特殊清掃「戦う男たち」

自殺・孤独死・事故死・殺人・焼死・溺死・ 飛び込み・・・遺体処置から特殊清掃・撤去・遺品処理・整理まで施行する男たち

残り香(前編)

2024-09-13 07:40:57 | 特殊清掃
死体業をやるうえで臭覚は大事。
ある程度は臭いを嗅ぎ分けられないと仕事にならない。
基本的な部分は臭気測定機でもクリアできるが、やはり最終的には自分の臭覚が頼りになる。
また、臭覚には大きな個人差があることを理解しておくこともポイント。

ちなみに、私は自分の臭覚は標準レベルだと思っている。
あまり鋭い臭覚を持っているど、かえって仕事の障害になるかもしれない。
なにせ、いつも私が嗅いでいる腐敗臭はハンパじゃなく臭い!ので、鋭い臭覚を持っていたらそれだけでダウンしてしまうかもしれないから。

ホント、希望する読者がいたら一度は嗅がせてあげたいくらいだ。
惰性の(退屈な)生活には、抜群のカンフル剤になるかもよ!

私の仕事には、悪臭とウジは当然のつきものである。
いちいち言うまでもないことなので、最近は記述することを省略しているが、ほとんどの現場がそれらも含まれていることを承知して読んでもらえると幸い。

話を戻そう。
臭気測定機では臭いのレベルしか測ることができず、その内容まで追うことができない。
更には、メンタルな臭気はとうてい測ることはできない。

「メンタルな臭い」とは、臭気測定機は通常値を示し、更に私の臭覚でも問題のないレベルになった現場においても「まだ匂うような気がする」と言われるケースのこと。

このケースに当てはまりやすいのは近隣住民と賃貸物件の大家。
腐乱死体から受けた精神的なショックから抜け出せていない証拠でもある。
こういう人がいる場合は過剰なくらいの消臭作業を行い、同時に丁寧な説明が大事になる。
作業効率ばかりを優先してそれを怠ると、逆に作業効率を落とすことになりかねない。

片や、依頼者や遺族は少々の匂いくらいだったら「匂わない」とするケースが多い。
身内(関係者)が腐乱死体になったことを過去のものとしてさっさと葬り去りたいのだろう。

こういったケースでは、当然、私は客観的な感覚と第三者的な立場をキープしなければならない。
お金をくれるのが依頼者側であっても、できるだけ客観公正なスタンスで臨む。
それが、結果的に依頼者のためでもあるから。

ある時、ハウスクリーニングの専門業者から問い合わせが入った。
賃貸物件の引越後をクリーニングする会社だ。

「何の臭いだか分からない」
「どこから臭うのかも分からない」
「とにかく変な臭いがする」
「何とかならないか?」
と言う相談だった。

「出番かな?」
私は、イヤ~な予感を抱えながら現場に向かった。

つづく


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2006-09-03 08:38:04
投稿分より

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出会いと別れ

2024-09-12 07:29:17 | 特殊清掃
人生は色んな人との出会いと別れの繰り返しである。
私が書く「別れ」だからといって、なにも死別とは限らない。
別れの中の死別はごく一部。
学校・仕事・生活etcを通じて色んな人との出会いと別れがある。

考えてみると、私のような者でも、数えきれない人達との出会いと別れを経ている。
その中でも、一生を通じて付き合える人とはなかなか出会えないでいる。
「この人は一生の友だ!」「ずっと仲良くしていたい!」と、熱くなっていてもそれは一過性のもの。
一時期、どんなに仲良くしていても、学校・会社・住居などの所属コミュニティーを異にすると、またそれぞれに新しい出会いがあって、旧来の人間関係は次第に希薄になっていくパターンが多い。
特に、それ自体が淋しい訳ではないが、人との出会いに早々と別れ想像してしまう自分にどこか淋しさを覚える時がある。
こんな私と同じような経験を持つ人は、少なくないのではないだろうか。

私の場合は生きている人と同じくらい、いやそれ以上に?死んだ人との出会いが多い。
おかしな表現だか、出会う前に別れていると言った方が正確かもしれない、そんな出会いだ。

ある日の午後、特掃依頼の電話が入った。
故人の遠い親戚からだった。
他の仕事を抱えていた私が現場に着いたのは夜だった。
外はもう完全に暗くなっていた。

現場は狭い路地の奥、古い木造アパート。
玄関ドアの前に立っただけで、いつもの腐敗臭がプ~ン。
私は、教わった場所の隠しキーを使ってドアを開けた。
中はかなり暗くて、珍しく不気味さを覚えた。
例によって余計なことは考えないよう努めて私は中に入った。

とりあえず、電気ブレーカーを上げて明かりをつけた。
余談だが、このブレーガーがやたらと落ちやすくて困った。
いきなり落ちて部屋が真っ暗になる度に、心臓が止まりそうになった。
「故人の仕業か?」と、余計なことを考えてしまったものだから、そりゃもう大変だった。

さて、いつもの腐乱現場を想像していた私は驚いた。
床を埋め尽くす程のウジ・ハエの死骸はいいとして、汚腐団が木屑のような粉状のもので覆われていたのだ。

「ん?この状態は前にもどこかで見たことがあるぞ」
よく思い出してみると、死後経過日数がかなり経っていた現場だった。

私は依頼者に電話して、警察が推定した死後日数を尋ねてみた。
「約二ヶ月」
「白骨化していた」
依頼者の返答自体には驚かなかったが、「なんで、そこまで発見が遅れたんだ?」と、そっちの方に驚いた。
現場は住宅が犇めき合っているような所で、同じアパートにも住人はいるのに。
近隣には、随分前から悪臭が漂っていたはずなのに、誰も関わろうとしなかったのか・・・。

私も無用な人間関係を煩わしく感じる(敬遠する)タイプなので、近隣住民を「冷たい」と批判する気持ちは毛頭ない。
ただ、「腐乱臭によく我慢できたな」と、そっちの方に感心した。
他人と関わるより腐乱臭を我慢した方がマシだったのか・・・?

