港町のカフェテリア 『Sentimiento-Cinema』


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シネマ・ポップス…ときどきイラスト

『デレーチョ・ヴィエホ』 ファン・ダリエンソ楽団

2017-01-25 17:16:41 | アルゼンチンタンゴ

”Derecho Viejo” Juan D'Arienzo



この曲は1916年にエドゥアルド・アローラスが作曲、ガブリエル・クラウシが作詞した古典の名曲です。
タイトルの”Derecho Viejo”は直訳すれば「古い法律」なのですが、転じて「一本気な男」といったところでしょうか。邦題としては
『わき目もふらず』とか『頑固者の爺さん』などと訳されています。
歌詞は場末の酒場で飲みながら身の上話を語る形式をとった長い物語になっています。内容としては、惚れた女房に逃げられ
残された娘も亡くなってしまい、恨みつらみの末にやっと出会えた彼女をナイフで刺す、という昔風の刃傷沙汰物語です。
『センチミェント・ガウチョ』と相通じる場末のタンゴ酒場の本質がよく表れて哀感がにじみ出る逸品ですが、現在では唄われる
ことはなくダンス向きの演奏曲となっています。

↓はファン・ダリエンソ楽団の『デレーチョ・ヴィエホ』 YOUTUBEより



『君を待つ間』 カルロス・ディ・サルリ楽団

2017-01-24 18:15:29 | アルゼンチンタンゴ

”Fumando Espero” Carlos Di Sarli



原曲はファン・ヴィラドマット・マサナスが作曲しフェリスク・ガルソが作詞した楽曲で、1922年にバルセロナ小劇場で初演された
スペイン歌謡です。これが「メヒカンズ」というグループによってアルゼンチンに持ち込まれ、1927年にロシータ・キロガが録音、
またロベルト・フィルポが器楽曲として演奏するなどでタンゴとして定着しました。
タイトルの ”フマンド・エスペロ” は「タバコを吸いながら君を待つ」という意味で、歌詞の内容は「タバコをふかすことは官能的で
極上の喜び、タバコをふかしながら恋しい女を待っている」で始まり「タバコの煙に包まれると人生が星のように瞬く、澄み切った
光で明るく輝く星のように」と綴り終えていて、これでもかとばかりにタバコの効用を大いに讃歌しています。
映画での喫煙シーンまでNGとなった現在では考えられない内容ですが、タンゴとしては珍しく幸せを歌った一曲です。

Fumar es un placer
genial, sensual.
Fumando espero
a la mujer que quiero,
Tras los cristales
de alegres ventanales.
Y mientras fumo,
mi vida no consumo
porque flotando el humo
me suelo adormecer...

↓はカルロス・ディ・サルリ楽団の『君を待つ間』 YOUTUBEより

ディ・サルリとしては珍しい歌唱付きとなっています。


『スール(南)』 アニバル・トロイロ楽団

2017-01-23 11:43:59 | アルゼンチンタンゴ

”Sur” Anibal Troilo



この曲は1948年にアニバル・トロイロが作曲しオメロ・マンシが作詞した当時としては画期的な近代タンゴです。
タイトルの「スール」は、ブエノスアイレスの南地区を指しており、リアチェロ川界隈のポンページャ地区を詩的に綴りながら
失せた恋を重ねるという下町抒情歌です。
「古いサンファンとボエド通り、一面の空、ポンページャ、」、「スール、その先に酒場の灯り」、そして一つの恋が物語終わり
「死んでしまった苦き夢」とノスタルジックに結んでいます。

San-Juan y Boedo antigua, y todo el cielo,
Pompeya y más allá la inundación.
Tu melena de novia en el recuerdo
y tu nombre florando en el adiós.
La esquina del herrero, barro y pampa,
tu casa, tu vereda y el zanjón,
y un perfume de yuyos y de alfalfa
que me llena de nuevo el corazón.

↓はアニバル・トロイロ楽団の『スール』 YOUTUBEより

唄っているのはアニバル・トロイロ楽団の専属歌手であったロベルト・ゴジェネチです。

『ソーロ・グリス(銀狐)』 キンテート・ピリンチョ

2017-01-22 15:06:33 | アルゼンチンタンゴ

”Zorro gris” Quinteto Pirincho



この曲は1920年にラファエル・トゥエゴルスが電車の中で作曲したといわれています。やがて曲を整えてトゥエゴルスの
オルケスタがカフェ「ラ・パロマ」で初演し、のちに人気作詞家のフランシスコ・ガルシーア・ヒメネスが歌詞をつけました。
タイトルの『ソーロ・グリス』は銀狐という意味ですが、貴婦人や高級ホステスが首に巻く銀狐の毛皮のことを指しています。
歌詞の内容は、キャバレー「アルメノンヴィル」で人気者のホステスが虚栄の我が身に惨めさを覚えて銀狐の襟巻を涙で
濡らし貧しくても幸せだった過去を顧みるというものです。
当時はカルロス・ガルデルなども唄っていましたが、現在では唄われることもなくダンス向きの楽曲として重宝されています。

↓はキンテート・ピリンチョの『ソーロ・グリス』 YOUTUBEより


『ノスタルヒアス』 フランシスコ・ロムート楽団

2017-01-21 17:37:57 | アルゼンチンタンゴ

”Nostalgias” Francisco Lomuto



この曲は1936年にタンゴ喜劇のためにドミンゴ・エンリケ・カディカモが作詞、フアン・カルロス・コビアンが作曲したものですが、
演目としては取り上げられなかったようです。
作曲者のコビアンは1920年代から品格のあるメロディーを多く作曲していて、上流社会のタンゴ(エル・アリストクラタ・デル・タンゴ)
と称されています。
また、日本では『郷愁』というタイトルになっていますが、歌詞の内容としては熱く燃えた恋を忘れようと苦悩する姿を綴っており、
淋しさから故郷に寄せる思い という意味の『郷愁』とは違うようです。
チャルロやホルヘ・ヴィダルなどの歌唱も高名ですが、この曲の名盤といえばやはりフランシスコ・ロムートでしょう。

Nostalgias
de escuchar su risa loca
y sentir junto a mi boca,
como un fuego, su respiración.
Angustia
de sentirme abandonado,
de pensar que otro, a sulado.
pronto, pronto le hablará de amor.

↓はフランシスコ・ロムート楽団の『ノスタルヒアス』 YOUTUBEより

唄っているのはホセ・オマールです。