刑務所

　山口県出身のお客さんが、日本で初めて出来た半官半民の美祢刑務所の話をした。

　客F「美祢刑務所はキレイでホテルみたいですよ」
　私 「エエなあ、俺とこの家は築33年やからガタがきてるから移りたいわ」
　客T「それに刑務所は、お正月の3が日は尾頭付きのおせちが出るもんな」
　私 「俺とこより待遇エエやん。そんなんやったら刑務所に入りたがる人間が続出するで」
　客T「年末に犯罪が増えるのんはそれのせいやで。誰かてエエ正月を迎えたいもんなあ」
　客F「栄養士も付いてるので、普通の家庭の食事よりマシですよ」
　私 「仕事探しにハローワークに行く必要ない。失業の心配も無いし、残業もあれへん」
　客T「きっちり休みもあるしなあ」
　私 「有給休暇はあるのかな？」
　客T「それは無いやろ」
　客F「とにかく衣食住は充実してますねえ」
　客T「それと娯楽がある。歌手も慰問に来るので、ナマの歌手がタダで見られるわ」
　私 「俺、コンサート行った事が無いわ。まじめに働いてる俺よりもエエ生活してるやん」
　客T「味を占めた受刑者の再犯が増えるのんと違(チャ)うか？そこが心配やなあ」
　客F「美祢刑務所は初犯で、かつ色々な条件を満たした者しか入れないらしいですよ」
　私 「堺の刑務所は男だけで和歌山は女子だけやろ。そこはどっちが入ってるのん？」
　客F「美祢刑務所は男子も女子も入ってますよ」
　私 「ほんだら男女共学かい」
　客T「学校と違う！」
　私 「色々聞いたら、そこの刑務所がムショーに入りたなってきたわ」

　一句：居心地良い　ムショでは増える　入所希望
　謎かけ：刑務所とかけて、文字や文章の誤りを正す箇所と解く。どちらも(更生・校正)をするとこ

芳名(ホウメイ)帳

　2週間程前に60歳の男性客Kさんと40過ぎの女性客M子ちゃんが来店した時に、M子ちゃんの小学3年生の息子にどんな塾が良いかと尋ねられたので習字が良い勧めた。
　というのは私は字を書くのが苦手で、Kさんも「俺も字が下手でずっと悩みの種やねん」と同調した。
　「字は一生モノや」「字が上手やったら賢く見えるし、賢くても下手やったら賢く見えへん」「葉書の宛名書きがどうしても歪んでしまう」などの話になった。
　特に結婚式や葬式で芳名帳に記帳する時に筆で書くとより一層下手になり、毎回、嫌な思いをするとKさんも言っていた。
　そのKさんが脳こうそくで亡くなり、今日、彼のお葬式に行ったが、まさか2週間後に彼の葬式で芳名帳に記帳するとは夢にも思わなかった。
　「ヘタな字でゴメンな。まあお互いさまやなあ」とひとり呟きながら心をこめて記帳した。

　一句：芳名帳　つたない文字に　萎縮する
　謎かけ：芳名帳とかけて、旅客機の操縦士のリーダーを務めると解く。どちらも(記帳・機長)をします

珍問答

　私と一緒に“ナニコレ珍百景”の収録をしたお客のAさんが知り合いのNさんを連れてきた。

　客A「マスター、珍百景はいつ放送するのん？」
　私 「まだ連絡がないわ。2回も収録に来てボツになったら、ボツ(ボク)は怒りますよ」
　客N「珍百景て何？」
　客A「ここのマスター、水曜の夜に放送してる珍百景に出るねんで。俺も一緒に映ってんねん」
　客N「珍百景て、どこが珍百景やのん？」と店内を見渡す。
　私 「ここがチン百景やねん」と股間を指す。
　客A「あれは午後7時からの番組やろ、ゴールデンタイムにそれは無いで」
　私 「しやけどゴールデンターマが2個もついてるで」
　客A「夕食時(ドキ)にタマを見せられたら、視聴者はタマらんで」
　客N「それで一体、何が珍百景やの？」
　客A「ここのマスター、缶とか瓶を斜めに立てるねんで」
　私 「俺、アッチの方が勃てへんから缶とか瓶を立てるねん。缶と瓶だけにビンカンや」
　客A「下ネタばっかりやなあ」