都市部を中心に「地域社会」というコミュニティーも崩れてきているのは事実だと思う。
私もそれに加担している一人。
これも、時代の流れか。
日本は人口が少なくなっていく傾向にあるようだし、人同士の関わり方も浅いものになっている。
その分、出会いと別れの機会もだんだんと少なくなっていくのだろうか。

時が経ってみると、「あの人と出会えてよかった」と思うことより「あの死体と出会えてよかった」と思うことの方が多い現在。
あくまで、「時が経ってみると・・・」だが。

残された人生にも、色々な人・死体との出会いと別れがあるだろう。
それが、いい出会い・いい別れであって欲しいと思う。

そして、死体との出会いがない人が可哀相でもあり羨ましくもある。


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2006-09-02 14:54:09投稿分より

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夏の終わりに

2024-09-09 07:33:36 | 特殊清掃
暦はもう秋、朝晩は涼しさを感じるようになってきた(気持ちいい)。
今日から9月である。

毎年のことだが、夏は特掃業務が更に過酷になる季節。
現場も凄惨を極める。
そんな現場で汗と脂にまみれて働く。
腐敗液に自分の汗が滴り落ちるのを見ながら、神妙なことを考えたり、自分を励ましたり、くだらない事を考えたりする。。
やけに哲学的になってみたり、センチになってみたり、バカになってみたり。

どうしようもない時は外に出て小休止。
荒くなった呼吸と心臓の鼓動、脳ミソを落ち着ける。

そんな夏も終わろうとしている。
今年の夏もいい?思い出がたくさんできたが、リアルタイム過ぎて紹介できないのが残念。

私は、今までに何体もの死体に会ってきた。
何件もの腐乱現場に遭遇してきた。
病死・事故死・自殺・自然死etc・・・。
死に方にも色々ある中で、そんな私が今まで一体しか扱ってない遺体がある。

「何?」と思われるだろう。
「他殺体」である。
私が20代の頃だから、もうだいぶ前の話になる。

当時は大きなニュースになったので、ここでも詳しい表記は控えるが、故人(被害者)は20代前半の学生だった。
楽しい夏休みの最中、惨劇が襲った。
犯人の末路を見ても、とても「一件落着」とは思えない事件だった。

遺体には大きな解剖痕があった。
遺族の要望で、生前に袖を通すことがなかったお気に入りの服を着せた。
作業中、遺族が立ち会っていなかったことで、若輩の私は余計なプレッシャーを受けずに落ち着いて仕事ができた。
遺族に何と声を掛けていいのかも分からなかったし。

子供や若者には、いい意味で無責任に生きられる特権が与えられている(代わりに責任を背負っている人がいるのだが)。
比較的、自由に生きられる特権だ。
人を悲しませない範囲であれば、その特権を自由に行使していいと、私は思う。
そこに若年の輝きが見えるから。

故人も、一人の若者として学生生活を謳歌していたことだろう。
楽しい夏休みを最期に、人生の幕を閉じることになることなんか知る由もなく。
そして、9月1日の新学期を迎えることなく突然逝ってしまった。

「人生って、いつ何が起きるかホントに分からないものだ」
と、あらためて痛感した時だった。
そして故人に、何故か犯人にも深い同情心が湧いてきたのを憶えている。

いつ何が起こるのか分からないのが人生だけど、いつ何が起こっても素直に受け入れることができる器量が欲しい(無理かな)。
苦しいこと・辛いこと・悲しいことは有限、気持ちいいこと・楽しいこと・嬉しいことは夢幻の人生なのだから。

夏の終わり、9月の曇空を見上げながら、先に逝った人達に想いを馳せる。


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2006-09-01 09:27:47投稿分より

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うにどん!

2024-09-06 05:59:08 | 特殊清掃
「食欲増進の巻」

私が初めてウニを食べたのは大人になってからである。
「美味!」と聞いていたウニは、私にとっては生臭くて食感も悪く、とても美味とは言えなかった。
美味しく感じなかった一番は原因は、食べ慣れていなかったせいかもしれない。
でも、何度か食べているうちに少しづつ味が分かってきて、だんだん好きになってきた。
今は、「大好物」とまではいかないけど好物の一つになっている。

そんな私は長い間ウニ丼に憧れを持っていた。
それまで、私の口に入る ウニは回転寿司の軍艦巻程度。多分、安物。
「テレビのグルメ番組にでてくるようなウニ丼を一度は食べてみたいなぁ」と、ずっと思っていた。
東京でも数千円だせば食べられるのだろうが、馴染みの寿司屋なんかない私には、美味しいウニ丼がありそうな寿司屋に飛び込む度胸もなく、結局いつまで経っても食べられずじまいだった。

二年程前になるだろうか、そんな私にウニ丼が食べられるチャンスが巡ってきた。
親しくしている人に海の近くの寿司屋に連れて行ってもらった時だ。
酒が入っていたせいもあるのだろう、ウニ丼に対する想いを熱く語ってしまった私。
カウンター越にそれを聞いていた板前が、「ウニ丼、出しましょうか?」「うちのは自慢のウニですから」と言ってくれた。

板前は、店のメニューにはないウニ丼を、わざわざ私のために作ってくれたのだった。
目の前に出て来たウニ丼は、私が期待していた通り、鮮やかな黄色で一つ一つが大きくホッコリしている。
決して溶けだすようなことはなく、表面のツブツブ感もしっかりあった。
私がいつも食べているような軍艦巻ウニとは大違い。

それを見て、増々テンションを上げた私。
テレビのグルメリポーター張りのオーバーリアクションでウニ丼を一気に掻き込んだ。
その食感はシッカリとあり甘味もコクも格別、本当に美味かった!

