「ゴホン!ゴホン!」
玄関ドアを開けた依頼者は、肺がエンストしたような咳を吹き出した。
と同時に、言葉にならない驚嘆の声を上げた。
依頼者は、部屋の中から噴出してきた濃い!腐乱臭パンチを見舞われたのだった。
ドアの前に立ってもかなりの臭いがしたので、
「こりゃ、中はかなりイッてるな・・・素人だったらKOもあり得るかも」
と思っていたら、まさにその通りだった。
ただ、私は、でしゃばったマネはよくないと思って少し離れたところに控えていたので、そのパンチを避けることができた。
まぁどちらにしろ、私は、この後でイヤ!と言うほどの悪臭ストレートパンチを浴びることになるのだが・・・しかも、レフリーもセコンドもいない状態で。
「後でトラブルになると困るので、貴重品や必要なものは先に出しておいて下さい」
私の要請に依頼者は
「え゛!?この部屋に入れって言うんですか!?」
との文字を顔に書いて、驚きと恐怖の表情を浮かべた。
怯えるように硬直した依頼者を見ていると、段々と気の毒に思えてきて、
「私が代わりに行ってきましょうか?」
と言わざるを得なくなった。
貴重品で、特に気をつけなければならないのは現金・金券・貴金属類。
何故なら、預金通帳・カード・保険証券・年金手帳類は第三者が換金しにくいので疑われにくいけど、現金・金券・貴金属類は私のような第三者にでも価値があるし、小さいのでポケット等に簡単に入れることができるから。
その気になれば簡単に盗めてしまうのだ。
だから、要らぬ疑心暗鬼を招かないために、私は、依頼者の目のない所では極力他人のそれらに手を触れないようにしている。
しかし、この現場では依頼者の腰が引けていて、それが叶わなかった。
「私を信用してもらうしかないですね」
と言い残して、私は部屋の中に突入した。
部屋の真ん中には熟成された汚腐団、枕には頭髪。
警察が荒らして行ったせいで、部屋はかなりちらかっていた。
そして、悪臭!
「うへぇ~!何度嗅いでもたまらんなぁ・・・」
簡易マスクなど何の役にも立たず、ツンと尖った腐乱臭が容赦なく鼻から肺に入り込んできた。
それは、スゴク悪いモノを吸い込んでいる気がして、〝肺が腐ってしまうんじゃないだろうか〟と心配になってくるくらいのレベル。
そんな現場では、本能的に呼吸を浅くする私。
しかしそれでは酸素が足りない。
数回の浅い呼吸のあと一回の深い呼吸を繰り返しながら、私は酸欠ギリギリのところで故人の貴重品を探した。
その作業は、わずか10分程度だっただろう。
しかし、ウ○コ男が完成するには充分過ぎる時間だった。
一通りの貴重品をかき集めて、私は依頼者の待つ外へ出た。
依頼者は、私の身体が放つ悪臭に戸惑いながらも、申し訳なさそうに礼を言ってくれた。
臭い汚仕事でも、人に礼を言ってもらえると嬉しいものである。
これは、金に替えられないね。
「ご本!ご本!」
子供の頃から読書が苦手な私は、親や教師からよく「本を読め!」と言われていた。
しかし、大人になった今でもほとんど本を読まない。マンガも。
「本を読まないことは、字が読めないのと同じことだ」
そんな辛口な批判を浴びても、一向に本を読むことに興味が湧かず、
「本を読む時間があったら、飲むか寝るかした方がマシ」
と考える低堕落な私である。
今になっても相変わらず、本blogの書籍化を提案したり取材を申し込んでくる編集社・出版社もチラホラあるらしい。
また、最近は、本blogを元にしたのではないかと思われるような類のモノがチラホラとでてきているようにも聞いている。
そんな情報は全て、私より先に管理人のところに集まってくるので、私は後から知っては他人事のように受け止めている。
自意識過剰かもしれないけど、それを知った私は、気分が悪くもありながらまんざら悪い気もしないようなビミョーな感じ。
仮に、本当にその類のモノがあるなら、それらは特掃隊長の認識外で行われているもの。
「アッシにゃぁ、関わり合いのねぇこってござんす」
ただ、どこの誰さんであっても、物事の筋道・仁義だけはきちんと通してもらいたいものだ。
まぁ、他人が真似してくれるくらいの人間でいられるなんて、ありがたいことなのかもしれないね。
本blogは、一人の書き手と不特定多数の読み手で成り立っているのかもしれないけど、書き手一人と読み手一人の一対一の関係を意識したいと、私は思っている。
でないと、愚か者の私は、すぐに自分が能力ある人間だと勘違いしてしまうから。
これからも、余計な雑音が入らないよう悪い右耳は世間に向け、健常な左耳を内に向け、自分の想い(念い)に任せて、ただただブルーな文字だけ綴っていこうと思う。
「ゴホン!ゴホン!」
管理人(ヘビースモーカー)のタバコの煙が、清々しい春の空気を汚している今日この頃である。
公開コメントはこちら
特殊清掃プロセンター
遺品処理・回収・処理・整理、遺体処置等通常の清掃業者では対応出来ない