　一句：珍百景の　ネタにあれこれ　チン問答
　謎かけ：珍問答とかけて、ケチな人から黄色い桃を貰ったと解く。どちらも珍しい(応答・黄桃)や

頭痛

　今日の女性のお客さんは頭痛持ちである。

　お客「今日。お医者さんに行ってきてん」
　私　「何処の病院や」
　お客「大阪の富永病院や。頭痛専門の外来があるとこや」
　私　「頭痛かいな。ずつぅないなあ」
　お客「私は片頭痛やねん。あそこの病院は脳外科関係がよう診てくれるらしいで」
　私　「あ、俺も富永病院へ行こかなあ」
　お客「マスターも頭痛いの？」
　私　「そうや、店がヒマで頭が痛いねん」
　お客「その頭痛はダメダメ」

　一句：頭痛の句　なかなか浮かばず　頭痛(アタマイタ)
　謎かけ：頭痛とかけて、兵庫県と解く。どちらも(頭部に痛み・東部に伊丹)があります

痴漢えん罪

　電車の中で痴漢があるが、気をつけないとえん罪もあるとお客さんが話した。

　客M「俺、電車に乗る時必ず両手でつり革持つわ」
　客G「なんでや？」
　客M「痴漢と間違えられるからや」
　私 「そうそう、洗剤があるなあ」
　客M「洗剤と違(チゴ)て、えん罪やろ」
　私 「そうそう、えん罪もあるからなあ。そやから俺も両手上げてつり革を持って乗るわ」
　客M「手を下げてたら、手を掴まれて『この人、痴漢です』て言われかねへん」
　客G「そんな時は『何で罰金覚悟で自分みたいな女に痴漢するねん！7000円出したら自分みたいな女さわらんかてエエとこいけるわ！』て大きな声で言うたったらエエねん」
　客M「ホンマや、そない言うたら相手は絶対に恥かしなってひるむわ」
　私 「昼間やったら余計ひるむなあ」

　一句：人生を　痴漢えん罪で　狂わされ
　謎かけ：痴漢えん罪とかけて、上司のセクハラと解く。どちらも(車内・社内)で起きます

ハサミ…

　日曜日は近くのスーパーへ買い物に行った。レジを終えて品物を袋に詰めている時に妻が困った顔をしていた。よく見るとツィードのジャケットの袖口の糸がポケットの飾りチャックに引っかかり、解(ホド)くのに苦労していた。私も解こうとするが上手くいかない。
　妻が「もうエエわ。糸を切って」と言ったので店でハサミを借りようとレジ係りの女性に「ハサミ無いか？」と尋ねた。彼女は「寿司コーナーにあります」と返答。
　私は「なんで寿司コーナーかなあ」と思いながら、寿司コーナーで探し回るも見当たらなかった。そしてあるモノを見て「あっ、あの子、聞き違えたな」とピンときた。
　それはワサビであった。レジ係りは『ハサミ』と『ワサビ』を聞き違えたのだ。
　「まさかハサミが要るとは店員さんは思えへんわなあ」と思いながら妻の元に戻り、袋詰めをする台にあったセロテープのカッターで糸をこすりつけて切った。

　一句：場違いな　ハサミをワサビと　聞き違え
　謎かけ：ハサミとかけて、床屋と解く。どちらも(紙・髪)を切ります

寿司屋

　お客のKさんとSさんが寿司屋に行って来た。

　私 「いらっしゃい。おおー、今日は満足そうな顔してるなあ」
　客K「さっき、寿司を腹いっぱい食べてきてん」
　私 「寿司食べてきたんかいな。腹いっぱい食べたら高(タコ)ついたんと違うの？」
　客K「いや、回転寿司やから安かったで」
　私 「回転寿司かいな、そら安いわ。それにひき換え昔の寿司屋は高かったなあ」
　客K「時々値札に時価ちゅうのんもあったなあ」
　私 「このハマチ、ハウマッチ？てな具合や」
　客S「時価は寿司屋のオヤジの気分で値段を付けるみたいでイヤやなあ」
　私 「寿司屋のオヤジのお腹の中、マグロ(まっくろ)やなあ」
　客S「トロなんかはほとんど、時価やったなあ」
　私 「時価は高い。特にトロは高い。トロでお金をトロと思てんのと違うか」
　客S「回転寿司は時価があれへんし、昔から比べたら安なったわ」
　客K「俺、20年ほど前に回転寿司行ったで？」
　私 「何処の回転寿司に行ったん？」
　客K「商人(アキンド)や」
　私 「商人て、今あるか？」
　客K「スシローに名前変えたけど、それが商人や」
　私 「ほう、20年以上もアキントやってるのか」
　客K「そうそう、飽きんとやってるで」
　客S「20年以上もか。競争が激しいからその間、潰れてる寿司屋もあるのになあ」
　私 「商人は偉ぶったサバに強いなあ」
　客S「なに、それ？」
　私 「偉らぶる＝威張る、サバがイバル…、サバイバルに強い」
　客S「またオヤジギャグかいな。もうええわ！」