積年の望みを果たした喜びとウニの甘味がプラスされて、何とも言えない幸せなひと時だった。

一度食べればもう満足。
今は、ウニ丼への熱い想いは落ち着いている。



「食欲減退の巻」
場所は、寿司屋ではなく風呂場。

浴室のいたるところに付着している焦茶色の腐敗液と、あちこちに貼り着いている皮が、警察の遺体回収が困難を極めたことを物語っていた。
特に、浴槽の側面に垂れたまま乾燥していた腐敗液は視覚的にグロテスクだった。

浴槽の中を覗いて見ると、底に何がが溜まっている。
皮とウジは分かるものの、あとは何なのか判別不能だった。
まぁ、人体の一部の末路なんだろうが。

幸いなことに排水口は詰まっていなかった。
風呂やトイレの場合、排水口が通っているか詰まっているかは私にとっては天地の差がある。
通っていると俄然やる気がでてくるし、詰まっていると意気消沈してしまう(意気地がない?)。
始めに固形物を除去。
皮・髪・ウジ、そして得体の知れないモノ。
皮と髪は浴槽に貼り着いており、削り落とした。
大量のウジは一匹一匹を相手にはしていられない、まとめて掬い取るしかなかった。
それらはまとめて汚物容器に。

そして、私は得体の知れないモノに手をだした。
表面は茶色、固いモノだと思って道具を当てたら中からドロッと黄色い半液体がでてきた。

「何だこりゃ?」
「なかなか珍しい色だなぁ」
と思いながらそれも容器に取った。
ウジ山はその汚物に隠れた。

固形物を取り除いたら、あとはひたすら戦場・・・いや洗浄。
排水口が通っているということは水が流せるということで、気持ちいいくらいにきれいできた。

さて、最後に廃棄物のチェック。
私が汚物容器に見たものは、そう・・・。


いつかまた、美味しいウニ丼を食べたい。
頑張って仕事しよう。



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2006-08-29 09:05:07投稿分より

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ロールケーキorサンドイッチ

2024-08-15 06:31:30 | 特殊清掃
腐乱死体が布団を汚していることは多い。
言い換えると、布団に入ったまま亡くなる人が多いということ。
そんな場合は、ほとんどの依頼者が「布団だけでも先に持って行ってくれ!」と依頼してくる。
腐敗液をタップリ吸った布団は、見た目も臭いもとてもヒドイから。

できる限り依頼者の要望には応えるようにしているが、見積と作業は別物。
作業を小刻みに分けると、効率も悪くコストも上がる。
何よりも、汚物処理作業は一発で済ませたい。

でも、困りきった様子で依頼してくる依頼者も無視できない。
昔は、そんな現場は仕方なく作業をしていた。
依頼者には悪いが、嫌々やっていた。

普通の布団をたたむのは誰でもわけないことだが、汚腐団(お布団)はそういう訳にはいかない。
できるけ小さくたたんで専用袋に入れるだけ作業なのに、ちょっと油断すると腐敗液が身体に着いてしまう。

以前は、腐敗液が身体に着かないように作業手順をよーく練ったうえで、慎重に慎重を重ねてやっていた。
まさに、汚いモノにでも触るかのように。
それでも、なかなかうまくいかず、身体を汚してしまったことが何度もある。
その逃げ腰・及び腰の姿勢が逆効果であることに気づくのは、しばらく先になった。

何度もやっているうちに、一つの失敗が一つのノウハウになることを覚えた私は、「どうせ汚れるんだったら失敗例を蓄積しよう」と考え方を変えた。
皮肉なことに、汚いモノが着かないように気をつけていた頃に比べると、汚いモノを気にしなくなってからの方が圧倒的に汚れなくなった。

腐敗液をタップリ吸った布団は重い!もちろん臭くもある。
持つとズシリとくる。
実際の重さに増して精神的な重さがある。
私より腕力のある人でも、そう簡単には持てないかも。

昔は、梱包した布団でさえ汚く思えて、身体につかないように持っていた。

今は、抱えるどころか背負うことにも抵抗感はない。
それを背負うと、遺体そのものを背負っているような錯覚に陥る。
そんな布団に対する私の感覚は、汚物と人間の間を行ったり来たりする。大袈裟に言うと、汚物に親近感みたいなものを覚えることもある。
ただ歳をとっているだけじゃなく、人間として成長しているのかも?

仕事も人生も、楽をしようとして近道を行くと、かえって遠回りになってしまうことがある。
身の丈を考えず階段を飛び越えようとすると、踏み外して転げ落ちることがある。
何事も、小さな積み重ねが大事。
続けることが大事。
知恵を持つことが大事。
こんな仕事にも独自のノウハウがある。
それを得るためには経験・継続・蓄積が必要。
私には、誰にも真似できない(したくない?)それがある。
死体業をコツコツやってきたことが、ホコリのような私の誇り・・・かな?

