私は、デジタルカメラで撮影したものを天体画像と言っています。写真と言っても問題ないかと思いますが、写真=フィルム(銀塩)によるものがあるので、区別しています。デジタルカメラや天体用CCDカメラは、写真(銀塩)フィルムによる撮影から飛躍的に変化しました。
一般的な写真フィルムは、人物や風景などの撮影用として作られています。ですから、通常の撮影ではあまり問題になりませんが、天体写真のように長時間露光が必要な場合に起こる現象があります。この現象を相反則不軌(ソウハンソクフキ)と読んでいます。簡単に言うと、露光時間が一定時間過ぎると感度低下が起こり、フィルムに表示されている感度が得られなくなる現象です。暗い天体を撮影する場合は、このような現象のため更なる露光時間が必要になってしまいます。この現象を防ぐには、フィルムを冷却すれば良いのですが、市販されているカメラがありませんでしたので、冷却カメラを自作して撮影する人もいました。
ところが、デジタルカメラの場合は、感光素材が銀塩のフィルムではありませんので、このような現象はありません。その代わりに感光素子が熱を発生し、この発熱によるカブリが発生します。そのため、長時間露光による熱カブリを低減するための機能を持っているカメラもあります。天体撮影用のCCDカメラには、冷却機能を備えたものが基本です。ハイレベルのものになると液体窒素などで冷却して使用するものもあります。
私は、市販のデジタルカメラを使用して、撮影しています。冷却CCDカメラよりも性能的には落ちますが、私が撮影している範囲では十分と思っています。冬の良く晴れた晩には、15等星くらいまでは撮影が可能で、私が追跡している彗星は13等級まで撮影が可能です。
この明るさは、写真フィルムでは考えられないことでした。特に、外灯などが有り空が明るい所では、長時間露光によるカブリが発生し、バック(空の部分)が感光して、写った星が消えていってしまいます。そんな悩みを解消したのが、デジタルカメラです。相反則不軌がなく感度はそのまま維持されるため、短時間で暗い星まで撮影できます。バックのカブリも画像処理で取り除くことが出来ます。それから、複数枚の画像を合成することで、より鮮明な画像を、得ることが出来るのです。それからなんと言っても、その場で写り具合が確認できることが、最大の利点です。フィルムでは、現像が終わるまで、どのように写っているか確認できませんので、天体写真ではワンチャンスしか無い場面がほとんどですから、後日取り直しと言う事も出来ません。デジタルカメラは、その場で確認し撮り直しも出来ますので、助かります。
今回は、その1ですから、完成した画像(暗い彗星を撮影した画像です)を見ていただきます。