おまえはおまえの姉さんの気配を感じないかい?」
「ああ、あそこに、こちらをじっと見つめる女がいるね。もしかしたら、あいつらを知ってるのかも知れない。はな、おまえは、あの女をどう見極める?」
ご主人様がそう言うので、私がそちらに目をやると、その人はあわてて目をそらし、そそくさと逃げるように去って行った。
「ああ、そうだ。はな、おまえには今日からうめを名乗ってもらうよ」どうやらご主人様は、ここにしばらく留まって、あいつらの手掛かりを探るおつもりのようだ。
「あいつらは、この街の地下でも、せっせと同志を集めていたようだね。見てご覧、この張り紙を。全部暗号だ」
「アニソンに、黛ジュンに、ルマンに…ミー?何だいこりゃ。こいつらを、一から解読しなきゃならないのかい。まったく頭が痛くなるよ」
「ああそうだ、もう、うめさんはこの家に戻って来たんだから、これは変えておかないとね。うん、今度ははなさんだ。はなさんにしよう」
薄く笑って呟きながら、ご主人様が白い尻尾を一振りすると、張り紙の赤文字がふんわりと、はなさんに変わった。
「ん?あれは、この前ここで私たちを見ていた女だね。どうやらここに興味があるらしい。もしかして、私たちが入れ替わったのに気付いているのかい?うめ、あの女の正体を探るんだよ。我々の敵なのか、味方なのか?もし使えそうなら、上手いことこちらに引き込んで、役に立ってもらおうじゃないか」
「まったく、あいつが私と同じ胎から生まれて来たなんて、信じられるかい?例え血を分けた兄妹だとしても、あいつらの変な理想なんて、私は認めないよ。絶対にね。今まで何百年、何千年とかけて作り上げた、この世で一番賢くて可愛くて、役に立つのは犬だという事実。これは不変不動なんだよ。犬と猫の共存なんて有り得ない。猫なんて、あんな怠け者の役立たずな一族が、我々に台頭するなんて、絶対にあっちゃならないんだ」
「さあ、忙しくなるよ!うめ、おまえには可哀想だが、双子の情は捨ててもらうよ。この街でも、私の腕となり、足となって、存分に働いてもらうからね!」
ふと見ると、格子戸の『はなさん御連絡下さい』の張り紙が、何事もなかったかのように、早春の日差しに照らされていた。
続く・・・かどうかは不明だそうで。ww