今回は、とりとめもない文章になってしまった。夏バテ気味か・・・。

表題の「ロールケーキorサンドイッチ」は、汚腐団のたたみ方のコツ。
中に入る具は色々あるが、読者の想像にお任せする。

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2006/08/24 19:27:34
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お化け屋敷(後編)

2024-07-13 06:25:10 | 特殊清掃
休暇をとった管理人は、身内の法事に行ってきたらしい。
その割には赤く日焼けした顔が、どことなく気まずそうにも見える。
人手が足りない時は特掃隊に編入しなければならない哀れな?身の上だから、まぁ、黙認した方が親切というものか。
管理人を労う書き込みも多かったし。

前編から話を続ける。
そして、その顔が私に近づいて来るような気配を感じた私は、声にならない悲鳴をあげて家から飛び出した!
全身に悪寒が走り、息を吸うことができなくなった私。
霊感がないのが少ない取り柄のひとつだったのに・・・とうとう見てしまったのか!?
そして、私が見てしまったモノの正体は!?
さすがに気持ち悪くなった私は、再び家の中に入ることはできなくなった。
本当は二階の状況も確認しなければらなかったのだか、結局、二階は想像見積。
間取りと遺族の話と一階の状況を考え合わせて推測した。

幸い?肝心の腐敗痕は一階だったからよかった。さすがに汚染箇所は、想像で見積できるような代物ではないから。

頭部が当たっていたと思われる段ボール箱は丸く凹んでいて、腐敗液にくっついた頭皮と頭髪が残っていた。そして、大量のウジも。
一般の人にとっては、腐乱死体痕の方がよっぽど恐いのだろうけど、私にとってはそんなものはどうってことない。

それよりも、二階に見たモノの正体ばかりが気になっていた。

さて、施工の日。
明るい昼間でも、何だかイヤ~な気分だった。
いつもの流れで、まず一階の汚染箇所から着手。
一階をほぼ片付け終えたところで問題の二階へ。
階段を見上げる決心は、なかなかつかなかった。
ウジじゃあるまいし、いつまでもウジウジしてたって仕方がない。
勇気をだして恐る恐る階段上を見てみた。
すると、どうだろう。
壁にモノクロの写真が掛けてあった。
多分、御先祖の遺影だろう。
「な~んだー、そういうことかぁ」
過日の夜は、それが外からの淡い月明かりにボンヤリ照らし出されて、顔が宙に浮いているように見えたらしい。
「ちょっと顔が違うような、もっと近くに見えたよう気がしたけど・・・」と少々怪訝に思ったが、深く考えないことにした。
とりあえず正体が写真と分かって(決めて)安堵した。

遺族からは「家の中の物は全部ゴミ、全て捨てていい物」と言われていたが、この遺影は捨てる気にならず遺族に渡すことにした。
二階で写真を梱包していると、誰かが私の背中をポンポンと軽く叩いた。
「ん!?」と思ったが、私はあえて振り返らなかった。
そこには、私の他に誰もいるはずがなかったから。


トラックバック 2006/08/07 10:34:16投稿分より
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お化け屋敷(前編)

2024-07-11 09:23:02 | 特殊清掃
人それぞれに怖いもの(苦手なもの)を持っていると思う。
私の場合は、高所・蛇・歯医者・お金・心霊写真・暗闇etc。

当然、この中に死体は入らない。
気持ち悪いことはあるけど、恐くはない。
どちらかと言うと、道端に転がっている動物の轢死体の方が苦手。いつも目を背けて通り過ぎてしまう。

逆に、一般の人にとって人間の死体は上位にランキングされるものらしい。
その理由の中核を探ってみると面白いことが発見できるかもしれない。
やはり人は、死をイメージさせたり感じさせたりするものを根本的に嫌うのである。
葬儀習慣に限らず一般世間の習俗や慣習にも、それを感じさせるものが多い。
その延長線上には死からの逃避願望があり、やはり死ぬことは恐くて考えたくないものなのだろう。

ある日の夕方、特掃の依頼が入った。
「できるかぎり早く現場を見てほしい」とのこと。
何の仕事が入るか分からないので、昼間の予定はできるだけ業務用に空けておきたい私は、その日の夜に行くことにした。
「鍵は開いているので、勝手に入っていい」とのことだったし。

現場に着いた頃は、外はもう真っ暗。
目的の家は老朽狭小の一戸建。
電気は止まっており中も真っ暗、懐中電灯を照らすしかなかった。
庭には、手入れをしてない木々がうっそうと茂り、外灯の明かりもなく、淡い月明かりが不気味さを照らし出していた。

玄関の前に立っただけで、いつもの腐乱臭を感じた。
自分で自分を脅しても仕方がないので、余計なことを考えないようにして玄関ドアを開けた。
それから、誰もいるはずのない家に、いつもの様に「ごめんくださ~い」と言いながら入った。

狭い屋内は、ゴミなのか生活用品なのか分からないような物が散らかっており足の踏み場もないくらいだった。
腐敗箇所をいち早く見つけて汚染具合を確認。
まぁ、腐乱死体現場としたら並のレベル。
ウジはいたけど馴染みのハエは二軍落ちし、その代わりに蜘蛛の巣と蚊がまとわりついて弱った。

廃棄するゴミの量もキチンと把握しなければらないので、建て付けの悪い押入も開けてみた。
そこで思わず「あ゛ッ!」
暗闇の中に人の首・・・押入の中には頭部だけのマネキンが並べられていた。
「なんでこんなもん持ってをだよ!ドリフのコントじゃないんだから、こんなもんで脅かさないでくれよぉ」
心臓の鼓動か静まらない私は、勢いよく戸を閉めた。

そのうち、どこからか「キィーキィー」と泣き声のような音が聞こえてきた。
「ドキッ!」、心臓は再び高鳴り始めた。
気のせいにして無視しようとしたけど、確かに聞こえてくる。
放っておく訳にもいかないので、嫌々その音(声)がする方を探した。
それは流し台の収納スペースから聞こえていた。
思い切ってその戸を開けてみた。
そこで思わず「あ゛〓ッ!」
いくつものネズミ獲り(粘着シート)に無数のネズミがかかってもがいていたのである。
中にはもう死んで腐ってるのもいて、それはそれは悲惨な状態。
「見なかったことにしよう」
全身鳥肌の私は、機械的に戸を閉めた。

