特殊清掃「戦う男たち」

自殺・孤独死・事故死・殺人・焼死・溺死・ 飛び込み・・・遺体処置から特殊清掃・撤去・遺品処理・整理まで施行する男たち

ロールケーキorサンドイッチ

2024-08-15 06:31:30 | 特殊清掃
腐乱死体が布団を汚していることは多い。
言い換えると、布団に入ったまま亡くなる人が多いということ。
そんな場合は、ほとんどの依頼者が「布団だけでも先に持って行ってくれ!」と依頼してくる。
腐敗液をタップリ吸った布団は、見た目も臭いもとてもヒドイから。

できる限り依頼者の要望には応えるようにしているが、見積と作業は別物。
作業を小刻みに分けると、効率も悪くコストも上がる。
何よりも、汚物処理作業は一発で済ませたい。

でも、困りきった様子で依頼してくる依頼者も無視できない。
昔は、そんな現場は仕方なく作業をしていた。
依頼者には悪いが、嫌々やっていた。

普通の布団をたたむのは誰でもわけないことだが、汚腐団(お布団)はそういう訳にはいかない。
できるけ小さくたたんで専用袋に入れるだけ作業なのに、ちょっと油断すると腐敗液が身体に着いてしまう。

以前は、腐敗液が身体に着かないように作業手順をよーく練ったうえで、慎重に慎重を重ねてやっていた。
まさに、汚いモノにでも触るかのように。
それでも、なかなかうまくいかず、身体を汚してしまったことが何度もある。
その逃げ腰・及び腰の姿勢が逆効果であることに気づくのは、しばらく先になった。

何度もやっているうちに、一つの失敗が一つのノウハウになることを覚えた私は、「どうせ汚れるんだったら失敗例を蓄積しよう」と考え方を変えた。
皮肉なことに、汚いモノが着かないように気をつけていた頃に比べると、汚いモノを気にしなくなってからの方が圧倒的に汚れなくなった。

腐敗液をタップリ吸った布団は重い!もちろん臭くもある。
持つとズシリとくる。
実際の重さに増して精神的な重さがある。
私より腕力のある人でも、そう簡単には持てないかも。

昔は、梱包した布団でさえ汚く思えて、身体につかないように持っていた。

今は、抱えるどころか背負うことにも抵抗感はない。
それを背負うと、遺体そのものを背負っているような錯覚に陥る。
そんな布団に対する私の感覚は、汚物と人間の間を行ったり来たりする。大袈裟に言うと、汚物に親近感みたいなものを覚えることもある。
ただ歳をとっているだけじゃなく、人間として成長しているのかも?

仕事も人生も、楽をしようとして近道を行くと、かえって遠回りになってしまうことがある。
身の丈を考えず階段を飛び越えようとすると、踏み外して転げ落ちることがある。
何事も、小さな積み重ねが大事。
続けることが大事。
知恵を持つことが大事。
こんな仕事にも独自のノウハウがある。
それを得るためには経験・継続・蓄積が必要。
私には、誰にも真似できない(したくない?)それがある。
死体業をコツコツやってきたことが、ホコリのような私の誇り・・・かな?

今回は、とりとめもない文章になってしまった。夏バテ気味か・・・。

表題の「ロールケーキorサンドイッチ」は、汚腐団のたたみ方のコツ。
中に入る具は色々あるが、読者の想像にお任せする。

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2006/08/24 19:27:34
投稿分より

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2 コメント

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Unknown (mamazones)
2024-08-15 17:22:16
例えが凄い!
ロールケーキ
分かります。
それ以外にないものね。
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Unknown (いちごみるく)
2024-08-22 14:42:59
隊長の、お話を読んでいて人間っていうものは{人間出なくても、生き物は)亡くなった瞬間から腐敗がはじまゆといつことがよくわかりました。だから、なおさらじぶんは連絡取れない時はすぐに観にきてもらったりしてなるべく人様に、めいわくかけないようにしようっておもわされました、そんな死ぬとかいい年では無いですが.人間いつどうなるやはわかりませんものね?そういや、みせをやっていて懇意にしててよくきてくれるおばあちゃんが、おりまひまがその人みよりがほっかいどうにしかなくてむかしのおそらく水商売、芸者さんだったろうとおもうのですがよく酔って長唄とか、きかせてくれてたんだけど亡くなったときに葬儀場なら置かれていて警察から弟さんに連絡とってもらったんやけだなにしろほっかいどうからなんで、くるのがおそくてなかなかこられない、お通夜までたしか、2〜3日おいておいたことがあります、私もなかよくしていたので、なんかいも見に行ってあげたのですが、葬儀屋さんが、ドライアイスたくさん当ててくれていたおかげで、弟さん到着までご遺体は傷むことなく、臭いもなかったです、でも隊長な、最近のブログで小さいお年寄りなら凍ってしまう、場合もあると、あったのであれはもしかしたらうっすら凍ってたのかもしれないなと、いまさら思います。でも腐敗してしまうよりも多少凍った方がマシですもんね、何十年も会ってない姉が、腐敗した姿なんかで、会いたく無いはずですもんね。ダライアスが、なかった江戸時代とかなら大変だったろうなあと、思います.
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