　一句：寿司だけに　ネタが豊富で　ギャグ連発
　謎かけ：寿司屋とかけて、鉄道ファンと解く。どちらも(新鮮・新線)が喜ばれます

リサイクル

　お客のKさんはリサイクルショップのファンで、よく服を買っては着て来て評価を求める。

　客K「この服もリサイクルで買(コ)うてん。似合うやろ」
　私 「ホンマやね、Kさんもリサイクルやからピッタリや」
　客K「なんで俺がリサイクルやねん」
　私 「バツイチで、捨てられたとこから立ち直ったからリサイクルみたいなもんや」
　客K「まあ、そう言われたら、そうやなあ」
　私 「Kさんは歌が上手やから、リサイクルの服着てリサイタルをしーや 」
　客K「リサイクルおやじのリサイタルか。受けるかも知れんなあ」
　私 「歌は吉本の麒麟の“サイクリング リサイクル”っちゅうのんがあるで」
　客K「リサイクルだらけになるなあ」
　私 「それで、キャッチコピーはリサイクルのリサイタルにイサイクル(異才来る)」　
　客K「ちょっとクドイなあ」
　私 「リサイクドイ！」

　一句：リサイクル　エコライフに　一役買う
　謎かけ：リサイクルとかけて、「ふるさとは遠きにありて」を書いた詩人と解く。どちらも(再生・犀星)である

南極大陸

　お客のTさんは最近、よく店に来る。

　私 「なんや、また来たんかいな」
　客T「家にいててもしゃーないねん。最近、面白いドラマが無いわ」
　私 「そうか？日曜日の南極大陸は見(メ)ーへんのか？」
　客T「見(メ)ーへんわ」
　私 「何でや?」
　客T「俺、キムタク嫌いやねん」
　私 「なんや、俺に似てるからか？」
　客T「どこがやねん！全然似てないやん」
　私 「なんでーな、目が二つあって、その下に鼻があって、その下に口があって…」
　客T「そんなんやったら誰でも似てるて言えるわ。しやけどキムタクはハゲて無いで」
　私 「アチャー、参りました！カラオケ、サービスするわ。何曲でも唄いや」
　客T「南極と何曲かいな、きっちり返すなあ」

　一句：南極大陸　幾多の難局　立ちふさぐ　
　謎かけ：南極大陸とかけて、玉つき衝突に巻き込まれたと解く。どちらも(最南・災難)である

震度

　最近はラウンジで時々チーフのバイトをしているM君がお腹をへこませるためにジョギングをしていると女性客のN子ちゃんに言っていた。

　客M「俺、時々40分ほどジョギングをしてんねん。N子ちゃん、運動してる？」
　客N「私、自転車通勤してるんよ。毎日、運動よ」
　客M「へえ、そうかいな。ほんだら今日も自転車通勤なんや」
　客N「いえ、それが今日は遅刻しそうになったからタクシー乗って行ってん」
　客M「会社の前まで車付けかいな」
　客N「いや、車付したら やらしいから10m手前で降りて会社まで走ってん」
　私 「それ、何時ぐらいや？」
　客N「8時ぐらいやけど、何で？」
　私 「いや、テレビ見てたら地震情報のテロップが流れてたわ」
　客N「なんて～！空ビンないか～」
　客M「まあまあ、まあまあ」とビールを注ぐ。
　私 「震度3やったわ」
　客N「なんやて～！空ビンないか～」
　客M「まあまあ、まあまあ」とまたビールを注ぐ。
　私 「さすがチーフのバイトしてるだけに、なだめるのん上手やなあ」
　客N「ほんま、M君が居てなかったら私、爆発するとこやったで」
　私 「ここで爆発したら、震源地だけに震度4になるなあ」
　客N「なんて～！空ビンないか～」
　客M「マスター、せっかく上手いことなだめたのに震度4言うたらアカンわ。なだめんのん、シンドいヨン」
　私 「チーフはなだめるのは上手いし駄洒落も上手なったなあ」

　一句：家揺れて　気持ちも揺れる　震度4
　謎かけ：震度とかけて、足裏健康法と解く。どちらも(測定をします・足底押します)