一階を見分し終えて、次は二階。
脅され過ぎか気の張り過ぎか、心身ともに疲れてきて、身体にも力が入らなくなっていた。
「もう少しの辛抱」と、暗くて狭い急階段の上を見上げた。
そこて思わず「あ゛〓〓ッ!」
あまりのことで悲鳴は声にならなかった。
なんと!宙に浮いた人の顔が、ジーッと私の方を見ていたのである。
そして、その顔が私に・・・

つづく


トラックバック 2006/08/05 09:33:22投稿分より
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『生き残れ!』

2024-05-29 05:12:39 | 特殊清掃
ある日の午後、特殊清掃の見積依頼が入った。依頼者は、死体現場なのか遺品回収なのか、またはゴミ処分なのか全く教えてくれず、

「とにかく鍵は開いているから、勝手に入って見積りをしてくれ」

という一方的な依頼だった。見積時に依頼者が来ないケースは珍しくなくなってきたので(好ましくはない)、今回も仕方なく現場へ向かった。


おおまかに現場近くまで行ってからカーナビで現場住所を検索してみた。ナビは目的地を表示するもの、最大限に拡大してもそこへたどり着く道が表示されない。

「???どうやって行けばいいんだ???」

と思いながら、とりあえず、接近可能な場所まで車で行った。夕暮時で、外は薄暗くなっていた。辺りを見渡して、地図とナビが示した方面に家を探したが、目的の家らしき家は見当たらない。困ってしまい、近隣の家を訪問して訊いてみることにした。

ある家に訪問して

「すいません。ちょっとお尋ねしたいことがあるんですが・・・。」

と声を掛けたまではよかった。

「○○さん宅をご存知ないですか?」

と尋ねた途端、その家の人の表情が変わった。

「知ってますけど・・・○○さんちに行くんですか?」

と驚いた様子。

「この驚き方は腐乱死体現場かな?」

と思いながら、

「ええ、でもちょっと場所が分からなくて・・・」

と私。



とりあえず、その家の人は

「本気で行く気か?」

とでも言わんばかりの表情ながら、丁寧に場所を教えてくれた。やはり、車では入れないところらしい。
一通り場所を教わると

「ご丁寧に、ありがとうございました。助かりました。」

とお礼を言って現場へ向かった。
その家の人は

「どういたしまして。本当に気をつけて行って来て下さいね。」

と意味深に見送ってくれた。

「妙な見送り方をするもんだな・・・」

と思いながら、

「それだけヤバイ現場っていうことか・・・」

と考えながら、車を進めた。教わった場所に車を停め、あとは徒歩(トホホ・・)。もう外はかなり暗くなっていた。



暗くなってからの出動は日常茶飯事なので懐中電灯は常に車に積んである。
歩いていく途中には外灯もなく余計な墓地があったりして、小心者の私には最高の演出だった(冷汗)。

歩くことしばし、やっと目的の家を発見。現場は住宅地から離れた、森?雑木林?藪?の奥にあった。しかも、とても人が住んでいたとは思えないような老朽家屋だった。
この辺でさすがの?私もビビり始めた。
でも、見積りに来た以上は中を見分しなくてはならない。誰もいないと分かっているのに、

「こんばんは~」「ごめんくださ~い」

と小声で念仏を唱えるように、家に近づいて行った。



懐中電灯を家に向けて照らすと、そこには無数に光るものが。
全体を照らしてみると、20~30匹はいただろうか、たくさんのネコがジーッとこっちを睨んでいた。これには背筋もゾーッ!この不気味な状況をリアルに伝えられないのが悔しい。ネコ達は私が近づいても視線を動かすだけで微動だにしない。それが更なる無気味さを増長させた。

「いくらネコとは言え、こいつら全部に同時に襲われたら生きてられないかもな」

と思いながら、このネコ郡を越えていくかどうか迷った。


何とか家に到着。中に入ろうと入口を探したが、入口がなかなか見つからない。

「これで、中に腐乱死体痕があったら、どうしよう・・・」

気持ちは半泣き状態で

「見積りなんか放っておいて、もう帰ろうかなぁ・・」

と思ったほど。
その矢先、いきなり中から人間が(中年男性)が飛び出してきたのである。
もう、驚いて、腰を抜かすかと思った!!



男性は最初からキレた状態で、私に訳のわからないことを怒鳴り散らしていた。男性は私に襲い掛からんばかりの勢いで、私の言うことなんかには耳も貸さず怒鳴り続けた。

暗闇の雑木林の中で、私は無意識のうちにその辺の棒キレを手に持った。
私も、こんな所でやられるわけにはいかない。いざとなれば応戦するしかない。


しばらくして、やっと男性も落ち着いてきて、会話ができるまでになった。
事情をきくと、今は、金もない・仕事もない状態で、借金もたくさんあるとのこと。普段から金融会社の取り立ても厳しく、私を借金取りと勘違いしたらしい。
そのうち、

「もう俺は死ぬしかないんだ・・・死んで金を払うしかない・・・」

と言い始めた。
半分開き直っている私は

「生命保険とか年金とか、ちゃんと入ってるんですか?」

と無神経な質問をしてみた。
応えは

「金がなくて入ってない」

とのこと。ズッコケ!