特殊な清掃業務をメインに活動しております。
玄関ドアを開けた依頼者は、肺がエンストしたような咳を吹き出した。
と同時に、言葉にならない驚嘆の声を上げた。
依頼者は、部屋の中から噴出してきた濃い!腐乱臭パンチを見舞われたのだった。
ドアの前に立ってもかなりの臭いがしたので、
「こりゃ、中はかなりイッてるな・・・素人だったらKOもあり得るかも」
と思っていたら、まさにその通りだった。
ただ、私は、でしゃばったマネはよくないと思って少し離れたところに控えていたので、そのパンチを避けることができた。
まぁどちらにしろ、私は、この後でイヤ!と言うほどの悪臭ストレートパンチを浴びることになるのだが・・・しかも、レフリーもセコンドもいない状態で。
「後でトラブルになると困るので、貴重品や必要なものは先に出しておいて下さい」
私の要請に依頼者は
「え゛!?この部屋に入れって言うんですか!?」
との文字を顔に書いて、驚きと恐怖の表情を浮かべた。
怯えるように硬直した依頼者を見ていると、段々と気の毒に思えてきて、
「私が代わりに行ってきましょうか?」
と言わざるを得なくなった。
貴重品で、特に気をつけなければならないのは現金・金券・貴金属類。
何故なら、預金通帳・カード・保険証券・年金手帳類は第三者が換金しにくいので疑われにくいけど、現金・金券・貴金属類は私のような第三者にでも価値があるし、小さいのでポケット等に簡単に入れることができるから。
その気になれば簡単に盗めてしまうのだ。
だから、要らぬ疑心暗鬼を招かないために、私は、依頼者の目のない所では極力他人のそれらに手を触れないようにしている。
しかし、この現場では依頼者の腰が引けていて、それが叶わなかった。
「私を信用してもらうしかないですね」
と言い残して、私は部屋の中に突入した。
部屋の真ん中には熟成された汚腐団、枕には頭髪。
警察が荒らして行ったせいで、部屋はかなりちらかっていた。
そして、悪臭!
「うへぇ~!何度嗅いでもたまらんなぁ・・・」
簡易マスクなど何の役にも立たず、ツンと尖った腐乱臭が容赦なく鼻から肺に入り込んできた。
それは、スゴク悪いモノを吸い込んでいる気がして、〝肺が腐ってしまうんじゃないだろうか〟と心配になってくるくらいのレベル。
そんな現場では、本能的に呼吸を浅くする私。
しかしそれでは酸素が足りない。
数回の浅い呼吸のあと一回の深い呼吸を繰り返しながら、私は酸欠ギリギリのところで故人の貴重品を探した。
その作業は、わずか10分程度だっただろう。
しかし、ウ○コ男が完成するには充分過ぎる時間だった。
一通りの貴重品をかき集めて、私は依頼者の待つ外へ出た。
依頼者は、私の身体が放つ悪臭に戸惑いながらも、申し訳なさそうに礼を言ってくれた。
臭い汚仕事でも、人に礼を言ってもらえると嬉しいものである。
これは、金に替えられないね。
「ご本!ご本!」
子供の頃から読書が苦手な私は、親や教師からよく「本を読め!」と言われていた。
しかし、大人になった今でもほとんど本を読まない。マンガも。
「本を読まないことは、字が読めないのと同じことだ」
そんな辛口な批判を浴びても、一向に本を読むことに興味が湧かず、
「本を読む時間があったら、飲むか寝るかした方がマシ」
と考える低堕落な私である。
今になっても相変わらず、本blogの書籍化を提案したり取材を申し込んでくる編集社・出版社もチラホラあるらしい。
また、最近は、本blogを元にしたのではないかと思われるような類のモノがチラホラとでてきているようにも聞いている。
そんな情報は全て、私より先に管理人のところに集まってくるので、私は後から知っては他人事のように受け止めている。
自意識過剰かもしれないけど、それを知った私は、気分が悪くもありながらまんざら悪い気もしないようなビミョーな感じ。
仮に、本当にその類のモノがあるなら、それらは特掃隊長の認識外で行われているもの。
「アッシにゃぁ、関わり合いのねぇこってござんす」
ただ、どこの誰さんであっても、物事の筋道・仁義だけはきちんと通してもらいたいものだ。
まぁ、他人が真似してくれるくらいの人間でいられるなんて、ありがたいことなのかもしれないね。
本blogは、一人の書き手と不特定多数の読み手で成り立っているのかもしれないけど、書き手一人と読み手一人の一対一の関係を意識したいと、私は思っている。
でないと、愚か者の私は、すぐに自分が能力ある人間だと勘違いしてしまうから。
これからも、余計な雑音が入らないよう悪い右耳は世間に向け、健常な左耳を内に向け、自分の想い(念い)に任せて、ただただブルーな文字だけ綴っていこうと思う。
「ゴホン!ゴホン!」
管理人(ヘビースモーカー)のタバコの煙が、清々しい春の空気を汚している今日この頃である。
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