と言っても、特に何があった、というわけではない。すべては僕の心の中の葛藤である。僕の精神は真夏の8月頃から崩れ出した。きっかけはクライアントの数が少なかった月だったことくらいだろう。何故か自信も確信もなくなった。読書も字ズラを追うだけで、頭には一向に入ってこなかった。カウンセラーとしてやっていけるのか、という基本的な疑問にも直面した。外へも殆ど出なくなった。僕は大の字になって、マンションの真っ白な天井を見上げるばかりであった。それしか出来なかった。すると、自分は過去へ、過去へと引きずり込まれていることに気がついた。自分にとって一番つらかった思い出ばかりが頭の中をよぎった。それでも時折訪れてくださるクライアントの方々がいらっしゃったが、僕はその時は真剣だが、カウンセリングが終わるともうフラフラだった。限界点を超えていた。生きるのが嫌になって、死んでやろうか、といつも考えていた。そうすれば、もうこんな世の中とはお別れだ、と思っていた。そう思いつつ天井を来る日も来る日も眺め続けた。
6年前まで、学校という人の溢れる場所にいたこともあって、一人でクライアントの来訪を待つのがとてもつらかった。時間が刻々と過ぎていき、その中で、学校時代に特に嫌いだった人間を憎んだ。露骨な裏切りをやった英語教師の青年が許せなかった。たぶん、僕はあの頃、犯罪者になるギリギリのところにいたのではないか、と思う。想像の上ではいくつも犯罪を犯してしまっていたように思う。僕は何だか学校を追放された頃のことがことごとく許せなくなったのである。過去のことを忘れるどころか、過去に支配されていたのである。しかし、実際に、あの頃は職場である学校の人間関係も、家庭での別れた女房とも最低の関係だった。人生であんな苦しい想いをしたことがなかった。
僕はいつも教師になる前は、大学の授業料も生活費も自分で稼ぎ出さないといけない状況に置かれていたので、確かに苦しくはあったが、やはり、そんなこととはくらべものにならなかった。そんなことを思い出す毎日が、今年の8月から今日に到る経緯である。人、一人が生きるってこんなにたいそうなものなのか、と自分で驚いてもみた次第である。人間はもっと軽々と生きねばならないはずだ。ドズンと落ち込んだ穴の中で喘ぎながら呼吸して生きているのが人間じゃあない。人生はもっとすいすいと穴があろうと壁が目の前にあろうと乗り越えていかなくてはならない。僕は絶対にタダでは起き上がらない質である。来年はすいすいと生きてやろうと心の底で決意している最中なのである。いまがその時である。僕はがんばる!
〇推薦図書「ポロポロ」田中小実昌著。中公文庫。内容は戦時下の話ですが、この田中小実昌をいう作家はあくまでひょうひょうとした人間でもあり、作風も同じなのです。田中氏は少し前に亡くなりましたが、たぶんひょうひょうとした死ざまであったのではないでしょうか。羨ましいかぎりです。素敵な作家ですよ。
6年前まで、学校という人の溢れる場所にいたこともあって、一人でクライアントの来訪を待つのがとてもつらかった。時間が刻々と過ぎていき、その中で、学校時代に特に嫌いだった人間を憎んだ。露骨な裏切りをやった英語教師の青年が許せなかった。たぶん、僕はあの頃、犯罪者になるギリギリのところにいたのではないか、と思う。想像の上ではいくつも犯罪を犯してしまっていたように思う。僕は何だか学校を追放された頃のことがことごとく許せなくなったのである。過去のことを忘れるどころか、過去に支配されていたのである。しかし、実際に、あの頃は職場である学校の人間関係も、家庭での別れた女房とも最低の関係だった。人生であんな苦しい想いをしたことがなかった。
僕はいつも教師になる前は、大学の授業料も生活費も自分で稼ぎ出さないといけない状況に置かれていたので、確かに苦しくはあったが、やはり、そんなこととはくらべものにならなかった。そんなことを思い出す毎日が、今年の8月から今日に到る経緯である。人、一人が生きるってこんなにたいそうなものなのか、と自分で驚いてもみた次第である。人間はもっと軽々と生きねばならないはずだ。ドズンと落ち込んだ穴の中で喘ぎながら呼吸して生きているのが人間じゃあない。人生はもっとすいすいと穴があろうと壁が目の前にあろうと乗り越えていかなくてはならない。僕は絶対にタダでは起き上がらない質である。来年はすいすいと生きてやろうと心の底で決意している最中なのである。いまがその時である。僕はがんばる!
〇推薦図書「ポロポロ」田中小実昌著。中公文庫。内容は戦時下の話ですが、この田中小実昌をいう作家はあくまでひょうひょうとした人間でもあり、作風も同じなのです。田中氏は少し前に亡くなりましたが、たぶんひょうひょうとした死ざまであったのではないでしょうか。羨ましいかぎりです。素敵な作家ですよ。