「じゃぁ、死んだって一銭にもならないじゃないですか!せっかく生まれてきたのに自分の命が¥0なんて悔しくないですか?」

と一喝。
それでも男性は

「そんなこと言ったってしょうがないだろ!」

と反論。

「アナタが死んだら、家族やネコ達はどうなるんですか?」

と言ったら、男性も黙り込んだ。


さすがに、家族やネコ達を残して逝くことには躊躇いがあるようだった。
愛する者、自分を愛してくれる者の存在は、それだけ影響力があるのだろう。


何はともあれ、実際に人が住んでいる以上は、勝手に中にも入れないし(入りたくもなかったし、入らせてくれともお願いしなかった)、こんなに苦労したのに、見積ができないま退散することに。


翌日確認すると、そこは借家で、私に依頼してきたのは大家らしい。
大家さんの事情を想像すると、家賃の滞納はもちろん、その汚宅は地域住民からのクレームも少なくなく、強制的に追い出すしかないと考えたのだろう。そうは言っても自分で手を下すのは抵抗がある。そうして探し当てた適任者?が特掃部隊。大家は、特殊清掃をやっている人間だったら神経も図太いと考えたのだろうか、詳しい事情も話さず

「とにかく、見積りに行ってくれ!」だった。

大家さんには

「勘弁して下さいよぉ」

とクレームをつけたら、

「今度は明るいうちに行って下さい」

と言われてしまった。

・・・一瞬、言葉に詰まったが

「見積時は御依頼者に立ち会っていただくのが原則なので、今度は、大家さん一緒に行きましょう」

と返しておいた。


大家は、あっさり同行を拒否。私もこの仕事には気が進まなかったので断ろうかとも思ったが、アノ男性のことが気になったので、再訪問してみることにした。
ホントに死なれちゃかなわない。



今度は明るい日中、手土産に、自己破産について分かりやすく書いてある本を持って。
二度目の訪問ということもあったし、明るい時間に行ってみると、案外、不気味さはなかった。
明るいところで見ると、ネコも格好可愛いもんである。数が多すぎるのが難だが。
男性はいた。今度は最初から冷静に話ができた。
スゴク失礼かとも思ったが、持参した

「自己破産ガイドブック」

をプレゼント?した。
(自分でも読んでみたが、自己破産にも色々な種類があることを知り結構勉強になった)
昔どこかで聞いたことがある言葉を思い出して男性に訊いた。

「目は見えますか?」「うん、見える」

「耳は聞こえますか?」「うん、聞こえる」

「話すことはできますか?」「うん、話せる」

「手は使えますか?」「うん、使える」

「歩くことはできますか?」「うん、歩ける」

「じゃあ、ないのはお金だけですね。人間、死にたくなくてもいつかは死ななきゃならない。死ぬのは、やれるだけの事をやってみてから考えたらどうですか?」

私は、そう言い残して現場を後にしたのであった。


その後、大家からは何の連絡もない。

「連絡がないのは男性が無事な証拠」

と勝手に思っている。



トラックバック 2006/06/28 07:46:25投稿分より

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脱帽

2024-05-23 07:34:50 | 特殊清掃
老朽アパートの一室で、腐乱死体が発見された。私が駆けつけたときは既に遺体は警察が回収して、火葬を待っている段階だった。亡くなったのは中年男性。遺族といえば兄弟くらいしかいない人らしく、遺族の到着を待ってから部屋に入ることになっていた。その部屋は、外から見ても窓に無数のハエが貼り付いていて、中の様子がほぼ想像できた。

しばらく待っていると、遺族(故人の兄弟達)がやって来た。
東北の某県からわざわざ来たらしく、話す言葉は東北弁で、ゆっくり話してもらわないと何を言っているのか分からなかった。

「だいぶ臭いはずですから、気をつけて下さい」(気をつけようもないのだが)

と言いながらドアを開けて中へ。
案の定、中はいつもの悪臭とハエだらけで、汚染部分にはウジが這い回っていた。
驚いたのは、その後の遺族達のアクティブな動きだった。

「大して臭くないでねぇか」(スゴク臭いのに)

と言いながら、私を通り越してズカズカと中に入り込んでいったのである。ほとんどのケースだと、始め、遺族は私の背中に隠れるようにしているか、外で待っているかのどちらかなのに、この人達は違った。まさに強者達。

そして、更には、腐敗液のついたカーペットを素手で捲り挙げて、その下の畳の汚染具合を確認したり、ウジやハエのついた家財を気にもしないで触りまくっていた。

「使えるものがたくさんある」「田舎に帰らないといけないからあまり長居はできない」等と言いながら、腐敗液もウジもハエも、悪臭さえも気にする様子もなく家財道具・生活用品をまとめはじめたのである。しかも、マスクどころか手袋もせず、普段着のままで。

呼ばれて来たのはいいけれど、私が出る幕なし。遺族が私に依頼する作業内容がハッキリしないので見積りのしようがなかった。その前に、「この人達だったら、私の作業は必要ないかも」と思った。
そういう状況なので、私に依頼する内容が固まったら、再度見積もりに参上することにして、一旦は退散。

数日後、連絡が入り再び現場へ。中の荷物はほとんどきれいにまとめられていた。「まだ使える」「捨てるのはもったいない」ということで、ほとんどの物を持ち帰ったようで、残された不要品は少なかった。物を大切にすることはいいことだが、図太い神経だ。

ただ、それからが問題だった。大家は殺菌消臭をはじめとするフルリフォームを要求、遺族は荷物の撤去だけで充分と主張し、意見が真っ向から対立していた。
私は、第三者(専門家)として意見を求められたので大家側に立った。そりゃそうだ。腐敗死体の臭いがする部屋に新たに入居する人がいる訳がない。ただでさえ、完全リフォームしてでも、死人がでた部屋には入居者は入りにくいというのに。
遺族は

「このくらいの臭いは平気」「ウジやハエなんて、普段だってそこら中にいるもんだ」

と勝手なことを言っていた。この人達は普段どんな暮らしをしているんだ?腐敗液やウジのついた物を平気で素手で触れるような人達だから、もともとの感覚が違うのだろう(私が言うのもおかしいかもしれないが)。

とりあえず、私は不要品の撤去と簡単な消臭作業のみをやった。大家は自分の味方として加勢してほしそうだったが、大家vs遺族のトラブルに巻き込まれたくなかったので、作業をそそくさと済ませて退散した。


それにしても、特殊清掃を本業とする私が顔負けするほどの肝の据わった遺族だった。脱帽である。


トラックバック 2006/06/22 08:57:23投稿分より

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K1グランプリ

2024-05-19 08:50:45 | 特殊清掃
  • 世に中には色々な仕事・職業がある。

ひと昔、「3K」という言葉が流行ったことがある。いわゆる、

「キツイ!汚い!危険!」

というヤツだ。そういう仕事は嫌悪されてきたし、今もそうであろう。
では、私の仕事はどうか。
ちょっと考えてみたら、3Kどころじゃなかった。

「キツイ!汚い!危険!」+臭い!怖い!怪異!苛酷!気色悪い!気持ち悪い!気味悪い!下流!苦しい!過激!奇怪!腐る!暗い!嫌悪!等など・・・色々挙がってきた。一体、何Kあるんだろう。

これで戦ったら、私も武蔵や魔沙斗に勝てるかも?その前に、彼等はこの汚染リングに上がる前に視覚と嗅覚をやられてノックダウン?どんなに強く腹を打たれても吐いたりしない彼等だろうけど、この汚染リングでは、リングサイドで早々と嘔吐。


作業中、こんなくだらないことを考えながら結構明るくやっているのである。一人でニヤニヤしながら仕事をしている姿を人に見られると、

「こいつ、ヤバそうな奴だな・・・」

と思われてしまうので、笑うのはあくまで一人の場で。


私は、こんな仕事だからこそ、明るさと元気さと、自分の気持ちに正直であることが必要だと思っている。

「自分の気持ちに正直」

とは、あくまで仕事上のことを指してのことだが、自分の心情・喜怒哀楽を言葉や態度に素直に出して心のガス抜きをするということ(他人に無礼な態度をとることとは違う)。変に我慢すると、余計に作業が辛くなるばかり。


どんなに臭くても、どんなに汚くても、どんなにバカにされても、明るく元気にやろうと格闘している日々である・・・人生のチャンピオンになれるまで。


  • トラックバック 2006/06/18 09:41:16投稿分より

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独居男の悲哀

2024-05-08 05:52:50 | 特殊清掃
若年から中年の孤独死も案外多いものである(自殺ではなく)。

そんな現場に共通して言えるのはエログッズの多さである。
エロ本・AV類が山ほどでてくる。普通は、古いものや見飽きたものは捨てていきそうなものだが、捨てるのが惜しいのか、そういう人はどんどん買い溜めていくのだろう。

男の本質と言ってしまえばそれまでだが、ほとんどの現場で、ちょっと異常な量がある。
その共通点は不思議である。

そんな現場で気の毒なのは遺族である。エログッズを溜め込んでいたのは故人で、遺族ではないのに、何故かどの遺族も

「お恥ずかしい・・・スイマセン。」

と謝ってくる。身内の恥は自分の恥だと思ってしまうのか。

別に謝るようなことでもないし、私も、謝られても何と言っていいか分からないので苦笑いするのみ。
フォローの言葉が見つからない。
そもそもエログッズを溜め込むことは悪事ではないので、謝る必要なんかないのだが。

それでも、遺族は恥ずかしい心情を抑えきれずに、理由もなく謝ってしまうのだろう。
そこが妙に可笑しい。

でも、本当に恥ずかしいのは、あの世に行った故人かもしれない。

「まさか自分の恥ずかしい趣味が他人に露呈してしまうとは・・・恥ずかしいッ!!」
と草葉の陰で赤面している?



独り暮らしの男性でエログッズがたくさんある方は、普段の健康管理に人一倍気をつけよう。腐乱死体で発見されるようなことがないように。


トラックバック 2006/06/07 投稿分より


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金がない

2024-05-07 06:16:26 | 特殊清掃
特殊清掃は原則として前金制でやらせてもらっている。

こういう現場に絡んだ人達は「訳あり」の人が多く、その昔は代金を回収できないままトンズラされたことが何度かあったからだ。
こんな仕事をやらせておいてお金も払わずバックレルなんて、当時を思い出すと泣けてくる。

「人を騙すより騙される方がいい」

とよく耳にするが、そんなのきれい事だ。



世の中には、騙してもいいような輩があちこちにいると思う(騙された私もそんな輩の一人だったのかも?)。


そんな現在の私でも情がないわけではない。
お金がないから後払い・分割払いを依頼してくる相手(依頼者)はよく観察してよく話す。
長年、こんな仕事をやっているせいか、人間観察には少々の自信がある。
その結果、現状で言うと断ることの方が多い。しかし、受けることもある。


アパートで独り暮らしをしていた20代の娘が腐乱死体で発見された。
自殺ではなく自然死だったらしいが、例によって現場はヒドイ状況だった。

両親は、同じ県内に住んでおり、最初の一度、遺体発見の時だけ現場に行ったっきりで、「もう二度と行きたくない」とのこと。
かなりのショックを受けたらしく(当然か)、母親は寝込んでしまっているような状況だった。

特殊清掃の依頼は父親からの電話。
とりあえず、鍵は不動産屋から借りて現場へ。
見積書をFAXしてから、再び電話でやりとり。
プライベートなことまで突っ込んで話を聞き、偽装ファミリーではなさそうであることは確認。

でも、肝心の「お金がない」と言う。
「娘の生命保険金が入ったら、必ず払うから先に清掃をやって下さい」と懇願された。

大家や不動産屋から「早くきれいにしろ!」とクレームをつけられているらしく、父親は困りきっていた。
生命保険となると一ヶ月以上は後になる。
過去に、この類の同情を引く手口で騙されたことも思い出しながら苦慮した。

結果、電話でしか話していない父親を信じて受けることにした。
父親の懐具合はどうあれ、若い娘を突然失って弱っている人を見捨てるわけにもいかなかったので(カッコいい?)、最悪は、代金が回収できないことも覚悟しておいた。若者の死は、それだけの思いを起させる何かがあるのだろうか。

結局、最初から最後まで依頼者と直接顔を合わせることがない、珍しいケースであった。



肝心の代金がどうなったか?
それは以降のブログに載せるかもしれないので、お楽しみに。


トラックバック 2006/06/06 投稿分より


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アンビリーバボー!!!

2024-05-05 04:57:43 | 特殊清掃
特殊清掃の最初の仕事は現場確認と費用見積である。
そこで初めて依頼者と会い、現場を見ることになる。
どんな現場でも、最初は使い捨てのビニール手袋(ディスポーサブルラテックスグローブ)を必ず着ける。
私はドアノブさえも素手では触らない。
そんな私を見て、自分はさんざん素手で触ってきた依頼者は不安そうな表情をする。

そして、ドアを開けて、すぐには中に入らずに、玄関からしばらく中を観察。
いきなり入ると、予測がつかない被害を被ることがあるからだ。
例えば、血液やウジが上から落ちてきたり、腐敗脂で滑って転んだり・・・。

中に入ると、まずは汚染個所の状況を確認する。それから間取りや家財道具の量・種類をみながら臭いをチェック(細かいことは企業秘密)。

問題は、汚染個所のチェックの際に起こった。手袋を着けているため、汚染されたものでも平気で触る。布団やカーペットをめくり上げたり、腐敗液のついた物品を動かしたり。

汚染部分のチェックは仕事の要なので、慎重かつ集中して行う。
汚染部分のチェックが終わると汚れた手袋を外すわけだが、そこでアンビリーバボー!な状況に気づいた。

なんと、手袋が破れていたのである!!!


手袋を外してみると・・・
案の上、手には腐敗液がシッカリ着いていた(ざんね~んっ!)。

速攻で見積りを中断して、手を洗って消毒。

それでも、臭いがなかなかとれない。

こんな仕事を長年やってながらも、腐敗液が身体の直接付着してしまうのはかなりのイレギュラーなケースで、普段からそこはかなり注意している。

それなのに、本作業じゃない見積段階で腐敗液を着けてしまうとは、我ながら情けなく悲しかった。

とりあえず、見積りは無事に済んで現場は退散。
嗅ぎたくないのについつい何度も手の臭いを嗅いでしまい、溜息をつきながらブルーなき分で帰路についた私であった。


トラックバック 2006/06/04 投稿分より


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助けて!クラシア~ン!

2024-04-25 20:34:16 | 特殊清掃
  • 古い小さな一戸建て。故人はトイレでなくなって腐乱していた。用を足していた最中なのか、その前なのか、その後なのか・・・考えても仕方がないことだが、考えてしまった。

床は腐敗液でベトベト・ヌルヌル、大量のウジが這い回っていた。
床の汚染はある程度拭き取って、クロスを剥がして完了(簡単なようで難しい)。
そして、問題が便器。便器自体の汚染も根気強く拭けば何とかなったが、一番往生したのがその詰まり。

腐敗が進み液化した人肉・脂肪等が便器内にタップリ溜まっていたと思われ、今度は、更に時間が経過したため、それが乾燥して凝固し、トイレが完全に詰まっていたのである。
糞尿で詰まることはあっても、人間そのものだったもので詰まるなんて・・・。
素人の方にも分かりやすく表現すると、茶色で固めのとてもクサーイ!粘土が、便器の奥から半分位までギュウギュウに詰められているような状態である。
まず、その塊を少しずつ除去。
機材の届く奥まで除去できたので「ヨッシャ!これで流れるぞ!」と勢い込んで水洗レバーを引いた。それが失敗だった。
トイレの詰まりは解消されてなく、流れでた水洗タンクの水は便器からオーバーフロー。

しかも!その水ときたら、黒緑色の腐った水(当然、臭い!)で、たくさんのウジも一緒にでてきた。タンク内の水を事前に確認する基本的なことを忘れてしまっていた。
タンクの水がなくなるまで汚水は流れ続け、私はなす術もなく呆然と見ているしかなかった。思わず、心の中で「助けて!クラシア~ン。」と呼んだ。
ただの詰まりとは違うけど、トイレの詰まりには違いないから、クラシアンなら「トイレのトラブル8000円」でやるのだろうか(やるはずないか)。

その後の作業をどうしたかは、この場では省略。ユニフォームを汚しながらも、頑張って綺麗にして遺族も喜んでくれた。もちろん、トイレの詰まりも解消。


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残された耳

2024-04-18 16:50:10 | 特殊清掃
千葉県某所、一戸建。例によって、現場確認と見積依頼で現場へ。
故人は布団に入ったまま亡くなり、そのまま腐乱していた模様。
特殊清掃撤去では、遺体は警察(または警察に指示された葬儀社)が回収していった後に我々が訪問するケースがほとんどである。
しかし、腐乱し、溶けてバラバラになった遺体を全部拾って回収することは困難である。
現実には、頭髪付の頭皮が残されていたり、指先の小さな骨が残されているケースは珍しくない。
ただ、この現場では耳が落っこちていた。
遺族に「この耳どうしますか?」と尋ねたら、遺族も困っていた。
私も、骨などの固形化された遺体の一部は遺族に返すようにしているが、さすがに耳を返されても困るようだった。
そうは言っても、私も耳を持ち帰る訳にもいかず、半強制的に遺族に返して作業を進めた。
どうせなら、警察に耳も持って行ってほしい。遺族のためにも、我々業者のためにも。

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